エンジニア不足の原因と対策 2030年最大79万人不足の時代に企業がとるべき打ち手
2026年9月14日
著者:NEXT SCALE編集部
監修者:石丸真平

「エンジニアが採用できない」「案件はあるのに人が足りない」。こうした声は、IT企業に限らず、製造業・金融・小売・医療など業種を問わず広がっています。
経済産業省の調査によると、IT人材は2030年には最大で約79万人不足するという予測が示されています。少子高齢化による労働人口の減少と、DX推進に伴うエンジニア需要の急拡大が重なり、この需給ギャップは今後さらに拡大していく見通しです。
本記事では、エンジニア不足の現状と原因を最新データに基づいて整理したうえで、企業が受ける影響、即効性のある対策、中長期で取り組むべき施策、そしてAI活用によるエンジニア不足の補い方までを体系的に解説します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| エンジニア不足はどれくらい深刻なのか? | 2030年には最大79万人が不足すると予測されている | 経済産業省の調査では、IT人材の不足数は低位で16万人、中位で45万人、高位で79万人と試算されています。業種を超えた人材争奪が激化しています |
| なぜエンジニアが不足しているのか? | 少子化・需要拡大・育成の遅れが3大要因 | 労働人口の減少に加え、DXやAI分野の急速な需要拡大、IT教育の遅れや育成に時間がかかる構造的な問題が重なっています |
| エンジニア不足にどう対策すべきか? | 採用の工夫・社内育成・AI活用の3本柱で取り組む | 採用条件の見直しや副業人材の活用に加え、既存社員のリスキリング、AIによる業務自動化で「採用しなくても回る体制」を構築する方法が注目されています |
| 中小企業でもできる対策はあるか? | AI活用と助成金を組み合わせれば現実的に取り組める | 生成AIを使った業務効率化で1人あたりの生産性を高め、人材開発支援助成金を活用した社員研修でデジタルスキルの底上げを図る方法が広がっています |
この記事でわかること
・エンジニア不足の現状と経済産業省の予測データ
・不足が深刻化している5つの原因とその構造
・エンジニア不足が企業経営に与える3つの影響
・即効性のある対策と中長期で取り組むべき施策
・AI活用でエンジニア不足を補う具体的な方法
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エンジニア不足の現状 ─ データで見る深刻度
エンジニア不足は「なんとなく人が足りない」という感覚的な問題ではなく、公的な調査データによって裏付けられた構造的な課題です。ここでは、主要なデータを基に現状を整理します。
経済産業省の予測:2030年に最大79万人のIT人材が不足する
経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」では、IT人材の不足数について3つのシナリオが示されています。低位シナリオで約16万人、中位シナリオで約45万人、高位シナリオでは約79万人が不足すると予測されています(参照:経済産業省「IT人材需給に関する調査」)。
2015年時点ですでに約17万人が不足していたとされており、この数字はその後も拡大を続けています。いわゆる「2025年の崖」で指摘されたレガシーシステムの維持に人材が割かれる問題も、エンジニア不足に拍車をかけています。
採用市場の実態:約4社に1社が採用目標を達成できていない
レバテックの調査(2026年)では、約4社に1社が2026年卒エンジニアの採用目標を達成できない見込みであると報告されています。採用が難航する主な理由として、「求めるスキルを持つ人材の不足(51.2%)」と「採用コストの増加(37.0%)」が挙げられています。
特に中小企業にとっては、大手企業との採用競争で不利な立場に置かれやすく、年収や福利厚生の面で見劣りすることが応募者数の減少につながっています。採用だけに頼るエンジニア確保には限界があるという認識が、多くの企業で広がりつつあります。
不足しているのは「先端技術エンジニア」
エンジニア不足は全分野で均等に発生しているわけではありません。特に深刻なのは、AI・機械学習、クラウドインフラ、セキュリティ、データサイエンスといった先端技術領域のエンジニアです。
従来型のシステム開発やメンテナンスに従事するエンジニアも不足していますが、先端領域ではそもそも育成に時間がかかるうえ、世界的な需要増によって国際的な人材争奪も起きています。日本国内だけでこの問題を解決するのは難しく、外部リソースの活用やAIによる代替も含めた多面的なアプローチが求められます。
エンジニアが不足する5つの原因
エンジニア不足の背景には、複数の構造的な要因が絡み合っています。ここでは代表的な5つの原因を整理します。
1. 少子高齢化による労働人口の減少
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は年々減少しており、2040年には約6,000万人にまで落ち込むと見られています。IT分野も例外ではなく、エンジニアを目指す若者の絶対数が減っていることが、供給不足の根本的な原因です。
2. DX推進による需要の急拡大
製造業・金融・流通・医療など、これまでITと距離があった業種でもDX推進が加速し、エンジニアの需要が業種を超えて拡大しています。IT企業だけでなく非IT企業も含めた「エンジニアの取り合い」が常態化しています。
3. 技術の進化スピードに育成が追いつかない
AI・クラウド・セキュリティなどの技術は日進月歩で進化しています。既存のエンジニアが最新技術を習得し続ける必要がある一方で、育成には時間とコストがかかるため、即戦力となる人材はますます希少になっています。
4. 日本のIT教育の遅れ
日本では、プログラミング教育の必修化が2020年の小学校を皮切りに段階的に進められてきましたが、欧米やアジア諸国と比較するとIT教育の開始時期が遅く、大学でのCS(コンピュータサイエンス)専攻者の比率も低いのが現状です。教育段階からのIT人材の裾野が狭いことが、長期的な供給不足の一因になっています。
5. 既存システムの維持にリソースが割かれている
多くの企業では、老朽化した基幹システム(レガシーシステム)の保守・運用にエンジニアのリソースが割かれています。ITリソースの約8割がシステムのメンテナンスに費やされているという指摘もあり、新規開発やDX推進に充てられるエンジニアが構造的に不足しています。
エンジニア不足が企業経営に与える3つの影響
エンジニア不足は、単に「開発が進まない」という問題にとどまりません。企業経営に対して、以下の3つの深刻な影響を及ぼします。
DX推進の遅延と競争力の低下
エンジニアが確保できなければ、業務効率化やサービスのデジタル化といったDX施策が計画通りに進みません。同業他社がDXを推進して生産性を高めている中、自社だけが手つかずの状態が続けば、競争力の差は年単位で広がっていきます。DXの遅れは売上や利益への直接的なインパクトとなり得ます。
既存システムのリスク増大
レガシーシステムの保守を担うエンジニアが退職・異動した場合、システムの仕様を把握できる人がいなくなり、障害発生時の対応が困難になります。経済産業省はこのリスクについて、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告しています。
人件費の高騰と採用コストの増加
エンジニアの需給が逼迫する中、優秀なエンジニアの年収相場は年々上昇しています。特にAIエンジニアやデータサイエンティストの採用には、年収600万〜1,500万円以上の予算が必要になるケースもあります。採用広告費やエージェント手数料も含めると、1人あたりの採用コストが数百万円に達することも珍しくありません。
エンジニア不足に対する企業の対策 ─ 5つのアプローチ
エンジニア不足を「採用できるまで待つ」姿勢で放置すると、事業への影響は拡大する一方です。ここでは、企業が今すぐ着手できる5つの対策を紹介します。
1. 採用条件と採用チャネルを見直す
「正社員・フルタイム・オフィス勤務」という従来の採用条件では、候補者の母集団が限られます。リモートワークの許容、副業・業務委託の活用、フリーランスエンジニアとの契約など、雇用形態の柔軟化によって採用の幅を広げることが第一歩です。
週1〜2日の稼働でプロのエンジニアに顧問として参画してもらう「技術顧問」モデルも、フルタイム採用が難しい中小企業にとっては有効な選択肢です。
2. 既存社員のリスキリングを推進する
新規採用だけに頼るのではなく、既存社員にデジタルスキルやプログラミングの基礎を身につけてもらうリスキリングも、エンジニア不足への現実的な対策です。全員をエンジニアに育成する必要はなく、「AIツールを使いこなせる人材」を増やすだけでも、エンジニアの業務負担を軽減できます。
厚生労働省の「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」を活用すれば、訓練費の最大75%(中小企業の場合)が補助されるため、費用面のハードルを大幅に下げることが可能です。
3. AI・自動化ツールで「人がやらなくていい業務」を減らす
エンジニア不足の根本的な解消が難しい以上、AIや自動化ツールを活用して「そもそも人手が必要な業務」を減らすアプローチが不可欠です。定型的なデータ処理、レポート作成、テスト工程の一部など、AIに任せられる業務は着実に増えています。
生成AIを活用してコードの下書きやドキュメントの自動生成を行えば、エンジニア1人あたりの生産性を高め、少ない人数でも同等以上のアウトプットを実現できます。「人を増やす」のではなく「1人あたりの成果を増やす」という発想の転換が重要です。
4. オフショア開発や外部パートナーを活用する
国内での採用が困難な場合、ベトナム・フィリピン・インドなどのオフショア開発拠点を活用することで、比較的低コストでエンジニアリソースを確保できます。日本語対応が可能なオフショア企業も増えており、コミュニケーション上の障壁は以前より低くなっています。
外部パートナーに開発を委託する際は、仕様書の整備や品質管理のルールを事前に定めておくことが成功の鍵です。丸投げではなく、自社の業務知識を活かした協業体制を構築することで、外部リソースの効果を最大化できます。
5. エンジニアが定着する職場環境を整備する
採用した人材が早期に退職してしまえば、採用コストは回収できません。柔軟な働き方(リモートワーク・フレックス)、技術的な成長機会の提供、適正な報酬設計は、エンジニアの定着率を高めるうえで特に重要な要素です。
エンジニアが「この会社で成長できる」と感じられる環境を作ることが、長期的な人材確保の基盤になります。社内勉強会の実施やカンファレンス参加費の補助など、学習を支援する制度を整えることも効果的です。エンジニアにとっての魅力は年収だけではなく、技術的な挑戦ができる環境、裁量のある働き方、キャリアの成長実感といった要素も大きな判断基準になります。これらを総合的に整備することが、採用市場での競争力につながります。
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AI活用でエンジニア不足を補う具体的な方法
エンジニアの数を増やすことが難しい中で、AIを活用して「少ない人数で多くの成果を出す体制」を構築する動きが加速しています。ここでは、AI活用の具体的な方法を3つ紹介します。
生成AIによるコーディング支援で開発工数を削減する
生成AIを活用したコーディング支援ツールは、コードの自動補完、テストコードの生成、バグの検出と修正提案といった機能を備えています。エンジニアがゼロからコードを書く時間を短縮し、1人あたりの開発効率を高めることで、人数の不足を補えます。
あるIT企業では、生成AIの導入後にコードレビューの工数が約30%削減されたという報告もあります。ただし、AIが生成したコードの品質チェックは人間が行う必要があるため、「完全な自動化」ではなく「エンジニアの生産性を底上げするツール」として位置づけることが重要です。
非エンジニア社員がAIツールを使いこなせる体制を作る
これまでエンジニアに依頼していた業務の一部を、非エンジニアの社員がAIツールを使って自力で処理できる体制を構築する方法です。たとえば、データの集計・分析、定型レポートの作成、問い合わせへの一次対応などは、適切なAIツールと研修があればエンジニア以外の社員でも対応できます。
「エンジニアにしかできない業務」と「AIツールがあれば誰でもできる業務」を切り分けることが出発点です。この切り分けを行うことで、エンジニアは本来の開発業務に集中でき、組織全体の生産性が向上します。
業務プロセスの自動化でエンジニアの負担を減らす
RPAやノーコードツールを活用して、定型的な業務プロセスを自動化し、エンジニアが手動で行っていた作業を削減する方法です。システム間のデータ連携、定期的なバッチ処理、監視アラートの自動送信など、自動化の余地がある業務は多くの企業に存在します。
自動化によって空いたエンジニアの工数を、新規開発やDX推進といった付加価値の高い業務に振り向けることで、限られたエンジニアリソースの有効活用が実現します。
業種別に見るエンジニア不足の影響と対応策
エンジニア不足の影響は、業種によって現れ方が異なります。ここでは、特に深刻な影響を受けている3つの業種について、状況と対応策を紹介します。
製造業:工場の自動化とデータ活用を担う人材が足りない
製造業では、工場の生産ラインの自動化や、品質検査へのAI導入、設備の予兆保全といった取り組みが進んでいますが、これらの技術を設計・導入・運用できるエンジニアが圧倒的に不足しています。特に中小の製造企業では、専門部署を設置する余裕がなく、熟練工の引退と相まって技術の継承そのものが危機に瀕しているケースもあります。
対応策としては、経済産業省が推進し、産業技術総合研究所が2026年7月に始動させた「製造AX拠点」や、共同利用型のAIプラットフォームの活用が挙げられます。自社単独で開発を行わなくても、先端技術を取り入れられる環境が整いつつあります。まずは外部リソースを活用しながら、段階的に社内の知見を蓄積していく進め方が現実的です。
金融業:セキュリティとコンプライアンスの専門人材が不足
金融業界では、フィンテックの進化やオンラインバンキングの拡大に伴い、サイバーセキュリティやコンプライアンス対応を担えるエンジニアの需要が急増しています。顧客の資産や個人情報を扱う以上、セキュリティ上の脆弱性は許容されず、高度な専門知識を持つ人材が求められます。
大手金融機関は高年収で人材を囲い込む傾向にあり、地方銀行や中小の金融事業者にとっては採用が一段と困難な状況です。外部のセキュリティコンサルタントの活用や、既存社員へのセキュリティ研修の強化が、現実的な対応策として広がっています。
医療・介護:電子カルテやオンライン診療の基盤を支える人材が必要
医療・介護分野では、電子カルテの導入、オンライン診療システムの運用、介護記録のデジタル化など、ITインフラの整備が急務となっている一方で、医療業界特有の業務知識を持つエンジニアは極めて少ないのが現状です。
この分野では、医療従事者にITリテラシーを習得してもらう「医療DX人材の育成」と、IT企業との協業による外部リソースの活用を並行して進めることが重要です。国の補助金制度を活用したデジタル化投資も選択肢として検討すべきでしょう。
エンジニア不足への対策として押さえておきたい助成金・補助金
エンジニア不足への対策を進めるうえで、国や自治体が提供する助成金・補助金を活用することで、費用負担を軽減できます。ここでは代表的な制度を2つ紹介します。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)
厚生労働省が提供するこの助成金は、新たな事業展開やDX推進に伴う社員のスキルアップ研修に対して、訓練費の最大75%(中小企業の場合)を補助する制度です。AIやプログラミングの社内研修を実施する際に活用でき、エンジニアを外部から採用するのではなく、既存社員を育成するアプローチの費用を大幅に抑えられます。
申請手続きには、訓練計画の事前提出や、訓練実施後の報告書作成が必要です。社内で対応が難しい場合は、研修会社やコンサルティング企業に申請支援を依頼する方法もあります。
中小企業省力化投資補助金
人手不足に悩む中小企業に向けて、業務プロセスに合わせた設備導入やシステム構築を支援する補助金です。従業員数に応じて最大1億円の補助が受けられる場合もあり、AI導入や自動化ツールの導入費用に活用できます。
補助金の制度内容やスケジュールは随時更新される可能性があるため、申請前に必ず公式の公募要領を確認してください。「補助金を活用してAIを導入し、エンジニアの業務負担を減らす」という組み合わせは、中小企業にとって最も現実的な打ち手の一つです。
助成金や補助金の情報は年度ごとに更新されるため、最新の公募状況は各省庁の公式サイトや中小企業基盤整備機構のポータルサイトで定期的に確認することをおすすめします。「自社で使える制度があるかわからない」という場合は、商工会議所や専門のコンサルタントに相談するのも有効な手段です。
また、助成金を活用した研修の実施にあたっては、単にカリキュラムをこなすだけでなく、研修後に社員が実際の業務で学んだスキルを活用できているかどうかを測定する仕組みを併せて設計しましょう。研修の効果が業務成果として現れて初めて、エンジニア不足への対策として機能したと言えます。
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まとめ
エンジニア不足は、少子高齢化、DX需要の急拡大、IT教育の遅れ、レガシーシステムへのリソース集中といった複数の構造的要因が絡み合って深刻化しています。経済産業省の予測では、2030年には最大79万人のIT人材が不足する見通しであり、この問題は今後さらに加速していきます。
企業が取るべき対策は、採用チャネルの多様化、既存社員のリスキリング、AI・自動化ツールの活用、外部リソースの活用、定着率を高める職場環境の整備の5つです。一つの施策だけで解決する問題ではなく、複数のアプローチを組み合わせて取り組むことが求められます。
特にAI活用は、「人を増やす」のではなく「1人あたりの生産性を高める」という発想で、エンジニア不足を構造的に補える有力な手段です。生成AIによるコーディング支援や、非エンジニア社員へのAIツール研修、業務プロセスの自動化を段階的に進めることで、少ない人数でも高い成果を出せる組織体制を構築できます。
「エンジニア不足にどう対応すべきか」「AIを活用して生産性を上げたい」という方は、ネクストスケールにお気軽にご相談ください。業務の現状分析からAIツールの選定、社員向けの研修設計、補助金の活用支援まで、一気通貫でサポートしています。
エンジニア不足の問題は、一朝一夕に解決するものではありません。しかし、今日から着手できる対策は確実に存在します。採用条件の見直し、社員のリスキリング、生成AIの業務への導入、外部リソースの活用、そして働きやすい環境の整備。これらを自社の状況に合わせて組み合わせ、段階的に実行していくことが、人材不足の壁を乗り越える道筋です。
特に中小企業にとっては、大企業と同じ土俵で採用競争を戦うのではなく、「少ない人数でも回る仕組み」を先に構築するほうが合理的な経営判断です。生成AIの活用による業務の効率化は、その仕組みづくりの中心に位置する取り組みです。まずは小さな業務改善から始めて、成功体験を社内に広げていくことが、持続的な変革の出発点になります。
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株式会社ネクストスケール 代表取締役




