AI活用とは?企業の導入メリットと業務別・業界別の事例、進め方をわかりやすく解説
2026年8月20日
著者:NEXT SCALE編集部
監修者:石丸真平

生成AIが一般に広がったことで、AI活用は一部の先進企業だけが取り組むテーマではなくなりました。日々の資料作成から、需要予測や設備の異常検知まで、AIが担える範囲は数年で大きく広がっています。
一方で、社内で話題には上がるものの「自社のどの業務に効くのかがわからない」「試したが定着しなかった」という状態で止まっている企業も少なくありません。実際、日本企業がAI導入をためらう理由として最も多く挙がるのは、費用でもセキュリティでもなく、効果的な活用方法が見えないことです。
この記事では、AI活用の基本的な考え方から、業務別・業界別の具体的な活用方法、得られるメリットと注意すべきリスク、そして社内で成果を出すための進め方までを順に整理します。これから検討を始める方も、一度つまずいた方も、自社の次の一手を決める材料として読み進めてください。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| AI活用とは? | 業務や事業にAIを組み込み成果を出す取り組み | ツールを入れて終わりではなく、業務プロセスに組み込み、時間削減や売上増といった成果まで結びつける一連の取り組みを指します。 |
| 日本企業のAI活用はどこまで進んでいる? | 業務利用は55.2%で主要国より低い水準 | 総務省の令和7年版情報通信白書によると、何らかの業務で生成AIを使う企業は55.2%。米国や中国を下回る結果になっています。 |
| どの業務から始めればいい? | 文書作成や問い合わせ対応など定型業務から | 議事録やメールの作成、社内問い合わせ、データ集計など、手順が決まっていて件数の多い業務が最初の対象に向いています。 |
| 失敗しないための要点は? | 小さく試して効果を数値で確かめること | いきなり全社展開せず、対象業務を絞って検証し、削減できた時間や精度を測ってから広げる進め方が定着につながります。 |
この記事でわかること
- AI活用の意味と、生成AI・従来型AI・AIエージェントでできることの違い
- 公的統計から見た、日本企業のAI活用の現在地と伸び悩んでいる理由
- 営業・マーケティング・カスタマーサポートなど、業務別のAI活用方法
- 製造業や小売業をはじめとする業界別の活用事例と、そこで生まれた効果
- AI活用を始める5つのステップと、社内に定着させるためのポイント
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AI活用とは業務や事業にAIを組み込んで成果につなげる取り組み
AI活用という言葉は幅広く使われますが、ここでは「AIを業務や事業のプロセスに組み込み、時間短縮やコスト削減、売上増加といった成果まで結びつける取り組み」と捉えます。まずは、混同されやすい言葉の違いと、いま使えるAIの種類を整理しておきます。
AI導入とAI活用は意味が異なる
AI導入は、ツールやシステムを契約して使える状態にすることを指します。これに対してAI活用は、そのツールが実際の業務で使われ、以前より速く、あるいは以前より高い精度で仕事が回っている状態を指します。両者を分けて考えないと、契約したものの誰も使っていない状態を「導入済み」と扱ってしまうことになります。
たとえば全社に生成AIのアカウントを配っても、業務のどの場面で使うのかが決まっていなければ、利用は一部の意欲的な社員にとどまります。逆に、対象業務を1つに絞ってでも手順を作り替えたほうが、削減できた時間ははっきり数字に表れます。
検討の初期段階では「何を導入するか」よりも「どの業務のどの工程を、どう変えるか」を先に決めることが、後の成否を大きく左右します。
生成AIと従来型AIでできることの違い
従来型AIは、過去の大量のデータからパターンを学び、分類や予測を行うことを得意としてきました。需要予測、不良品の検知、顔認証や文字認識などが代表例で、答えのある問題に対して精度高く判定するのが得意分野です。
生成AIは、学習した内容をもとに文章・画像・コードなどを新しく作り出せる点が大きく異なります。議事録の要約、メールの下書き、企画案の素案づくりなど、これまで人が時間をかけて作っていた成果物そのものを作れるようになりました。
どちらが優れているという話ではなく、目的によって使い分けるものです。数値の予測や検査は従来型AI、文章や資料の作成は生成AIというように、課題の性質から選ぶと外れにくくなります。
AIエージェントが広げつつある活用範囲
近年注目されているのがAIエージェントです。与えられた目標に対して、必要な手順を自分で組み立て、社内システムや外部サービスを呼び出しながらタスクを進めていく仕組みを指します。
従来の生成AIが「聞かれたことに答える」役割だったのに対し、AIエージェントは調べる・書く・登録するといった複数の作業を続けて実行できる点が違いです。問い合わせ内容を読み取って一次回答を作り、必要に応じて担当者へ振り分けるといった流れも自動化の対象になります。
ただし、判断を任せる範囲が広がるほど、誤った処理が実行されたときの影響も大きくなります。まずは人が最終確認する形から始め、精度が安定した工程から任せる範囲を広げるのが現実的です。
関連記事:人材育成でのAI活用|業務別の使い方と評価に使う際の法的な線引き【2026年】
日本企業のAI活用はどこまで進んでいるのか
自社の検討が遅れているのかどうかは、感覚ではなく客観的な数字で確かめたいところです。ここでは公的な調査をもとに、国内企業のAI活用の現在地と、そこで挙がっている課題を見ていきます。
業務での生成AI利用率は55.2%にとどまる
総務省の令和7年版情報通信白書によると、何らかの業務で生成AIを利用していると回答した日本企業の割合は55.2%でした。用途別では「メールや議事録、資料作成等の補助」で使っているという回答が47.3%を占めています。
また、自社における生成AI活用の方針を「積極的に活用する」「活用領域を限定して利用する」と定めている企業は49.7%で、前年度の42.7%から約7ポイント増加しました。方針を決めている企業がようやく半数に届いたところで、いずれの数値も米国や中国と比べると低い水準にあります。
個人での利用状況も同様の傾向です。生成AIサービスを使ったことがあると答えた個人は26.7%で、前年度の9.1%から大きく伸びたものの、20代の44.7%に対して40代以上では低く、世代による差が残っています。
出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状
導入を阻む最大の理由は「活用方法がわからない」
同じ白書では、日本企業が生成AIの導入にあたって懸念している点として、最も多く挙がったのが「効果的な活用方法がわからない」ことでした。次いで社内情報の漏えいなどのセキュリティリスク、ランニングコストが続きます。
つまり、多くの企業が止まっているのは技術や予算の問題ではなく、自社の業務のどこに当てはめれば効果が出るのかを描けていないという設計の問題だといえます。
この点は裏を返せば、対象業務さえ具体的に決められれば、進められる企業が相当数あるということでもあります。次章以降で業務別・業界別の使い方を確認し、自社の業務に近いものから当てはめて考えてみてください。
人手不足がAI活用を後押ししている
国内では生産年齢人口の減少が続いており、採用だけで業務量の増加をまかなうのが難しい状況が広がっています。特に事務処理や問い合わせ対応など、件数が多く人手に依存してきた領域ほど影響を受けやすい傾向にあります。
こうした背景から、AI活用は「新しい技術を試す取り組み」ではなく、限られた人員で事業を維持し伸ばすための現実的な選択肢として位置づけられるようになりました。
同時に、AIに任せる部分と人が担う部分を線引きし直す作業も必要になります。どの判断までを自動化してよいのかを決めておくことが、後々のトラブルを防ぎます。
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関連記事:AIの活用例|業務別・業種別の使いどころと効果が出る条件【2026年最新】
業務別に見るAI活用の方法
AI活用は特定の部署だけのものではありません。ここでは代表的な5つの業務領域を取り上げ、どの工程にAIを組み込めるのかを具体的に見ていきます。自社の業務と重なる部分から検討を始めると、話が進みやすくなります。
営業:見込み顧客の抽出と提案準備の効率化
営業では、過去の受注データから成約しやすい顧客の傾向を学習させ、優先的にアプローチすべきリストを作る使い方があります。担当者の経験や勘に頼っていた優先順位づけを、データで裏づけられるようになります。
生成AIを使えば、商談メモから提案書のたたき台を作ったり、業界情報を整理して事前準備の時間を短くしたりできます。営業担当者が顧客と向き合う時間を増やすことが、この領域でAIを使う本来の目的です。
商談の音声を文字起こしして要点を抽出し、次のアクションまで整理する運用も広がっています。報告書作成にかかっていた時間をそのまま削減できるため、効果が見えやすい使い方です。
マーケティング:コンテンツ制作と広告運用の改善
記事や広告文の初稿作成、キャッチコピーの案出し、SNS投稿の量産などは、生成AIとの相性が良い領域です。人が担うのは、企画の方向づけと、事実確認を含む最終的な仕上げに移ります。
配信面では、広告のクリック率や購買データを分析し、配信先や予算配分を調整する使い方があります。大量のパターンを短時間で試せることが、検証サイクルを速める最大の利点です。
ただし、生成した文章をそのまま公開すると、事実誤認や表現の問題が残る場合があります。公開前のチェック工程は必ず設計に含めておきましょう。
カスタマーサポート:問い合わせ対応の一次受け
社内マニュアルやFAQを読み込ませたチャットボットを設置し、よくある質問に自動で回答する使い方は、導入が進んでいる代表例です。営業時間外の問い合わせにも対応できるようになります。
オペレーターが対応する場面でも、過去の対応履歴から回答候補を提示したり、通話内容を要約して記録を残したりできます。応対品質のばらつきを抑えながら、後処理の時間を減らせる点が評価されています。
重要なのは、AIが回答できない内容を早めに人へ引き継ぐ設計です。無理に自動化率を上げると、かえって顧客満足度を下げることがあります。
バックオフィス:経理・人事・総務の定型処理
請求書や領収書の読み取り、仕訳の候補提示、経費申請の内容チェックなど、経理には形式が決まった作業が多く、AIを組み込みやすい領域です。文字認識と生成AIを組み合わせると、確認作業の負担が下がります。
人事では、応募書類の要約や面接記録の整理、求人票の作成補助などに使われています。総務では社内規程を検索できる仕組みを作り、問い合わせ対応そのものを減らす方法が有効です。
バックオフィスは全社員が関わるため、小さな時間短縮でも合計すると効果が大きくなりやすいという特徴があります。最初の対象として選ばれることが多いのはこのためです。
開発・情報システム:コード生成と社内ナレッジ検索
ソフトウェア開発では、コードの自動生成やレビューの一次チェック、テストコードの作成などにAIが使われています。実装そのものより、仕様の検討や設計に時間を割けるようになります。
情報システム部門では、システムのログを学習させて通常と異なる動きを検知する使い方があります。障害やセキュリティ上の異常を早い段階で把握できるようになります。
社内に散らばったドキュメントを横断して検索できる仕組みを整えることも、地味ながら効果の高い取り組みです。探す時間を減らすことは、全部門に効く改善になります。
業務ごとのより詳しい進め方や、AI開発を外部に依頼する際の考え方については、ネクストスケールのコラム一覧でも取り上げています。
関連記事:医療現場のAI活用例|業務別の使いどころと規制で外せない確認点【2026年】
業界別のAI活用事例
業務単位の使い方に加えて、業界ごとに定着しつつある活用のかたちがあります。自社と近い業界の事例は、社内で説明する際の説得材料にもなります。ここでは6つの業界を取り上げます。
製造業:外観検査と設備の予知保全
製造現場では、画像認識を使った外観検査が広く使われています。人の目視では見落としが起きやすい微細な傷や欠けを、一定の基準で判定できるようになります。
設備に振動や温度のセンサーを取り付け、正常時のデータを学習させて異常の兆候を早期に検知する予知保全も進んでいます。故障してから直すのではなく、止まる前に手を打てるようになることで、稼働率と修繕費の両方が改善します。
半導体工場でポンプのモーターや軸受のデータを取得し、正常稼働のモデルと比較して異常を検知した例では、年間の修繕費用が大幅に圧縮されたと報告されています。
小売・EC:需要予測と接客の個別化
小売業では、天候や曜日、過去の販売実績をもとにした需要予測が定着しつつあります。発注量の精度が上がることで、欠品と廃棄の両方を減らせます。
ECサイトでは、閲覧履歴や購買履歴から個々の顧客に合った商品を提示する仕組みが一般的になりました。同じ売場でも顧客ごとに見え方を変えられることが、実店舗にはない強みになっています。
店舗でも、カメラ映像から来店客の動線を分析し、棚割りや人員配置を見直す取り組みが行われています。
建設・インフラ:点検作業の省力化と図面処理
橋梁やトンネルの点検では、ドローンで撮影した画像からひび割れを検出する使い方が広がっています。高所や危険な場所に人が近づく回数を減らせる点も大きな利点です。
設計段階では、過去の図面データを学習させて設計案の候補を出す取り組みも進んでいます。熟練技術者の知見を組織の資産として残せることが、人材不足の続く業界では重要な意味を持ちます。
施工管理では、日報や写真の整理、報告書の作成といった事務作業を生成AIが担うことで、現場に出る時間を確保しやすくなります。
医療・介護:診断支援と記録業務の負担軽減
医療分野では、画像から病変の候補を提示する診断支援が実用化されています。最終的な判断は医師が行いますが、見落としを減らす補助として役立っています。
介護の現場では、記録の音声入力と自動要約によって、書類作成にかかる時間を減らす取り組みが進んでいます。専門職が本来の業務に時間を使えるようにすることが、この領域の主な狙いです。
個人の健康情報を扱うため、データの管理体制と法令への対応は他業界以上に慎重な設計が求められます。
金融・保険:与信審査と不正検知
金融機関では、取引履歴や属性データをもとにした与信審査の支援にAIが使われています。判断のスピードが上がるだけでなく、基準の一貫性も保ちやすくなります。
クレジットカードの不正利用検知は、従来型AIが早くから成果を出してきた領域です。通常と異なる取引パターンをリアルタイムで検知し、被害が広がる前に止められる点が評価されています。
保険では、事故写真から損害額を推定する仕組みや、問い合わせ内容に応じた商品説明の自動生成などが導入されています。
物流:配送計画と倉庫内作業の最適化
配送では、交通状況や荷量、時間指定の条件を踏まえてルートを組み立てる最適化が進んでいます。担当者の経験に依存していた配車計画を、短時間で作れるようになります。
倉庫内では、需要予測に基づいて商品の置き場所を入れ替え、ピッキングの移動距離を減らす取り組みがあります。同じ人員でも処理できる件数を増やせることが、人手不足の続く物流業界で重視されている理由です。
検品作業に画像認識を使い、目視確認の負担を下げる事例も増えています。
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AI活用で企業が得られるメリット
ここまで見てきた活用方法は、最終的にどのような効果につながるのでしょうか。社内で稟議を通す際にも使えるよう、得られるメリットを4つに整理します。
定型業務の時間を削減して人を再配置できる
議事録の作成、データの集計、書類の確認といった作業は、必要ではあるものの直接売上を生むわけではありません。こうした業務にかかる時間をAIが肩代わりすることで、企画や顧客対応に人を振り向けられます。
削減された時間をどこに使うかまで決めておくことが、成果を数字で示すうえでは欠かせません。単に楽になっただけでは、次の投資判断につながりにくくなります。
属人化していた判断をデータで裏づけられる
熟練者の経験に頼ってきた需要予測や品質判定を、データにもとづく判断に置き換えられます。担当者の異動や退職によって精度が落ちるリスクを下げられる点は、組織にとって大きな意味を持ちます。
また、判断の根拠が記録として残るため、なぜその結論に至ったのかを後から振り返れるようになります。改善の余地を見つけやすくなるのも副次的な効果です。
品質を一定に保ちながら長時間の稼働ができる
人は疲労や集中力の低下によって精度が変動しますが、AIは同じ基準で処理を続けられます。検査工程や問い合わせ対応など、件数が多く判断の一貫性が求められる業務ほど効果が表れます。
営業時間外や休日にも対応できるようになることは、顧客の待ち時間を減らすことに直結します。人を増やさずに接点を広げられる点は、サービス業にとって特に大きな利点です。
新しい商品やサービスの種が生まれる
AI活用は既存業務の効率化にとどまりません。蓄積したデータを分析することで、これまで気づかなかった顧客のニーズや、組み合わせて売れる商品の傾向が見えてくることがあります。
既存サービスにAI機能を組み込み、付加価値として提供する動きも広がっています。効率化で生まれた余力を新しい取り組みに回せることが、中長期で差につながる部分です。
AI活用で押さえておきたいリスクと注意点
効果が期待できる一方で、対策を取らないまま進めると思わぬ問題を招くこともあります。検討段階で必ず確認しておきたい5つの論点を挙げます。
誤った内容をもっともらしく出力することがある
生成AIは、事実と異なる内容を自然な文章で出力する場合があります。文章として整っているぶん、内容を確かめずに使うと誤りに気づきにくいという難しさがあります。
社外に出す資料や数値を含む文書は、人による事実確認を必ず挟む運用にしておくことが基本です。確認の責任者と手順を最初に決めておくと、現場での判断に迷いがなくなります。
機密情報や個人情報の取り扱いに注意が必要
外部のサービスに社内データを入力する場合、その内容がどう扱われるかを確認しておく必要があります。学習に使われない設定があるか、保存期間はどうなっているかは契約前の確認事項です。
入力してよい情報の範囲を社内ルールとして明文化し、全社員に周知することが現実的な対策になります。個人情報や取引先の機密を含む内容については、扱えるツールを限定する方法もあります。
著作権や商標権を侵害する可能性がある
生成AIが作った文章や画像が、既存の著作物と似てしまうことがあります。公開物として使う場合は、権利関係の確認が欠かせません。
生成物をそのまま使わず、確認と修正を経て公開する運用にしておくと、リスクを抑えられます。判断に迷う場合は専門家に相談し、社内のチェック基準に反映させておきましょう。
コストが効果に見合わなくなる場合がある
AIの利用には、初期の構築費用だけでなく、利用量に応じた継続的な費用や、精度を保つための調整作業が発生します。導入時の見積もりだけで判断すると、運用段階で想定を超えることがあります。
削減できる時間や人件費を金額に換算し、運用費と比較したうえで対象業務を選ぶことが重要です。効果が小さい業務に高機能な仕組みを入れても、投資は回収できません。
現場で使われずに終わってしまう
技術的には問題がなくても、現場の業務手順に組み込まれていなければ、AIは使われないまま終わります。既存のやり方を変える負担が、利便性を上回ってしまうためです。
導入前から現場の担当者を巻き込み、使う場面と手順まで一緒に設計することが定着の分かれ目になります。研修や相談窓口を用意し、使い方に迷ったときに聞ける状態を作っておきましょう。
契約前に確認したい項目や開発会社の選び方は、ネクストスケールのコラム一覧にまとめています。
AI活用の進め方を5つのステップで整理する
リスクを踏まえたうえで、実際にどう進めればよいのかを順を追って整理します。この流れは業種や規模を問わず応用できるため、社内の検討スケジュールを組む際の下敷きとして使ってください。
ステップ1:業務の棚卸しと課題の言語化
最初に行うのは、AIの話ではなく業務の整理です。どの部署のどの作業に、月あたりどれくらいの時間がかかっているのかを洗い出します。
そのうえで、時間がかかっている理由を分解します。件数が多いのか、判断に迷うのか、情報を探すのに時間がかかるのかによって、打つ手は変わります。課題を業務レベルの言葉で書き出せた時点で、検討の半分は終わっているといえます。
ステップ2:対象業務の絞り込みと効果の試算
洗い出した業務のうち、件数が多く手順が定まっているもの、かつ誤りが起きても致命的にならないものから優先します。最初の対象は1つか2つに絞るのが現実的です。
選んだ業務について、どれくらいの時間を削減できそうかを試算します。金額に換算した見込みがあれば、社内の合意形成が格段に進めやすくなります。
ステップ3:小さく試して検証する
いきなり本格開発に入らず、限られた範囲で試してみる段階です。既存のツールで代替できるなら、まずはそれで十分なことも少なくありません。
検証では、精度だけでなく現場が実際に使えるかどうかも確かめます。うまくいかなかった場合に撤退できる規模で試すことが、この段階の目的です。試した結果は、次の判断材料として必ず記録に残しましょう。
ステップ4:本番実装と社内ルールの整備
検証で見通しが立ったら、既存システムとの連携や権限設定を含めた実装に進みます。ここで技術面だけを進めると、運用が始まってから混乱しやすくなります。
入力してよい情報の範囲、出力を確認する担当者、問題が起きたときの連絡先といったルールを同時に整えることが欠かせません。マニュアルと研修をセットで用意しておくと、立ち上がりが早まります。
ステップ5:運用しながら改善し、他部門へ広げる
AIは導入して終わりではなく、使いながら精度を上げていくものです。利用状況や誤りの傾向を定期的に確認し、指示の出し方や参照するデータを見直します。
成果が出た取り組みは、業務内容の近い他部門へ横展開します。最初の事例が社内の説得材料になるため、効果は必ず数値で残しておくことが次の展開を左右します。
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AI活用を社内に定着させるためのポイント
同じツールを使っても、成果が出る企業と出ない企業に分かれます。その差は技術力よりも、進め方と体制にあることがほとんどです。ここでは定着に効く4つの観点を挙げます。
経営層が目的と優先順位を示す
現場からの発案だけでは、部門をまたぐ業務の見直しや、必要な予算の確保が難しくなります。何のためにAIを使うのか、どの業務を優先するのかを経営層が示すことで、判断が速くなります。
目的が「話題だから」ではなく「この業務の時間を減らす」といった具体的な言葉になっているかを確認してください。目的が曖昧なまま進んだ取り組みは、途中で立ち消えになりがちです。
成果を数値で見せて次の予算につなげる
削減した時間、対応できた件数、精度の変化など、測れるものを事前に決めておきます。導入前の数値を取っておかないと、後から効果を比較できません。
成果が数字で示せると、次の投資判断が通りやすくなり、取り組みが継続します。逆に、感覚的な評価しか残らないと、担当者が変わった時点で止まってしまいます。
社内人材の育成と外部パートナーを使い分ける
すべてを自社でまかなうのは容易ではありませんが、すべてを外部に任せると社内に知見が残りません。業務理解が必要な部分は社内、技術的な構築は外部という切り分けが現実的です。
業務を最もよく知る現場の社員がAIを使いこなせるようになることが、長い目で見た競争力になります。基本的な使い方の研修に加え、成功例を共有する場を設けると広がりが早くなります。
失敗しやすいパターンから逆算して設計する
よくある失敗は、対象業務を絞らずに全社展開してしまう、検証で終わって本番に進まない、導入後に誰も改善を担当しないという3つです。いずれも進め方の問題であり、事前に防げます。
担当者と期限、判断基準を最初に決めておくことで、多くの失敗は避けられます。検討を始める段階で、次の判断をいつ誰が行うのかまで決めておきましょう。
個人や小規模チームから始めるAI活用
全社的な仕組みづくりには時間がかかりますが、個人やチーム単位でできることは今日からあります。ここから始めて、成功例を社内に広げていく進め方も有効です。
まずは日々の文書作成と情報整理から
メールの返信文、報告資料の下書き、会議メモの要約といった作業は、生成AIに任せやすい領域です。定型的な内容ほど相性がよく、確認と修正に集中できるようになります。
表計算ソフトのデータを読み込ませ、傾向を整理させる使い方も有効です。専門的な分析ツールがなくても、手元のデータから判断材料を短時間で用意できるようになります。
指示の出し方で結果は大きく変わる
同じAIでも、依頼の仕方によって出力の質は大きく変わります。誰に向けた文章か、どのくらいの長さか、どんな前提条件があるかを具体的に伝えることが基本です。
一度で完成させようとせず、出てきた内容に対して修正点を伝えて調整していくほうが、結果的に早く目的に近づきます。よく使う依頼文は、チームで共有しておくと全体の底上げになります。
扱ってよい情報の範囲を先に決めておく
個人利用であっても、顧客情報や未公開の社内資料を入力してよいかは事前に確認が必要です。判断に迷う情報は入力しないという原則を持っておくと安全です。
チームで使い始める段階で、簡単でよいので利用ルールを文書にしておくことをおすすめします。後から全社ルールを整える際の下敷きにもなります。
まとめ
AI活用とは、ツールを導入することではなく、業務のプロセスに組み込んで成果まで結びつける取り組みを指します。生成AIは文章や資料の作成、従来型AIは予測や検知というように、課題の性質に合わせて使い分けることが出発点になります。
総務省の調査では、業務で生成AIを利用している日本企業は55.2%で、導入をためらう最大の理由は活用方法が見えないことでした。裏を返せば、対象業務を具体的に決められた企業から前に進めるということです。
営業やカスタマーサポート、バックオフィスといった業務単位でも、製造業や小売業といった業界単位でも、すでに成果の出ている使い方は数多くあります。自社に近い事例を起点に、月あたりの作業時間が大きい業務から候補を挙げてみてください。
進め方は、業務の棚卸し、対象の絞り込み、小さく試す、本番実装とルール整備、運用と横展開という5つのステップに整理できます。誤情報や情報漏えい、コストの見合いといったリスクへの備えを設計に含めたうえで、小さく始めて効果を数値で確かめることが、社内に定着させる近道です。
何から着手すべきか判断がつかない場合は、自社の業務を整理する段階から相談してみるのも一つの方法です。
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この記事の監修者
石丸真平
NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援
ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。

