製造業DXとは?進まない4つの課題と進め方・活用領域を解説【2026年最新】

製造業のDXは、着手する企業が増える段階を過ぎ、成果の差がはっきりと表れる局面に入りました。設備にセンサーを付けた、生産管理システムを入れた、というところまでは進んでいても、そこから収益や生産性の改善につながっていないという声は少なくありません。

その実態は数字にも表れています。経済産業省などがまとめた2026年版ものづくり白書によると、製造プロセスで何らかのデータを取得している事業者は66.0%にのぼる一方、そのデータを活用して効果を得られた事業者は43.9%にとどまりました。取得と成果の間には20ポイント以上の開きがあります。

本記事では、公的な最新データをもとに日本の製造業の現在地を確認したうえで、DXが効く領域、進まない4つの課題、着手から定着までの進め方、活用できる国の制度までを整理します。自社がどの段階でつまずいているのかを照らし合わせながら読み進めてください。

確認したいポイント結論詳細
製造業DXとは何を指す?現場と経営をデータでつなぐ変革設備の自動化にとどまらず、設計から生産、保守までのデータを活用し、収益構造まで変えることを指します。
日本の製造業はどこまで進んだ?データは取れても活かせていない2026年版ものづくり白書では、製造データの取得は66.0%、効果が出たのは43.9%にとどまっています。
最大の課題は何か?指導できる人材の不足人材育成の問題として指導する人材の不足を挙げた事業所が62.8%で最多。若年就業者の減少も続いています。
何から着手すればいい?1工程に絞ったデータ取得から全社で業務プロセスを見直している企業ほど成果が出ています。まず1工程で効果を数字にすることが起点です。

この記事でわかること

・製造業DXの定義と、自動化やスマートファクトリーとの関係

・最新の公的データで見る、日本の製造業の現在地と課題

・設計から保守まで、DXが成果につながりやすい6つの領域

・取り組みが進まない4つの原因と、それぞれの越え方

・着手から定着までの5ステップと、活用できる国の制度

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目次

製造業DXとは現場と経営をデータでつなぐ変革

議論を始める前に、言葉の範囲をそろえておく必要があります。製造業のDXは、工場の自動化と同義で語られることが多く、この誤解が投資判断を狂わせる原因になっています。ここでは定義と、近い概念との線引きを整理します。

経済産業省が示す定義と製造業での意味

経済産業省はDXを、データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、あわせて業務そのものや組織、プロセス、企業文化まで変えることで競争上の優位性を確立する取組と定義しています。

製造業に当てはめると、設計、調達、生産、品質、保守、販売という一連の流れで生まれるデータをつなぎ、判断の速さと精度を上げることが中心になります。現場の作業を機械に置き換えることだけを指す言葉ではありません。

2026年版ものづくり白書でも、競争力の強化には製造プロセス全体の最適化が不可欠であり、その鍵としてAIとデジタル技術の活用が挙げられています。工程単位ではなく、全体をどうつなぐかが問われる段階に来ています。

自動化・IT化との線引き

混同されやすいのが自動化やIT化との関係です。ロボットを導入して人手を減らす、生産管理システムを入れて紙の帳票をなくすといった取り組みは、DXの土台にはなりますが、それ自体がDXではありません。

分かれ目は、そこで生まれたデータが次の判断に使われているかどうかです。設備の稼働データを取得していても、月次の報告書に載るだけで生産計画に反映されていなければ、投資に見合う効果は生まれません。

白書が示す取得66.0%、活用51.4%、効果創出43.9%という数字は、まさにこの段階差を表しています。多くの企業が土台までは作れており、その先で止まっているという構図です。

スマートファクトリーとの関係

スマートファクトリーは、工場内の設備や人、材料の状態をデータで把握し、自律的に最適化する工場のあり方を指す言葉です。製造業DXの一部を構成する概念にあたります。

両者の違いは対象範囲です。スマートファクトリーが工場の中を扱うのに対し、製造業DXは調達先や販売先とのつながり、さらには事業モデルの見直しまでを含みます。工場が最適化されても、需要予測や販売の仕組みが変わらなければ利益は伸びません。

実務では、まず工場内の可視化から着手し、そこで得たデータを経営判断や取引先との連携へ広げていく順序が現実的です。ただし最初から広げる先を想定しておかないと、後から接続できない仕組みができあがります。

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日本の製造業DXはどこまで進んでいるか

自社の位置を判断するには、業界全体の状況を知っておく必要があります。ここでは2026年版ものづくり白書と情報処理推進機構の調査をもとに、データ活用、企業間連携、生産性、企業規模差の4点を確認します。

データは取れているが活かせていない

最も象徴的な数字が、製造プロセスにおけるデータの取り扱いです。2026年版ものづくり白書によると、一連の製造プロセスで何らかの目的でデータを取得している事業者は66.0%にのぼります。

ところが、そのデータを活用していると答えた事業者は51.4%、活用して効果が得られたと答えた事業者は43.9%まで下がります。取得から効果までの間で、およそ22ポイントが失われている計算です。

センサーやシステムへの投資は進んだものの、そこから何を読み取り、どの判断に使うかの設計が追いついていない状態といえます。設備を増やすより、既に取れているデータの使い道を決めるほうが先という企業は多いはずです。

企業間のデータ連携は2年前から停滞

工場の外に目を向けると、状況はさらに厳しくなります。白書では、サプライチェーン内の企業とのデータ連携、業界を横断したデータ連携のいずれについても、2年前からほぼ変化がないと報告されています。

社内の可視化は進んでも、取引先との間ではいまも電話やメール、紙のやり取りが残っているという状況です。需要変動への対応や在庫の最適化は、この連携が前提になるため、ここが止まっていると効果は工場内に閉じたままになります。

経済産業省は、製造現場の加工データや稼働データを集めたデータベースを整備し、AIモデルを実装した基盤の開発を支援する構想を進めています。個社での取り組みに加えて、業界全体の仕組みづくりが必要と認識されている領域です。

労働生産性は主要国に見劣りする

結果として表れているのが生産性の差です。白書によると、日本の製造業の1人当たり名目労働生産性は、中国の約2.3倍である一方、米国の約3分の1、ドイツの約半分にとどまります。

背景として指摘されているのが、長年の投資不足による資本装備率の低さです。日本の資本装備率は主要国と比較して低い水準にあり、とくに収益性の低い企業ほど、AIやデジタル技術といった無形資産への投資が低い傾向が確認されています。

白書は、収益力の高い企業ほど省力化や省人化の投資に積極的で、設備投資に積極的な企業ほど労働生産性が高く、賃上げ率も高いという関係を示しています。投資と生産性と賃金が連動する構造です。

企業規模による二極化が続いている

取り組み状況そのものにも大きな差があります。情報処理推進機構の調査では、何らかの形でDXに取り組んでいる企業は全体で75.7%ですが、従業員1,001人以上では98.7%に達する一方、100人以下では41.6%にとどまります。

取り組んでいない理由を見ると、100人以下の企業では自社が取り組むメリットがわからないという回答が54.0%で最多でした。情報や人材の不足よりも、そもそも必要性を実感できていない層が厚いことがわかります。

同じ調査では、成果が出ていると回答した企業は60.8%、投資や費用を上回る効果が出ていると回答した企業は14.6%でした。着手すれば成果が出るわけではないという点も、あわせて押さえておく必要があります。

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製造業DXが避けられない3つの背景

なぜいま取り組む必要があるのか。社内で必要性を説明する際に使える根拠を、人材、設備、コストの3つの側面から整理します。いずれも数年で解消する見込みが薄い構造的な要因です。

若年就業者の減少と技能継承の限界

最も深刻なのが人材の問題です。製造業の就業者数は2024年の1,046万人から2025年は1,033万人へとわずかに減少しました。より深刻なのは年齢構成の変化です。

34歳以下の就業者数は2002年の384万人から2025年には258万人まで減り、3分の1近く失われています。一方で65歳以上は58万人から85万人へと増加しました。現場を支える層が高齢化しているという構図です。

中小企業における製造業の従業員数過不足を示す指標も、2025年はマイナス17.9と不足側にあります。採用で解決できる規模を超えており、技能をデータとして残す取り組みが避けられなくなっています。

老朽化した設備とシステム

2つ目が設備側の事情です。長年使い続けてきた生産設備や基幹システムは、保守費用が高止まりし、データを外部に出せない構造になっていることが少なくありません。

部門ごとに個別最適化されたシステムは、全社でのデータ活用を妨げます。生産、品質、在庫、原価がそれぞれ別のシステムに入っている状態では、どの製品で利益が出ているかを把握するだけでも手作業が発生します。

この状態を放置したままAIに投資しても、学習させるデータを集める段階でつまずきます。老朽化への対応は守りの投資に見えますが、攻めの施策を成立させる前提条件でもあります。

原材料高と価格転嫁の限界

3つ目がコスト面の圧力です。白書によると、事業に影響を及ぼす社会情勢の変化として、原材料価格の高騰、エネルギー価格の高騰、人材や労働力の不足を挙げる事業者が多くなっています。

直近3年間に実施した企業行動としては、約8割の事業者が価格転嫁と賃上げを挙げました。しかし、転嫁と賃上げだけで対応し続けることには限界があり、原価構造そのものを見直す必要が生じています。

どの工程にどれだけコストがかかっているかを把握できていなければ、削減の余地も判断できません。原価をデータで見える状態にすることは、価格交渉の材料としても機能します。

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製造業DXが成果につながる6つの領域

どこに手をつけるかを決めるには、適用できる領域を知っておく必要があります。ここでは効果が出やすい6つの領域を挙げ、それぞれで何が変わるのかを整理します。自社の課題に近いものから検討してください。

生産計画と工程管理

最初に効果が見えやすいのが、計画と進捗の可視化です。受注情報、設備の稼働状況、人員の配置をデータでつなぐと、いま何がボトルネックになっているかが把握できます。

熟練の担当者が経験で組んでいた生産計画を、需要予測や制約条件をもとに自動で立案する仕組みも実用段階に入っています。属人化の解消と、計画変更への対応速度の両方に効く領域です。

着手のハードルも比較的低く、既存の生産管理システムに入っているデータを整理するところから始められます。新たな設備投資を伴わずに検証できる点も利点です。

品質検査と不良の削減

外観検査へのAI活用は、製造業で最も導入が進んでいる領域の1つです。カメラで撮影した画像を学習させ、傷や欠けを自動で判定します。

効果は検査工数の削減だけではありません。判定基準がデータとして固定されるため、担当者による見落としのばらつきがなくなります。検査結果を工程データと突き合わせれば、不良が発生する条件の特定にもつながります。

ただし、不良品の画像が十分に集まっていないと精度が上がりません。導入を検討する段階で、過去の不良品データがどれだけ残っているかを確認しておく必要があります。

設備の予知保全

設備に取り付けたセンサーから振動、温度、電流などのデータを取得し、故障の兆候を検知する取り組みです。突発的な停止を防ぐことで、生産計画への影響を抑えられます。

従来の定期保全では、まだ使える部品を交換することも、故障の直前まで気づかないこともありました。状態に応じた保全に切り替えることで、部品費と停止時間の両方を削減できます。

古い設備でも、後付けのセンサーでデータを取得できる場合があります。設備の入れ替えを待たずに始められるかどうかは、導入の可否を左右するポイントです。

在庫と調達の最適化

在庫は資金と保管スペースを圧迫する一方、不足すれば生産が止まります。需要予測の精度を上げ、適正な水準を維持することは、直接的に収益へ効く領域です。

過去の出荷実績、季節変動、取引先の計画情報を組み合わせることで、担当者の勘に頼っていた発注判断を数値で支えられます。部材の調達リードタイムが長い業種ほど、効果は大きくなります。

白書が指摘するとおり、企業間のデータ連携は停滞しています。取引先との情報共有が進めば効果はさらに高まるため、社内の整備と並行して連携の可能性を探る価値があります。

設計・開発の高速化

設計段階でのシミュレーションや、材料開発へのデータ活用も広がっています。試作を繰り返す代わりに計算上で検証することで、開発期間と試作費用を圧縮できます。

過去の設計データや不具合の履歴を検索できる状態にしておくと、同じ失敗の繰り返しを避けられます。設計者が個人のフォルダに図面を持っている状態では、この蓄積が組織の資産になりません。

設計変更が製造原価や調達にどう影響するかを早い段階で把握できることも利点です。後工程からの手戻りが減れば、開発全体の期間短縮につながります。

間接業務と技能のデジタル化

見落とされやすいのが、現場を支える間接業務です。日報の集計、報告書の作成、問い合わせ対応といった業務は、生成AIの活用で負担を大きく減らせる領域にあたります。

技能継承の観点では、熟練者の判断基準を言語化して残す取り組みが効きます。作業手順書の整備、動画による記録、判断の理由を含めた文書化は、設備投資を伴わずに着手できます。

白書によると、技能継承の取組として最も多いのは、再雇用や勤務延長により高年齢の従業員に継続勤務してもらうという方法で54.8%でした。継続勤務は時間を稼ぐ手段であり、その間に何を残すかが問われます。

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製造業DXが進まない4つの課題

適用領域がわかっていても、実行段階で止まる企業は少なくありません。ここでは調査データから浮かび上がる代表的な課題を4つ取り上げ、それぞれの対処の方向性を示します。

指導できる人材がいない

白書によると、製造業における人材育成の問題点として、指導する人材が不足していると回答した事業所は62.8%で最多でした。次いで、人材を育成しても辞めてしまうが54.4%、人材育成を行う時間がないが45.4%と続きます。

技術を持つ人がいないのではなく、教える余力がないという構図です。情報処理推進機構の調査でも、DXを推進する人材の量が不足していると答えた企業は85.5%、質については88.8%にのぼります。

対処としては、必要なスキルを定義するところから始めるのが有効です。同調査では、必要なスキルを把握している企業のほうが不足感は明確に低く、質について大幅に不足と答えた割合は把握できている企業で40.6%、できていない企業で64.0%と差がありました。

レガシー設備がデータを出さない

2つ目が技術面の制約です。10年、20年と使い続けてきた設備には、外部にデータを送る機能がないものが多く、そのままでは可視化の対象になりません。

すべてを最新設備に入れ替えるという判断は現実的ではないため、後付けのセンサーや、電力量から稼働状況を推定する方法など、既存設備を活かす手段を検討することになります。

一方で、部分的な対応を重ねると、後からつなげられない仕組みが増えます。最初にデータの持ち方と接続の方式を決めておくことが、長期的な費用を抑えることにつながります。

効果を測る指標がない

3つ目が評価の問題です。情報処理推進機構の調査では、DXの成果指標を設定している企業は23.9%にとどまり、4社に1社にも届いていません。

設定していない理由の最多は、評価指標の設定方法がわからないというもので36.0%にのぼりました。指標がなければ、続けるべきか見直すべきかを判断できず、次の投資も社内で通りません。

製造業の場合、測れる指標は現場に揃っています。設備の稼働率、不良率、リードタイム、在庫回転率、1人当たりの生産量などから、施策に直結するものを2つか3つ選べば十分に機能します。

部門ごとの個別最適で止まる

4つ目が組織の問題です。生産部門はライン効率を、調達部門は仕入価格を、営業部門は受注量をそれぞれ最適化した結果、全体では在庫が膨らむという状況は珍しくありません。

情報処理推進機構の調査では、業務プロセスの全社最適化に取り組んでいる、または完了している企業の割合は、成果が出ている企業で53.8%、出ていない企業で29.5%と大きな差がありました。

同じ調査では、経営者とIT部門と業務部門の協調ができていると回答した割合が、成果の出ている企業で72.9%、出ていない企業で37.1%と倍近い差になっています。技術より組織の設計が成果を分けています。

成果につなげる5つのステップ

ここからは実際の進め方です。順序を入れ替えると機能しにくい構成になっているため、自社がどこまで進んでいるかを確認しながら読んでください。

ステップ1|経営課題から入る

出発点は技術ではなく経営課題です。何を良くしたいのかが定まっていないまま製品を選ぶと、導入した後に評価軸がないという状態に陥ります。

白書でも、自社の経営課題への意識が高い経営者ほど、AIやデジタル技術を積極的に活用しているという関係が示されています。リードタイムを短縮したいのか、不良率を下げたいのか、原価を把握したいのかを最初に決めてください。

課題が複数ある場合は、優先順位をつけます。すべてを同時に進めようとすると、リソースが分散して結局どれも中途半端に終わります。

ステップ2|1工程に絞ってデータを取る

次に、対象を絞ってデータの取得を始めます。全工場にセンサーを設置するのではなく、課題に直結する1つの工程から着手するほうが、判断が速くなります。

選ぶ基準は、問題が起きている頻度が高く、数字で測りやすい工程です。すでに何らかのデータが取れている工程があれば、そこから始めれば追加投資も抑えられます。

この段階で、データの形式と保存場所を決めておきます。後で他の工程とつなぐことを前提に設計しておかないと、工程ごとにばらばらの仕組みができあがります。

ステップ3|効果を数字で確認する

取得したデータをもとに、狙った指標が動いたかを確認します。ここで結果が出なければ、原因を切り分けて対象を変える判断が必要です。

重要なのは、開始前の数値を記録しておくことです。改善後の数字だけでは、施策の効果なのか他の要因なのかを説明できません。比較できる状態を作っておくことが、社内での合意形成を速めます。

小さくても数字で語れる成果があれば、次の投資判断が通りやすくなります。投資対効果を実感できている企業が14.6%にとどまる現状では、この一歩を確実に踏むことが差になります。

ステップ4|部門をまたいでつなぐ

1工程で効果が確認できたら、範囲を広げます。ここが個別最適で止まるか、全体最適へ進めるかの分岐点になります。

生産データを調達や原価管理とつなぐ、品質データを設計にフィードバックするといった横のつながりを作ることで、工程単体では得られない効果が生まれます。このとき、部門をまたいで議論できる場が必要になります。

経営層、情報システム部門、製造現場の三者が同じ数字を見て話せる状態を作ってください。それぞれが別の指標で議論している限り、全体最適の判断はできません。

ステップ5|人材と運用を定着させる

最後が定着です。仕組みを作った担当者が異動すると運用が止まるという事態は、多くの現場で起きています。

手順の文書化、判断基準の明文化、担当者の複数化を進めておくことで、属人化を防げます。あわせて、データを読み取って改善提案ができる人材を現場に育てていく必要があります。

白書によると、製造業では事業所規模が小さいほど教育訓練の実施率が低い傾向にあります。時間が取れないという事情はありますが、育成に手をつけなければ次の施策も回りません。

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活用できる国の制度と支援

投資の負担を抑える手段として、国の制度があります。制度は毎年更新されるため、検討の際は最新の公募内容を確認してください。ここでは代表的な3つを紹介します。

設備投資を後押しする税制

2026年版ものづくり白書では、企業の競争力強化につながる成長投資を後押しする仕組みとして、大胆な投資促進税制が紹介されています。全業種を対象とした制度です。

対象となるのは機械装置、器具備品、工具、建物、ソフトウェアなどで、投資下限額は35億円以上、中小企業者等については5億円以上とされています。投資利益率の水準は15%以上が要件です。

措置の内容は即時償却または税額控除7%で、建物や構築物については税額控除4%となります。控除の上限は法人税額の20%です。大規模な設備更新を計画している場合は、適用の可否を早い段階で確認しておくとよいでしょう。

中小企業向けの補助金

小規模な投資であれば、補助金のほうが使いやすい場合があります。中小企業や小規模事業者がAIを含むITツールを導入する際に活用できる制度が用意されています。

従来のIT導入補助金は令和7年度補正予算事業から名称が変わり、AIの活用を明確に対象へ含める形になりました。補助額は導入するツールのプロセス数に応じて設定され、補助率は原則2分の1以内です。

詳しい要件は中小企業庁の公募情報で公開されています。申請には登録された支援事業者と組む必要があるため、相談先を選ぶ段階で確認しておくと手続きが進めやすくなります。

製造データの基盤づくりを支える構想

個社の取り組みを超えた動きも進んでいます。経済産業省は、製造現場の加工データや稼働データからなるデータベースを整備し、AIモデルを実装した基盤の開発を支援する構想を検討しています。

背景にあるのは、日本の製造現場が持つ高品質なデータを強みとして活かすという考え方です。個社では十分な量が集まらないデータも、業界として蓄積すればAIの精度を高められます。

また、2026年3月にはAIとロボティクスに関する政府の戦略が取りまとめられ、産業用ロボットの分野で一定の世界シェアを確保する方針が示されました。現場データと実装のノウハウを起点とする戦略であり、製造業の取り組みが政策の中心に位置づけられています。

中小の製造業が最初に取り組むべきこと

ここまでの内容は規模を問わず当てはまりますが、リソースの限られる中小企業では優先順位の付け方が変わります。取組率41.6%という数字の背景を踏まえ、現実的な進め方を整理します。

大手の事例をそのまま真似しない

公開されている事例の多くは大手メーカーのものです。専任部署があり、数億円規模の投資ができる前提で組まれた取り組みは、体制の異なる企業にそのまま当てはまりません。

参考にすべきは導入した製品ではなく、どの課題を解決しようとしたかという着眼点です。同じ課題を自社の規模でどう解くかを考えるほうが、実行できる案にたどり着きます。

自社に近い規模や業種の事例が見つかれば、そちらを優先してください。設備構成や人員体制が近いほど、実際にかかる手間の見積もりが正確になります。

紙とExcelの棚卸しから始める

いきなりセンサーやシステムを検討する前に、いま社内でどんな情報が紙やExcelで管理されているかを洗い出すことをおすすめします。

同じ数字を複数の部署が別々に転記している、月次でしか集計されていない、担当者しか場所を知らない資料がある、といった状態が見つかるはずです。この整理だけで改善できる業務は少なくありません。

棚卸しの結果は、システムを検討する際の要件にもなります。何をつなぎたいかが明確になっていれば、過剰な機能を持つ製品を選んで費用を無駄にすることも避けられます。

外部の力を組み合わせる

社内にデジタル人材がいない場合、育成を待っていては着手が遅れます。現実的には、外部の支援と社内の現場知識を組み合わせる形が取り組みやすい選択肢です。

その際も、何を解決したいかを決め、判断を行う担当者は社内に置いてください。現場の工程を理解しているのは自社の人間であり、そこを外部に委ねると実態に合わない仕組みができあがります。

ネクストスケールでは、AIやデジタル技術の業務活用に関する情報をコラムでも継続して発信しています。検討を進める際の材料としてあわせてご覧ください。

まとめ

製造業DXは、設備を自動化することではなく、設計から保守までのデータをつないで判断の速さと精度を上げる取組です。2026年版ものづくり白書では、製造データを取得している事業者が66.0%にのぼる一方、効果を得られたのは43.9%にとどまりました。

背景には、34歳以下の就業者が2002年の384万人から258万人へ減少したという人材面の制約、老朽化した設備とシステム、原材料高への対応という3つの構造的な要因があります。いずれも短期間で解消する見込みは薄い課題です。

進まない原因としては、指導できる人材の不足、データを出さない設備、成果指標の欠如、部門ごとの個別最適の4つが挙げられます。とくに成果指標を設定している企業は23.9%にとどまり、投資の判断ができない状態が続いています。

まずは経営課題を1つに絞り、直結する工程のデータを取るところから始めてください。開始前の数値を記録し、小さくても数字で語れる成果を作ることが、次の投資と全体最適への足がかりになります。

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この記事の監修者

石丸真平

石丸真平

NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援

NEXTSCALEのコンサルタントとして、生成AI活用、業務効率化、DX推進に関する支援を担当する想定のプロフィールエリアです。業務整理からツール選定、導入設計、社内定着までを一気通貫で支援する人物紹介として使用します。

ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。
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