DX人材育成の始め方 6類型での棚卸しと国際比較で見る日本の課題【2026年】
2026年8月20日
著者:NEXT SCALE編集部
監修者:石丸真平

DX人材が足りないという認識は共有されていても、何人足りないのかを答えられる企業は多くありません。情報処理推進機構の調査では、必要なスキルと現有人材の過不足を把握していると回答した日本企業は14.9%にとどまりました。
米国やドイツでは約半数の企業が把握できています。この差が、育成施策の実効性に直結しています。何が足りないか分からない状態で研修を始めても、必要な人材が育つ保証はありません。
本記事では、公的に整備された類型を使って自社の人材を棚卸しする方法を扱います。2026年4月には新しい類型が追加されており、その内容も含めて整理しました。研修の紹介ではなく、計画を組み立てるための材料としてお読みください。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| 何から始めるべき? | 人材の棚卸しから | 過不足を把握している日本企業は14.9%。まず何が足りないかを特定します。 |
| どう分類する? | 公的な6類型を使う | 2026年4月にデータマネジメントが追加され、6つの類型で整理できます。 |
| 日本の課題は? | 育成支援そのものが不足 | 特に支援していないと回答した企業が36.6%。米国は1.0%、ドイツは1.9%です。 |
| 育成か採用か? | 類型ごとに判断が変わる | すべてを内製する必要はなく、外部委託で埋める選択も含めて検討します。 |
この記事でわかること
・DX人材育成が進まない構造的な理由と、国際比較で見た日本の位置
・公的な6類型を使った人材の棚卸し方法
・2026年4月に追加された新しい類型の内容
・類型ごとに異なる育成の方法と難易度
・育成・採用・外部活用の切り分け方
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日本のDX人材育成が抱える3つの課題
まず現状を国際比較で押さえます。他国との差が明確に出ている領域があり、そこに改善の余地が集中しています。
課題1|過不足を把握できていない
最も根本的な問題がこれです。情報処理推進機構の調査によると、DX推進に必要なスキルと現有人材の過不足を把握していると回答した日本企業は14.9%にとどまりました。
米国やドイツでは約半数の企業が把握できています。7社に1社しか把握できていない状態では、育成計画を立てる土台がありません。
この状態が、実態以上の不足感を生んでいる可能性もあります。何人足りないかが分からなければ、いつまでも足りないという認識が続きます。
課題2|育成支援そのものが不足している
2つ目が、育成に対する支援体制です。ここでの差は、把握の問題以上に大きく出ています。
DXを推進する人材の育成施策について、日本企業の36.6%が特に支援はしていないと回答しました。米国は1.0%、ドイツは1.9%です。一桁どころか、二桁違う水準にあります。
3社に1社以上が何もしていない状態です。人材不足を課題として挙げながら、その解決のための投資が行われていないという矛盾がここに表れています。
課題3|量より質の不足感が強い
3つ目が、不足の性質です。人数を増やせば解決する問題ではありません。
同じ調査では、DXを推進する人材の量が不足していると回答した企業が85.5%、質については88.8%にのぼりました。質の不足感が量を上回っています。
採用で補おうとしても、市場全体で人材が不足しているため確保は困難です。しかも必要なのは自社の業務を理解した人材であり、外部から採用しても即戦力にはなりにくい性質があります。
課題は把握から始まっている
3つの課題は独立していません。過不足を把握できていないから、何を育てるべきか決まらず、結果として支援も行われないという連鎖になっています。
逆に言えば、最初の一手は明確です。棚卸しから始めることで、この連鎖を断てます。研修の検討はその後で構いません。
次章では、その棚卸しに使える公的な枠組みを紹介します。自社で一から定義する必要はありません。
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公的な類型で人材を棚卸しする
何が足りないかを判断するには、共通の物差しが必要です。経済産業省と情報処理推進機構が整備した指標が使えます。
デジタルスキル標準という枠組み
この指標は、個人の学習と企業の人材確保・育成の指針として策定されたものです。2つの標準で構成されています。
1つが全ビジネスパーソン向け、もう1つがDXを推進する専門人材向けです。後者では、推進に必要な人材が類型として分類されており、これが棚卸しの物差しになります。
この指標の利点は、業種や職種を問わず使える共通の言葉が用意されていることです。社内での議論も、外部への説明も、この分類を使えば認識がそろいます。
2026年4月に類型が追加された
この指標は継続的に更新されています。2026年4月にはバージョン2.0が公表され、重要な変更が加わりました。
従来の5類型に、データマネジメントが新設されて6類型になりました。あわせて、AIの実装・運用とAIガバナンスに関するスキルも追加されています。
この変更が示すのは、データを整える役割が独立した専門性として認識されたということです。分析する人材とは別に、その手前でデータを扱える人材が必要だという整理になります。
6つの類型
現在の分類を整理すると、ビジネスアーキテクト、デザイナー、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ、データサイエンティスト、そしてデータマネジメントの6つになります。
それぞれがさらに細かい役割に分かれており、自社に不足している人材を客観的に把握するための枠組みとして機能します。すべてを揃える必要はありません。
重要なのは、自社の事業でどの類型が必要かを判断することです。製造業と金融業、あるいはBtoBとBtoCでは、重点を置くべき領域が変わります。
見落とされやすい類型
実務でボトルネックになりやすいのが、新設されたデータマネジメントの領域です。ここを見落とす企業が多くなっています。
多くの企業は分析人材を採用しようとしますが、実際に詰まるのは、その手前のデータを整える工程であることが少なくありません。データが散在し、形式も統一されていない状態では、分析以前の作業に時間を取られます。
分析ができる人を採用したのに成果が出ないという状況は、この構造から生じます。棚卸しの際は、データを扱う役割が誰にも割り当てられていないかを確認してください。
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関連記事:AIの活用例|業務別・業種別の使いどころと効果が出る条件【2026年最新】
6類型それぞれが担う役割
棚卸しに使う類型を、もう少し具体的に見ておきます。自社のどこに当てはまるかを考えながらお読みください。
ビジネスアーキテクト
業務や事業の課題を整理し、変革の方向性を設計する役割です。技術そのものより、何を解決するかを決める立場になります。
この類型が空白だと、技術者を揃えても何を作るべきかが定まりません。多くの企業で最初に必要になる役割であり、育成の優先度も高くなります。
既存の業務に精通した社員から育てるのが現実的です。外部から採用しても、自社の業務を理解するまでに時間がかかります。
デザイナー
見た目を整える役割と誤解されがちですが、扱う範囲はより広くなります。利用者の体験を設計し、使われる仕組みを作る立場です。
現場で使われないシステムが生まれる原因の多くが、この視点の欠如にあります。機能は揃っているのに使いにくいという状態は、ここが担保されていないと起こります。
顧客向けのサービスを開発する企業では重要度が上がります。社内の業務改善が中心なら、優先度は相対的に下がります。
ソフトウェアエンジニアとデータサイエンティスト
技術的な実装と分析を担う2つの類型です。いずれも専門性が高く、座学だけでは育ちません。
実際のデータや課題に触れる機会を意図的に設計する必要があります。社内での検証プロジェクト、外部の学習環境、実案件への参画といった実践の場が不可欠です。
育成に時間がかかるため、採用や外部活用と並行して検討してください。この2つを内製で揃えようとすると、着手が大幅に遅れます。
サイバーセキュリティとデータマネジメント
残る2つは、土台を支える役割です。目立ちませんが、欠けると全体が機能しません。
セキュリティは6類型で最も専門性が高く、資格取得と実践的な演習を組み合わせるのが標準的な方法になります。外部の専門家と契約する選択肢も現実的です。
データマネジメントは2026年4月に新設された類型です。データを整え、品質を保ち、活用できる状態にする役割で、分析の前段階を担います。ここが空白のまま分析人材を採用しても、成果は出ません。
中小規模での現実的な進め方
6類型すべてに人を配置できるのは、相応の規模がある企業に限られます。中小規模では、別の考え方が必要です。
現実的なのは、業務の課題を切り出す役割を1人育て、技術面は外部と組む形です。この1人がいれば、外部への発注も適切に行えます。
逆に、この役割が空白のまま外部に委託すると、実態に合わない提案を受け入れることになります。判断できる人を社内に置くことが、規模を問わない最低条件です。
意思決定が速いという利点も活かせます。大企業のように部門間調整に時間を取られないぶん、着手から効果測定までの周期を短くできます。
関連記事:AI人材育成の進め方|公的指標を使った設計と3階層別のカリキュラム【2026年】
棚卸しの具体的な手順
枠組みが分かったら、実際に自社へ当てはめます。4つの段階で進めてください。
手順1|必要な類型を絞り込む
6類型すべてを検討する必要はありません。自社の事業とDXの方向性から、必要なものを選んでください。
判断の基準は、今後3年で何を実現したいかです。業務の効率化が中心なら必要な類型は限られ、新規のサービス開発を目指すなら範囲が広がります。
この段階で経営層と認識をそろえておくことが重要です。現場だけで判断すると、投資の承認が得られない計画になります。
手順2|現有人材を割り当てる
次に、現在の社員を類型に当てはめます。完全に一致しなくても構いません。近い役割を担っている人を割り当ててください。
この作業で、誰も担っていない類型が浮かび上がります。それが自社の空白であり、育成または確保の対象になります。
兼務の状況も記録しておいてください。1人が複数の類型を担っている場合、その人が抜けたときの影響が大きくなります。
手順3|必要な人数を見積もる
類型ごとに、何人必要かを見積もります。ここで初めて、不足の規模が数字になります。
すべての類型で複数人が必要なわけではありません。社内に1人いれば足りる役割と、部署ごとに必要な役割を区別してください。
見積もりは大まかで構いません。正確な人数より、どの類型が最も不足しているかの順位が分かれば、優先順位を決められます。
手順4|埋め方を判断する
最後に、不足をどう埋めるかを決めます。育成、採用、外部委託の3つから選ぶことになります。
この判断が最も重要です。すべてを内製で賄う必要はありません。類型によって適した方法が異なるため、次章で詳しく整理します。
ここまでの棚卸しが済んで初めて、研修の検討に入れます。順序を逆にすると、必要のない研修に投資することになります。
計画段階でよくある失敗
他社が陥ったパターンを知っておくと回避できます。代表的な3つを挙げます。
1つ目が、棚卸しをせずに研修から始めることです。何が足りないか分からないまま実施すると、すでにできることを教える内容になりかねません。
2つ目が、技術系の類型から着手することです。実装できる人を育てても、何を作るべきかを決める役割が空白では成果につながりません。業務の課題を切り出す役割から始めるのが定石です。
3つ目が、育成の担当を決めていないことです。誰も推進しないまま計画だけが存在し、半年後には形骸化しているという状態になります。兼務でも構わないので、責任を持つ人を置いてください。
類型別に見た育成の方法
同じ育成でも、類型によって適した方法と必要な期間が変わります。ここを踏まえずに一律の研修を実施しても効果は出ません。
業務理解が中心の類型
業務の課題を切り出し、変革を設計する役割については、社内で育てるのが最も現実的です。自社の業務を深く知っていることが前提になるためです。
外部から採用しても、自社の業務を理解するまでに時間がかかります。この類型は、業務に精通した既存社員にデジタルの知識を加える形が近道です。
育成の方法としては、実際のプロジェクトに参加させながら学ばせる形が効きます。座学で学べるのは前提知識までで、判断力は実践でしか身につきません。
技術的な深さが必要な類型
開発やデータ分析を担う役割は、座学だけでは育ちません。実際のデータや課題に触れる機会を意図的に設計する必要があります。
社内のデータを使った検証、外部の競技会への参加、実際の開発案件への参画といった実践の場が不可欠です。知識の習得と実践の往復で身につきます。
この類型は育成に時間がかかるため、外部からの採用や委託も並行して検討してください。育成を待っていては、事業の機会を逃す場合があります。
専門性が高く育成が難しい類型
セキュリティを担う役割は、6つの中で最も専門性が高く、育成にも時間を要します。
標準的な方法は、公的な資格の取得を軸に、実践的な演習を組み合わせる形です。独学で身につけるのは難しく、体系的な学習が必要になります。
この類型については、外部の専門家と契約する選択肢も現実的です。すべてを内製化する必要はなく、判断できる人を社内に置く形でも機能します。
学習時間を業務として認める
どの類型にも共通する要点があります。学習の時間を業務時間として扱うかどうかで、継続率が大きく変わります。
学習が自己負担になると、継続率は大幅に低下します。業務が忙しい時期には、真っ先に後回しにされるためです。
制度として学習時間を確保している企業では、自発的な受講が広がる傾向があります。教材を用意するだけでなく、使える時間を制度で担保することが定着の条件になります。
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育成・採用・外部活用の切り分け
不足をどう埋めるかは、類型と自社の状況によって変わります。判断の基準を整理します。
育成が向く場合
自社の業務理解が前提となる役割は、育成が最も適しています。外部から採用しても、その理解を得るまでに時間がかかるためです。
業務の課題を切り出す役割、部署間をつなぐ役割、現場でDXを推進する役割がこれに該当します。社内の人間関係を知っていることも、実務では大きな強みになります。
育成には時間がかかりますが、辞めにくいという利点もあります。既存社員のキャリアの選択肢を広げることは、定着率にも寄与します。
採用が向く場合
技術的な専門性が高く、社内に教えられる人がいない領域では採用を検討します。ただし、市場全体で人材が不足している点は前提になります。
採用する場合も、既存社員が学べる環境を作ることを条件にしてください。1人を採用しても、その人が抜ければ元に戻ります。
採用した人材が孤立しないよう、受け入れる体制も必要です。社内に理解者がいない状態では、能力を発揮できず離職につながります。
外部活用が向く場合
必要なスキルが段階によって変わる領域では、外部の力を借りるほうが効率的です。自社で抱えると、必要のなくなったスキルも維持することになります。
DXを進める過程では、求められる専門性が変化します。外部の人材であれば、段階に応じて必要な人を入れ替えられます。
ただし、判断を行う担当は社内に置いてください。すべてを委ねると、知見が社内に残らず、改善のたびに外部への発注が必要になります。
組み合わせて設計する
実際には、3つを組み合わせる形が現実的です。類型ごとに方法を変えてください。
業務理解が必要な類型は育成、技術的な深さが必要な類型は採用と外部活用の併用、専門性の高い類型は外部中心という切り分けが目安になります。
この設計ができていれば、限られた予算を効果的に配分できます。すべてを育成で賄おうとすると、時間もコストも膨らみます。
定着させるための設計
計画を立てても、実行されなければ意味がありません。最後に、続けるための設計を整理します。
実務との接続を先に決める
研修を受けただけでは定着しません。学んだ内容を使う場面を、育成計画に組み込んでください。
受講後に取り組む業務を事前に決めておくと、研修中の理解も深まります。自分の業務に当てはめながら聞けるためです。
研修から実務までの間に時間が空くと、学んだ内容が失われます。この空白をなくすことが、投資を無駄にしない最低条件になります。
効果を測る指標を決める
何が変わったら成功とするかを、開始前に決めてください。決めていなければ、継続の判断も次の投資も通りません。
測りやすいのは、担える役割が増えた人数、実際にプロジェクトに参加した人数、そして対象業務にかかる時間の変化です。受講者数だけでは成果を説明できません。
同じ調査では、成果指標を設定している企業は23.9%にとどまりました。設定していない理由の最多は、評価指標の設定方法がわからないというもので36.0%です。測れるものから始めてください。
評価制度と接続する
見落とされやすいのが、育成と評価のつながりです。新しいスキルを求めながら、それが評価に反映されない状態では定着しません。
習得したスキルをどう評価に反映するかを、育成計画と同時に設計してください。キャリアの選択肢が広がることが示されれば、学ぶ動機になります。
逆に、学んでも処遇が変わらない状態が続くと、意欲のある人ほど社外へ流出します。育てた人材を失うことになりかねません。
外部の知見を組み合わせる
棚卸し、類型の切り分け、育成方法の設計を同時に進めるのは、担当者にとって負担の大きい作業です。
すでに支援経験のある相手に、設計から相談する方法もあります。検証にかける期間を短縮でき、初期段階でのつまずきを避けやすくなります。
ネクストスケールでは、DXと生成AIの業務活用に関する情報をコラムでも継続して発信しています。検討を進める際の材料としてあわせてご覧ください。
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まとめ
日本のDX人材育成が進まない最大の原因は、過不足を把握できていないことにあります。把握していると回答した企業は14.9%で、約半数が把握できている米国やドイツとの差が明確です。
育成支援の状況はさらに深刻で、特に支援していないと回答した企業が36.6%にのぼりました。米国の1.0%、ドイツの1.9%と比べると、二桁違う水準にあります。
最初に着手すべきは、公的な類型を使った棚卸しです。2026年4月にデータマネジメントが新設され6類型になりました。分析人材を採用しても成果が出ない企業は、その手前のデータを整える役割が空白になっている可能性があります。
不足の埋め方は、育成、採用、外部活用の3つを類型ごとに使い分けてください。業務理解が必要な役割は育成、技術的な深さが必要な役割は採用と外部の併用が目安です。あわせて、学習時間を業務として認める制度設計が定着の条件になります。
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この記事の監修者
石丸真平
NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援
ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。

