アジャイル開発に要件定義は不要?ウォーターフォールとの違いと進め方6ステップを解説
2026年9月14日
著者:NEXT SCALE編集部
監修者:石丸真平

「アジャイルだから要件定義はしなくていい」。開発の相談を受けるなかで、発注側からも開発側からも耳にする言葉です。しかし、この理解のまま着手したプロジェクトは、途中で作業が止まります。
完成の判断基準がないため終わりが見えず、新しい要望が出るたびに方向が揺れる。結果として、期間も費用も当初の想定を超えていきます。
アジャイル開発で変わるのは、要件定義の有無ではなく決め方です。すべてを最初に固めない代わりに、目的と優先順位を先に決め、詳細は必要になった時点で詰めていきます。この切り替えができないまま進めることが、失敗の主な原因になっています。
本記事では、ウォーターフォールとの4つの違い、最初に固定すべきものと後から決めてよいものの線引き、ユーザーストーリーを使った表現方法、進め方の6ステップ、そして体制と契約の注意点までを順に整理します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| アジャイルに要件定義は不要? | 必要。省くと判断基準を失う | 固める範囲と時期が変わるだけ。目的と優先順位がなければ、変更のたびに方向が揺れる。 |
| ウォーターフォールと何が違う? | 実施の時期・粒度・成果物の形 | 最初に全体を固めず、開発と並行して段階的に詳細化する。文書は一度きりではなく更新前提。 |
| 最初に決めるべきことは? | 目的・成功指標・対象範囲の外枠 | 画面やデータ項目の詳細は後回しでよいが、非機能要件と外部連携は早めに固める。 |
| 失敗しやすい原因は? | 発注側が丸投げの体制になる | 意思決定できる担当者を社内に置かないと、確認待ちで開発が止まり効果が出ない。 |
この記事でわかること
- アジャイル開発でも要件定義が必要な理由と、誤解が生まれた背景
- ウォーターフォールの要件定義との4つの違いと、成果物の形の変化
- 最初に固定するもの・早めに固めるもの・後から決めるものの線引き
- ユーザーストーリーや受け入れ条件を使った要件の表現方法と進め方6ステップ
- プロダクトオーナーの置き方や契約形態など、体制面で押さえる条件
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アジャイル開発でも要件定義は必要になる
まず押さえておきたいのは、アジャイル開発に要件定義という工程名が存在しないことと、要件を定義しなくてよいことは別だという点です。
ここでは、誤解がどこから生まれたのか、省いた場合に何が起きるのか、そしてアジャイルにおける要件定義がどういう位置づけなのかを整理します。
「ドキュメント不要」という誤解が生まれた背景
アジャイル開発の考え方の出発点になっているのが、2001年に17名の技術者がまとめたアジャイルソフトウェア開発宣言です。ここには、包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアに価値を置くという一節が含まれています。
この部分だけを取り出すと「文書は作らなくてよい」と読めてしまいます。しかし宣言には、右側の項目にも価値があると認めたうえで左側をより重視する、という但し書きが続きます。
つまり、文書を否定しているのではなく、文書を整えることに時間を使いすぎて動くものの検証が遅れる状態を避けよう、という主張です。必要な要件の共有まで省いてよいという意味ではありません。
要件定義を省いた場合に起きること
要件の整理をほとんど行わずに着手すると、いくつかの問題が連鎖して起こります。
- ゴールが共有されていないため、作ること自体が目的になる
- 完成の判断基準がなく、いつ終わるのかを誰も答えられない
- 新しい要望が出るたびに方向が変わり、作ったものが無駄になる
- 優先順位の基準がないため、重要でない機能に工数が使われる
- 発注側と開発側で完成イメージが食い違い、検収でもめる
変更に強いはずのアジャイル開発が、変更に振り回される状態になります。判断の軸がないと、出てきた要望をすべて受け入れるか、その場の勢いで決めるかのどちらかになるためです。
アジャイルの要件定義は「決め方」が違うだけ
ウォーターフォールでは、開発に入る前に全体の要件を確定させます。アジャイルでは、全体の方向性を決めたうえで、詳細は開発しながら段階的に固めます。
変えないのは目的と評価基準です。変えてよいのは、その目的を達成する手段としての機能の中身や順序になります。
この線引きがあるからこそ、要望が出てきたときに「目的に沿うか」で判断できます。要件定義は変更を防ぐための作業ではなく、迷いを減らすための作業として位置づけられます。
ウォーターフォールの要件定義との4つの違い
アジャイルとウォーターフォールでは、要件定義の何が変わるのか。時期、粒度、成果物、変更の扱いという4つの観点で比べると違いが明確になります。
ウォーターフォールの経験しかない状態で進めると、この差が混乱の原因になります。順に見ていきます。
違い1|実施するタイミングが分散する
ウォーターフォールでは、要件定義は開発前の一つの工程として完結します。この工程が終わらないと次に進めません。
アジャイルでは、プロジェクト開始時の全体像の整理と、各スプリント直前の詳細化という2段階に分かれます。開発期間中ずっと要件定義が続く形です。
この違いを理解していないと、「いつまでに要件を確定させるのか」という問いに答えられず、日程が引けなくなります。確定するのは全体ではなく、次に作る分だけだと捉えると整理できます。
違い2|決める粒度が優先度に応じて変わる
ウォーターフォールでは、すべての機能を同じ深さまで詰めてから開発に入ります。優先度の低い機能も同じだけ検討します。
アジャイルでは、先に作る機能ほど細かく、後回しの機能は粗いまま置いておきます。画面の項目や条件分岐まで詰めるのは、実装の直前です。
後回しの機能を詳細に詰めても、その頃には要望が変わっている可能性があります。検討にかけた時間が無駄になるため、意図的に粗いまま残します。
違い3|成果物が「文書」から「一覧」に変わる
ウォーターフォールの成果物は、章立てされた要件定義書です。一度承認されると、変更には手続きが必要になります。
アジャイルでは、優先順位のついた要件の一覧が中心的な成果物になります。項目の追加、並べ替え、削除が日常的に発生する前提の形式です。
文書を作らないのではなく、更新され続ける形式に変わると考えてください。目的や成功指標を書いた文書は、アジャイルでも最初に作成します。
違い4|変更を例外ではなく前提として扱う
ウォーターフォールでは、要件変更は原則として避けるべきものとして扱われます。発生した場合は変更管理の手続きを踏み、費用と期間を再見積もりします。
アジャイルでは、変更が起きることを前提に進めます。ただし、追加した分だけ何かを外す判断が必要になり、総量が無制限に増えるわけではありません。
「変更自由」と受け取ると破綻します。優先順位の入れ替えは自由でも、期間内に作れる量には限りがあるという条件は変わりません。
4つの違いの比較
ここまでの違いを表に整理すると、次のようになります。
| 観点 | ウォーターフォール | アジャイル |
|---|---|---|
| 実施時期 | 開発前に1回で完結 | 開始時とスプリント直前の2段階 |
| 決める粒度 | すべて同じ深さまで詳細化 | 優先度の高いものから順に詳細化 |
| 主な成果物 | 章立てされた要件定義書 | 優先順位のついた要件の一覧 |
| 変更の扱い | 例外として管理手続きを踏む | 前提として扱い、代わりに何かを外す |
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最初に固定するものと後から決めるものの線引き
アジャイル開発でつまずく多くの場面は、この線引きが曖昧なことに起因します。何でも後から決められると考えると、後戻りできない部分を決め損ねます。
ここでは、固定するもの、早めに固めるもの、後から決めるものの3層に分けて整理します。
最初に固定する|目的・成功指標・対象範囲の外枠
このプロダクトで何を達成するのか、達成できたかをどう測るのか。この2点は開始時に決め、原則として変えません。
成功指標は数えられるものにします。「使いやすくする」ではなく「入力時間を1件10分から3分に短縮する」といった形です。指標がないと、機能を追加するかどうかの判断に根拠がなくなります。
対象範囲は、外枠だけ決めます。どの業務、どの利用者を対象にするのか、逆に今回は扱わないものは何かを明示します。内側の機能の並びは後から変えて構いません。
早めに固める|非機能要件と外部連携
性能、同時利用者数、セキュリティ、可用性といった非機能要件は、後から変えると設計の作り直しになります。機能を追加するのとは影響の大きさが違います。
外部システムとの連携も同様です。連携先、データの種類、頻度が決まらないと、全体の構成を決められません。
アジャイルでも、土台にあたる部分は早い段階で固めます。後回しにしてよいのは、その土台の上に載る機能の中身です。
後から決める|画面の詳細とデータ項目
ボタンの配置、入力欄の並び、エラーメッセージの文言といった詳細は、実装する段階で詰めます。最初は「ログイン画面」「一覧画面」といった大枠で構いません。
データベースの項目定義も同じです。実際に作りながら「この項目は不要だった」と分かることが多く、先に確定させても手戻りになります。
ただし、項目同士の関係だけは早めに整理しておきます。1人の利用者が複数の申請を持つのか、1申請に複数の担当者がつくのかといった構造は、後から変えると影響が広がります。
線引きを誤ったときに起きること
目的が固まらないまま進めると、スプリントごとに作る方向が変わり、前に作ったものを捨てることになります。作業は進んでいるのに完成に近づきません。
逆に、画面の詳細まで最初に決めきろうとすると、アジャイルの形をとりながら実質はウォーターフォールになります。段階的に進める利点が消え、期間だけが長くなります。
着手前に、3層のどこに何を置くかをチーム内で一度確認してください。ここが揃っていれば、途中の判断はほとんど迷いません。
アジャイルの要件定義で使う4つの表現方法
アジャイルでは、要件を長い文章ではなく決まった型に沿った短い記述で表します。型があることで、粒度がそろい、抜けにも気づきやすくなります。
代表的な4つの方法を、使う場面とあわせて説明します。
ユーザーストーリー|利用者の視点で書く
「誰が」「何をしたい」「それはなぜか」の3点を1文で表す書き方です。「営業担当者として、外出先から受注状況を確認したい。訪問前に最新の情報を把握するためだ」といった形になります。
機能名だけを並べた一覧と違い、理由が書かれている点が重要です。理由があると、開発側から「その目的なら別の方法のほうが早い」という提案が出てきます。
1つのストーリーは、1回のスプリントで作り終えられる大きさにします。大きすぎる場合は分割し、小さすぎる場合はまとめます。
受け入れ条件|完成の判断基準を決める
ユーザーストーリーごとに、何ができていれば完成と見なすかを箇条書きで示します。「受注一覧が新しい順に表示される」「該当データがない場合は案内文が出る」といった内容です。
受け入れ条件がないストーリーは、完成したかどうかを誰も判定できません。動くものが出てきてから「思っていたのと違う」という指摘が出る原因になります。
条件は、確認する人が実際に操作して判定できる書き方にします。曖昧な形容詞は使わず、動作と結果で書きます。
プロダクトバックログ|優先順位つきの要件一覧
ユーザーストーリーを優先順位の順に並べた一覧です。上にあるものから順に着手し、下のものは粗いまま置いておきます。
新しい要望が出たときは、この一覧に追加して順位を検討します。追加された分だけ下の項目が押し出される構造になっているため、総量が見える形で管理できます。
順位は固定ではなく、状況に応じて入れ替えます。ただし入れ替えの判断は、最初に決めた目的と成功指標に照らして行います。
インセプションデッキ|開始時の合意事項をまとめる
プロジェクトの目的、やらないこと、想定する利用者、期間や体制の前提などを、開始時に一枚ずつ整理する方法です。関係者が集まって議論しながら作ります。
「やらないことリスト」が含まれている点が特徴です。対象外を先に決めておくと、後から出てくる要望を判断しやすくなります。
作成後は、判断に迷ったときに立ち返る資料として使います。作って終わりにせず、参照される場所に置いておくことが前提です。
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アジャイル開発の要件定義 進め方6ステップ
表現方法が分かったところで、実際にどの順序で進めるのかを見ていきます。最初の2ステップはプロジェクト開始時に一度、残りはスプリントごとに繰り返す形です。
順に説明します。
ステップ1|プロダクトの目的とゴールを決める
関係者を集めて、何のために作るのかを議論します。現在どんな問題があり、それによって何が損なわれているかを事実で確認するところから始めます。
この場に決裁者が入っていないと、後から前提が覆ります。予算と期間の上限も、この段階で共有しておきます。
あわせて、達成できたかを測る指標を決めます。処理時間、件数、利用率など、稼働後に確認できるものを選びます。
ステップ2|利用者と業務の流れを洗い出す
このプロダクトを誰が使うのか、その人が今どのように業務を進めているのかを整理します。利用者の種類ごとに分けて書き出します。
現場へのヒアリングでは、マニュアル通りの手順ではなく実際の運用を確認します。例外対応や属人的な作業は、この段階でしか見つかりません。
業務の流れを図にして現場に見せ、認識が合っているかを確認する往復を入れてください。書き出した内容の誤りは、この時点なら数分で直せます。
ステップ3|ユーザーストーリーに分解する
洗い出した業務の流れを、利用者ごとのやりたいことに分解します。「誰が」「何をしたい」「なぜか」の型に沿って書いていきます。
この段階では実現可能性を問わず、出てきたものをすべて書き出します。技術的に難しいかどうかの判断は次のステップで行います。
1つのストーリーが大きすぎる場合は、意味のある単位で分割します。「受注管理をしたい」は大きすぎ、「受注を一覧で確認したい」「受注を登録したい」に分けられます。
ステップ4|優先順位をつけてバックログにする
書き出したストーリーに順位をつけます。基準はステップ1で決めた目的と成功指標に直接つながるかどうかです。
判断材料として、開発側から実装にかかるおおよその規模を聞きます。効果が大きく規模が小さいものが上位に来ます。
順位づけは関係者が集まった場で決めてください。担当者が1人で並べると、後から「これは先にやるはずだった」という差し戻しが起きます。
ステップ5|スプリント直前に詳細化する
次のスプリントで作る分だけ、受け入れ条件と画面の詳細を詰めます。ここで初めて、入力項目や条件分岐を決めます。
開発側から仕様の確認が出てきた場合は、その場で判断できる体制にしておきます。確認待ちが数日続くと、スプリント自体が成立しなくなります。
詰めきれない部分が残った場合は、そのストーリーを次回に回します。曖昧なまま着手すると、作り直しになる可能性が高くなります。
ステップ6|動くものを確認して次に反映する
スプリントの終わりに、できあがったものを関係者で確認します。受け入れ条件を満たしているかを、実際に操作して判定します。
ここで出てきた気づきをバックログに戻し、順位を見直します。動くものを見て初めて分かることがあるという前提で組まれているのが、この進め方の利点です。
あわせて、進め方そのものも振り返ります。確認に時間がかかった、仕様の伝達で行き違いがあったといった点を、次のスプリントで改善します。
体制と契約で押さえておく3つの条件
アジャイル開発は、進め方の技術だけでは成立しません。誰が意思決定するのか、どういう契約形態で発注するのかという条件が揃って初めて機能します。
ここでは、外部委託する場合に特に押さえておきたい3点を挙げます。
プロダクトオーナーを発注側から立てる
何を作るか、どの順で作るかを決める役割をプロダクトオーナーと呼びます。この役割は、業務と事業の判断ができる発注側の人が担います。
IPAが公開している情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)でも、プロダクトオーナーはユーザ企業が選任するものとして定められ、その役割が明確化されています。
この役割を開発会社に任せると、業務の実態を知らない人が優先順位を決めることになります。兼務でも構いませんが、週の一定時間を確保できる人を選んでください。
準委任契約が前提になる理由
請負契約は、あらかじめ決めた成果物を完成させることに対して対価を払う形です。作るものが最初に確定していないアジャイル開発とは、前提が合いません。
前述のIPAのモデル契約書も、アジャイル開発版では請負ではなく準委任契約を前提としています。専門家として業務を遂行すること自体に対価を払う形です。
契約形態を理解しないまま請負で発注すると、変更のたびに契約変更の手続きが発生します。柔軟に進めるはずが、ウォーターフォール以上に手続きが増える結果になりかねません。
意思決定のスピードが成果を左右する
アジャイル開発では、短い周期で判断を求められる場面が繰り返し発生します。仕様の確認、優先順位の変更、追加要望の可否といった判断です。
発注側の判断に毎回1週間かかる体制では、開発側は待機することになります。期間あたりの成果が落ち、費用対効果も下がります。
着手前に、どのレベルの判断を誰が即決できるかを決めておいてください。金額の上限や影響範囲で線を引き、それ以下は担当者が即決する形にすると滞りません。
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失敗しやすい4つのパターンと対処
アジャイル開発で成果が出なかった事例には、繰り返し現れる型があります。着手前に知っておけば、どれも避けられるものです。
ここでは4つのパターンを挙げ、それぞれの対処をあわせて示します。
目的が曖昧なまま作り始める
「まず動くものを作ってから考える」という進め方は、目的が決まっている場合にのみ機能します。目的自体が曖昧だと、作ったものを評価する基準がありません。
動くものを早く作ることと、何を作るか決めないことは別です。ステップ1の目的と成功指標だけは、着手前に文書として残してください。
バックログが増え続けて終わらない
新しい要望を追加するだけで、何も外さない運用にすると、一覧は増え続けます。着地点が見えず、いつまでも完成しません。
対処は、期間か予算のどちらかを先に固定することです。その枠内で作れる量には限りがあり、追加するなら何かを外すという判断が自然に発生します。
リリースの目標時期を決め、そこまでに入れる範囲を定期的に見直す運用にすると管理しやすくなります。
非機能要件が最後まで残る
機能の議論は具体的で進めやすい一方、性能やセキュリティは判断材料が少なく後回しになります。稼働直前になって「同時に100人使うと止まる」と分かる展開です。
構成の作り直しになるため、影響は機能追加の比ではありません。最初のスプリントに入る前に、非機能要件を検討する時間を日程に組み込んでください。
数値を決められない項目は、開発会社に相場を聞いて構いません。空欄のまま進めるより、たたき台をもとに判断するほうが早く固まります。
発注側が丸投げの体制になる
「アジャイルなので柔軟にお願いします」と伝えて、あとは開発会社に任せる。この形が最も成果の出ない進め方です。
アジャイル開発は、発注側が判断し続けることで成立します。業務の詳細も、優先順位の根拠も、発注側にしかありません。
必要なのは技術的な知識ではなく、業務の実態を説明でき、判断できる人が関わり続けることです。社内にその体制を作れない場合は、まずウォーターフォールで進めるほうが現実的な選択になります。
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生成AIでアジャイルの要件整理を効率化する
アジャイル開発では、要件の整理がスプリントごとに繰り返し発生します。ヒアリングメモをユーザーストーリーに直す、受け入れ条件を書き出すといった作業は毎回必要になります。
この繰り返しの部分は生成AIと相性がよく、実務で時間の削減につながります。3つの使い方と、任せてはいけない範囲を整理します。
ヒアリングメモからユーザーストーリーの草案を作る
現場へのヒアリングで取ったメモや議事録を渡し、「誰が」「何をしたい」「なぜか」の型に整理させます。断片的な発言をストーリーの形にそろえる作業を任せられます。
指示文には、出力する型、1件あたりの文字数、そして「メモに書かれていない内容を追加しない」という条件を必ず入れます。この条件を省くと、確認していない要望が事実として書かれます。
担当者の作業は、出てきた草案を読んで事実を確認し、抜けている観点を足すことになります。白紙から書くより着手が早くなります。
受け入れ条件の抜けを点検する
書き上げたユーザーストーリーと受け入れ条件を渡し、「異常系の条件が書かれていないものを挙げる」「操作して判定できない曖昧な表現を指摘する」といった点検を依頼します。
書いた本人が読み返すと前提が入るため、抜けに気づきにくくなります。機械的に確認させると、権限の考慮漏れやエラー時の挙動といった見落としが見つかります。
バックログの重複と粒度をそろえる
スプリントを重ねるとバックログの項目が増え、似た内容が別々に登録されることがあります。一覧を渡して重複の候補を挙げさせると、整理の手間が減ります。
粒度がばらついている項目の指摘にも使えます。大きすぎるストーリーの分割案を複数出させ、そこから選ぶ形にすると判断が早く進みます。
生成AIに任せてはいけない範囲
優先順位の決定と、投資判断に関わる部分は人が決めます。何を先に作り何を見送るかは事業の状況を踏まえた判断であり、AIには材料がありません。
関係者との合意形成も同様です。要件の整理は文書を作ることが目的ではなく、関わる人が同じ理解に立つための手段です。草案が整っていても、読んで納得した人がいなければ機能しません。
また、顧客名や取引条件を含む情報を外部サービスに入力してよいかは、事前に社内規程で確認してください。入力内容が学習に使われない契約かどうかもあわせて確認が必要です。
業務での生成AI活用を広く整理した内容は、業務効率化アイデア55選|部門別30+AI15+明日から3つで成果を出す方法でも紹介しています。
まとめ
アジャイル開発でも要件定義は必要です。変わるのは有無ではなく決め方であり、全体を最初に固める代わりに、目的と優先順位を先に決めて詳細を段階的に詰めていきます。
ウォーターフォールとの違いは、実施時期、決める粒度、成果物の形、変更の扱いという4点です。成果物は章立てされた文書から、優先順位のついた要件の一覧へと形を変えます。
線引きとしては、目的と成功指標と対象範囲の外枠を固定し、非機能要件と外部連携は早めに固め、画面の詳細やデータ項目は後から決めます。この3層が整理できていれば、途中の判断で迷いません。
進め方は、目的の設定、業務の洗い出し、ユーザーストーリーへの分解、優先順位づけ、スプリント直前の詳細化、動くものの確認という6ステップです。
そして最も重要なのが体制です。プロダクトオーナーを発注側から立て、判断を即決できる状態を作ること。ここが整わないまま着手すると、進め方だけをアジャイルにしても成果は出ません。
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この記事の監修者
株式会社ネクストスケール 代表取締役




