生成AIと法律の関係とは?著作権・個人情報・AI法の要点と企業がとるべき対策
2026年9月6日
最終更新日:2026年10月16日
著者:株式会社ネクストスケール編集部
監修者:石丸真平

生成AIを業務に取り入れる企業が増える一方で、「どこまでやってよいのか分からない」という不安から利用を止めている組織も少なくありません。判断の基準がはっきりしないまま使い続けるのも、理由なく禁止するのも、どちらも望ましい状態とはいえません。
日本では2025年にAIに特化した法律が全面施行されましたが、これは罰則を伴う直接的な規制ではありません。むしろ実務で問題になるのは、著作権法や個人情報保護法といった既存の法律が、生成AIの利用にもそのまま適用されるという点です。
この記事では、日本の法制度の全体像を整理したうえで、著作権と個人情報を中心に押さえるべき論点、そのほか関係する法律、海外の規制の影響、そして企業として整えるべき体制までをまとめました。法務の専門部署がない組織でも、判断の土台が持てる内容にしています。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| 生成AIを規制する法律はある? | AI法が2025年に全面施行 | 推進を主眼にした基本法的な内容です。直接的な規制ではありませんが既存の法律は適用されます |
| 著作権はどうなる? | 学習と生成で扱いが分かれる | 学習は一定の範囲で認められる一方、生成物が既存の作品と類似すれば侵害となる場合があります |
| 個人情報を入力してよい? | 利用目的の範囲内かの確認が必要 | 本人の同意なく個人データを入力することには制約があります。社内で範囲を定めてください |
| 企業は何をすべき? | 社内ルールと確認手順の整備 | 入力してよい情報、出力の確認方法、記録の残し方を定め、担当部署を決めておくことが基本です |
この記事でわかること
- 日本の生成AIに関する法制度の全体像と、AI法が定めている内容
- 著作権法における学習段階と生成・利用段階の扱いの違い
- 個人情報を入力する際に確認すべき条件と監督官庁の見解
- 営業秘密や肖像権など、実務で見落としやすい関連法令
- 社内ルールの作り方と、体制づくりで押さえるべき5つの項目
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生成AIをめぐる日本の法制度の全体像
最初に押さえておきたいのは、日本には「生成AIの使用そのものを禁じたり細かく規制したりする法律」は存在しないという点です。その代わり、既存の法律が場面ごとに適用される構造になっています。
この構造を理解しないまま「AIの法律を調べる」と、探しても答えが見つかりません。実務で必要なのは、自分がやろうとしている行為が、どの法律の適用対象になるかを見分けることです。
推進と対応を両立させる設計
日本の姿勢は、イノベーションの促進とリスクへの対応を両立させるという考え方に立っています。細かく分類して違反に高額の制裁を科す方式ではなく、事業者の自主的な取り組みを促す設計が採られてきました。
背景には、国内のAI開発と活用が国際的に遅れているという認識があります。過度な規制で開発と活用の芽を摘まないよう配慮しつつ、リスクにも手当てするという方針です。
ただし、規制が緩いという意味ではありません。生成AIを使った行為であっても、既存の法律に違反すれば当然に責任を問われます。
既存の法律がそのまま適用される
実務で問題になるのは、主に次の法律です。著作権法、個人情報保護法、不正競争防止法、そして名誉や信用に関わる民事上の責任が中心になります。
生成AIを使ったという事実は、免責の理由にはなりません。AIが作ったものであっても、それを公開したり事業に使ったりする判断をしたのは人であり、責任は利用した側に帰属するという前提で考える必要があります。
この記事では、実務で問題になりやすい順に整理していきます。AI活用の進め方については、ネクストスケールのコラムでも取り上げています。
事業者向けの指針という枠組み
法律とは別に、省庁が事業者向けの指針を公表しています。これらは法的な強制力を持つものではありませんが、適切な取り組みの水準を示すものとして参照されます。
取引先から体制を問われた際や、万一問題が起きた際に、これらに沿った運用をしていたかどうかが判断材料になることがあります。社内ルールを作る際の下敷きとして活用する価値があります。
AI法とは何か
2025年に、日本で初めてAIに特化した法律が成立しました。内容を正しく理解しておくことは、過剰な不安を持たないためにも重要です。
成立と施行の経緯
正式名称は「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」です。内閣府のAI法に関する公表内容によれば、令和7年6月4日に公布・一部施行され、9月1日にAI戦略本部の設置に係る規定などを含めて全面施行されました。
制定の理由として挙げられているのは、国内のAI開発と活用が遅れていること、そして多くの国民がAIによるリスクに不安を抱えていることです。この2つに同時に対応するための法律という位置づけになります。
何を定めているか
条文の多くは、国や政府が何をするかを定めた内容です。内閣にAI戦略本部を置くこと、政府がAIに関する基本的な計画を策定すること、研究開発を推進するための施策を講じることなどが規定されています。
つまり、企業の行為を直接縛る条文が並んでいるわけではありません。性質としては基本法にあたり、方向性と体制を定めるものと理解しておくのが正確です。
企業に関係する部分
とはいえ、企業に無関係というわけではありません。国が実施する調査などに対して、事業者にも協力する責務が定められています。
政府は今後、業種ごとの活用実態の調査、開発事業者の安全性向上への取り組みの情報収集、権利利益を侵害する事案の調査などを進めるとされています。こうした調査への協力を求められる場面が想定されます。
基本計画と指針の策定
法律の施行後、政府はこれに基づく具体的な計画と方針を定めています。AIの研究開発と活用を推進するための基本的な計画が閣議決定され、あわせて研究開発と活用の適正性を確保するための指針も決定されました。
これらは企業を直接縛るものではありませんが、国がどの方向に進もうとしているかを示す資料として目を通しておく価値があります。自社の取り組みを社内外に説明する際の枠組みとしても使えます。
罰則はあるか
この法律自体に、企業に対する罰則は設けられていません。違反したら制裁金を科されるという構造にはなっていない点は、EUの規制と大きく異なります。
ただし、繰り返しになりますが、著作権法や個人情報保護法に違反すれば、そちらの法律に基づく責任が生じます。AI法に罰則がないことと、法的リスクがないことは別の話です。
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関連記事:生成AI活用の進め方 業務別の使い方と成果が出る企業の条件・注意点【2026年最新】
著作権との関係
実務で最も相談が多いのが著作権です。ここは「学習させる段階」と「生成して使う段階」で扱いが分かれるため、混同しないよう整理します。
学習段階の扱い
日本の著作権法には、情報解析などを目的とする利用について、権利者の許諾なく行える場合を定めた規定があります。著作物に表現された思想や感情を人が味わうことを目的としない利用は、一定の範囲で認められるという考え方です。
この規定があるため、日本は学習に比較的寛容な法制度だと評価されてきました。ただし、無制限に認められるわけではありません。著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、対象から除かれると定められています。
なお、この論点が直接関係するのは、主にモデルを開発する側です。既製のサービスを使う一般の企業にとっては、次に述べる生成・利用段階のほうが実務上は重要になります。学習に関する議論と自社の責任を混同しないよう整理しておいてください。
文化庁は、この規定の解釈について整理した文書を公表しています。特定の作品の表現を意図的に再現させる目的での学習など、個別の事情によっては認められない場合がある点は押さえておく必要があります。
生成・利用段階の扱い
より注意が必要なのは、生成された内容を実際に使う場面です。この段階では、通常の著作権侵害と同じ枠組みで判断されます。
つまり、AIが作ったかどうかは判断の分かれ目になりません。既存の著作物に依拠していて、かつ表現が類似していると判断されれば、侵害にあたる可能性があります。
生成AIを使った場合、既存作品を知らないまま似たものが出てくることもあります。しかし、その作品が学習に含まれていた可能性がある以上、知らなかったという主張が通るとは限りません。
実務での確認手順
対策として現実的なのは、公開や商用利用の前に確認する工程を挟むことです。生成された文章の特徴的な部分を検索して同一の表現がないか調べる、画像であれば類似画像の検索にかけるといった手順です。
加えて、キャラクター名や特定の作家名を指定して生成させないという運用ルールも有効です。特定の作品を再現させる意図があったと見られる指示は、リスクを大きく高めます。
なお、AIが生成したものに著作権が発生するかという論点もありますが、これは自社の権利を守れるかという別の問題です。人の創作的な関与の程度によって判断が変わるとされており、外部に提供する成果物では検討が必要になります。
個人情報保護法との関係
もうひとつ相談が多いのが、個人情報の扱いです。
入力するときの注意
個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。そのなかでは、個人情報を含む指示文を入力する場合、あらかじめ特定した利用目的の達成に必要な範囲内かどうかを十分に確認するよう求められています。
また、本人の同意を得ずに個人データを入力し、それがサービス提供者側で機械学習に利用される場合の取り扱いについても留意点が示されています。入力する行為が、第三者への提供にあたる場合があるという点は理解しておく必要があります。
実務上の対策としては、学習に使われない設定が可能なサービスを選ぶこと、そして入力してよい情報の範囲を社内で明文化しておくことです。
出力に含まれる場合
生成された内容に、実在する個人の情報が含まれることもあります。事実と異なる情報が混ざっていた場合、その人に関する不正確な内容を扱うことになります。
外部に公開する内容に個人名が含まれる場合は、その記述が事実に基づいているかを必ず確認してください。誤った情報を公開すれば、名誉に関わる責任が生じる可能性があります。
制度改正の動向
個人情報保護法については、制度の見直しが継続的に議論されています。将来的に、不適切な取り扱いに対する制裁のあり方が変わる可能性も指摘されています。
現時点の要件を満たしていれば当面は問題ありませんが、法改正の動向は定期的に確認しておくことをおすすめします。
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そのほか関係する法律
著作権と個人情報以外にも、実務で見落としやすい論点があります。
営業秘密と不正競争防止法
自社の技術情報や顧客リストを外部のサービスに入力する行為は、営業秘密としての管理が及んでいるかという観点で問題になり得ます。
営業秘密として法的な保護を受けるには、秘密として管理されていることが要件になります。誰でも自由に外部サービスへ入力できる状態は、この要件を満たさないと判断される恐れがあります。
他社から預かった情報を入力する場合は、さらに注意が必要です。秘密保持契約で第三者提供が禁じられていれば、契約違反にあたる可能性があります。取引先の情報を扱う業務では、契約条項の確認を先に行ってください。
肖像権とパブリシティ権
実在する人物の画像や音声を生成する場合、その人の肖像に関する権利や、著名人の顧客吸引力に関する権利が問題になります。
特に、実在の人物が言っていないことを話しているように見える映像や音声を作る行為は、権利侵害だけでなく、詐欺や名誉毀損につながる重大なリスクを伴います。広告や販促の素材では、実在人物を想起させる生成物を使わないという方針を明確にしておくべきです。
名誉毀損と信用毀損
生成AIが事実と異なる内容を出力し、それを公開した結果、特定の個人や企業の評価を下げてしまう場合があります。AIが書いたという理由で責任を免れることはできません。
特に、競合他社に言及する内容や、個人の経歴に触れる内容は注意が必要です。事実の裏付けが取れないものは公開しないという基準を持ってください。
業法や広告に関する規制
業種によっては、表示や広告について個別の規制があります。医療、金融、食品、化粧品などの分野では、使ってよい表現が法令で細かく定められています。
生成AIは、こうした業種特有の制約を理解して書いてくれるわけではありません。規制のある分野では、生成された内容を必ず有資格者や担当部署が確認する手順を組み込んでください。
言い切りの表現や効果を断定する言い回しは、生成AIが自然に使いやすい形でもあります。もっともらしく書かれているほど見落としやすいため、確認の観点をあらかじめ一覧にしておくと安全です。
実務で判断に迷いやすい場面
条文の理解だけでは対応しきれない場面があります。現場で相談が多い状況を4つ取り上げます。
社外向け資料に生成した文章を使う
提案書やWebサイトの文章を生成AIで作り、そのまま公開するケースです。問題になりやすいのは、既存の記事と表現が近くなる場合です。
対策は、特徴的な言い回しを検索して同一表現がないか確かめること、そして自分の言葉で書き直すことです。下書きとして使い、最終的な表現は人が整えるという運用にしておけば、リスクは大きく下がります。
画像を生成して販促に使う
生成した画像を広告やパンフレットに使う場合、既存の作品や実在人物に似ていないかが論点になります。特定の作風を指定した生成は、意図的な再現とみなされる恐れがあります。
商用利用にあたっては、使用するサービスの利用条件も確認してください。生成物の商用利用を認めていないサービスもあり、法律とは別に契約上の制約が生じます。
取引先から受け取った資料を要約させる
日常的に発生しやすいのがこの場面です。相手先の資料には、秘密保持契約の対象になっている情報が含まれている可能性があります。
契約書に第三者への提供を制限する条項があれば、外部サービスへの入力が違反にあたる可能性があります。契約条項の確認を先に行い、判断がつかない場合は入力しないという運用が安全です。
社内文書をAIに読み込ませる
社内の規程やマニュアルを参照させる仕組みを作る場合、その文書に個人情報や人事に関する情報が混ざっていないかを確認する必要があります。
参照させる範囲とアクセス権の設計を先に固めてください。全社員が閲覧できる状態にすべきでない情報が、AI経由で誰でも引き出せるようになってしまう事態は避ける必要があります。
海外の規制と日本企業への影響
自社が国内向けの事業だけを行っていても、海外の規制が関係する場合があります。
EUの規制
EUでは、AIをリスクの程度に応じて分類し、高いリスクを伴う用途に要件を課す枠組みが導入されています。違反に対して高額の制裁が科される仕組みがあり、日本の制度とは性格が大きく異なります。
注意すべきは、EU域内で製品やサービスを提供する場合、日本企業であっても適用対象になり得る点です。EU向けの事業がある企業は、自社のAI利用がどの分類に該当するかを確認しておく必要があります。
そのほかの国の動き
中国では生成AIサービスの提供について個別の規則が設けられており、韓国でもAIに関する基本的な法律が施行されています。AIによって作られたものであることを利用者に分かるように示す義務を定める例も出てきました。
各国の制度は今も動いており、内容が変わる可能性があります。海外展開している場合は、進出先ごとの状況を確認する体制が必要です。
自社に関係するかの見極め方
判断の目安は、海外の利用者にサービスを提供しているか、海外の従業員がAIを使う環境にあるかの2点です。どちらも該当しないなら、当面は国内の法令への対応を優先して構いません。
該当する場合は、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。対応に時間がかかる要件が含まれていることがあるためです。
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企業がとるべき対策
法令を理解したうえで、実際に整えるべき体制を5つの項目に整理します。
社内ルールを整える
最も基本になるのが、利用に関する取り決めを文書にすることです。禁止一辺倒にすると業務の効率化の機会を失い、放任すると事故につながります。
盛り込むべき内容は、使用してよいサービス、入力してよい情報の範囲、生成物の確認手順、記録の残し方、問題が起きた際の連絡先です。使ってよい範囲を具体的に示す形が、実際に守られるルールになります。
入力してよい情報を線引きする
情報の種類ごとに、入力の可否を明確に分けてください。個人情報、顧客から預かった情報、未公開の経営情報、他社との契約に関わる情報は、原則として扱いを制限する対象になります。
判断に迷う情報が出てきたときの相談先を決めておくことも重要です。現場で迷ったまま入力されてしまう状況を防げます。
出力の確認手順を決める
生成された内容をどこまで確認してから使うかを、用途ごとに定めます。社内限りの下書きと、外部に公開する成果物では、求められる確認の水準が違います。
外部公開するものについては、事実関係の確認、類似表現の有無、権利者への配慮という3点を最低限の確認項目としてください。規制のある業種では、担当部署の確認を必須にします。
記録を残す
どの業務で、どのサービスを使い、どんな指示で生成したかを記録できる状態にしておくと、後から問題が起きたときに経緯を説明できます。説明できる状態を保つこと自体が、リスク管理の一部になります。
すべてを厳密に残す必要はありません。外部に公開する成果物や、顧客に提供する内容に限定するだけでも意味があります。
近年は、利用状況を管理者側で把握できる機能を備えた法人向けのサービスも増えています。個人任せにせず、組織として記録が残る環境を用意するほうが、運用の負担は結果的に軽くなります。
体制と担当を決める
最後に、誰がこのルールを維持し、更新するのかを決めてください。法令も指針も動いているため、一度作って放置すると実態と合わなくなります。
法務部門がある組織ではそこが中心になりますが、専任がいない場合でも担当を明示しておくことが重要です。判断に迷ったときに相談できる先があるかどうかが、現場での運用を大きく左右します。
まとめ
生成AIをめぐる日本の法制度は、AIに特化した法律が推進を主眼に置いた基本法として整備され、実務上の判断は既存の法律に委ねられているという構造になっています。AI法自体に企業への罰則はありませんが、著作権法や個人情報保護法に違反すれば当然に責任が生じます。
著作権については、学習段階では一定の範囲で認められる一方、生成物を使う段階では通常の侵害と同じ枠組みで判断されるという違いを押さえてください。個人情報については、入力する行為が利用目的の範囲内かを確認し、学習に使われない条件を整えることが基本になります。
そのうえで、営業秘密、肖像に関する権利、名誉に関わる責任、業種ごとの表示規制といった論点にも目を配る必要があります。社内ルールの整備、入力情報の線引き、出力の確認手順、記録の保存、担当の明確化という5点を整えれば、過度に萎縮せず活用を進められます。
なお、この記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案についての法的な助言ではありません。具体的な判断が必要な場面では、弁護士など専門家への相談をおすすめします。制度は現在も動いているため、最新の情報は各省庁の公表内容をご確認ください。
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この記事の監修者
株式会社ネクストスケール 代表取締役




