AI人材育成の進め方 公的指標を使った設計と3階層別のカリキュラム【2026年】

AI人材を育てなければならない。この認識は共有されていても、何を教えればよいかで止まっている組織は少なくありません。情報処理推進機構の調査では、DXを推進する人材の量が不足していると回答した企業が85.5%、質については88.8%にのぼりました。

同じ調査で明確な差が出たのが、必要なスキルを把握しているかどうかです。質が大幅に不足していると答えた割合は、把握できている企業で40.6%、できていない企業で64.0%でした。何を育てるかが定まっていない状態が、不足感を増幅させています。

本記事では、公的に整備された指標を土台に、育成の対象を3つの階層に分けて設計する方法を扱います。研修サービスの紹介ではなく、自社で計画を組み立てるための材料としてお読みください。

確認したいポイント結論詳細
なぜ育たないのか?必要なスキルが定まっていないスキルを把握できている企業とそうでない企業で、不足感に20ポイント以上の差があります。
何を基準に設計する?公的な指標を土台にする経済産業省とIPAが整備した指標があり、2026年4月に最新版が公開されています。
誰を育てればいい?3つの階層に分けて考える全社員、推進担当、専門人材で必要なスキルも育成の方法も異なります。
研修だけで足りる?実務との接続が不可欠受講しただけでは定着せず、業務で使う場面を用意することが前提になります。

この記事でわかること

・AI人材が育たない構造的な理由と、公的調査で見る実態

・育成設計の土台になる公的な指標の使い方

・全社員・推進担当・専門人材という3階層の分け方

・階層別に必要なスキルとカリキュラムの組み立て

・研修を実務につなげ、定着させるための設計

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目次

AI人材が育たない構造的な理由

まず現状を数字で押さえます。感覚ではなく調査結果で見ると、どこに原因があるかが明確になります。

不足感は量より質にある

情報処理推進機構の調査によると、DXを推進する人材の量が不足していると回答した企業は85.5%、質については88.8%にのぼりました。

注目すべきは、質の不足感が量を上回っている点です。人数を増やせば解決する問題ではなく、必要な能力を持つ人がいないという状態を示しています。

採用で補おうとしても、市場全体で人材が不足しているため確保は困難です。社内で育てる以外の選択肢が実質的にない状況といえます。

必要なスキルを定義できていない

同じ調査で、原因を示す明確な結果が出ています。必要なスキルを把握しているかどうかで、不足感に大きな差がありました。

質が大幅に不足していると回答した割合は、必要なスキルを把握できている企業で40.6%、できていない企業で64.0%でした。20ポイント以上の開きがあります。

何を育てるかが定まっていなければ、育っているかどうかも判断できません。この状態が、実態以上の不足感を生んでいる可能性があります。

教育の機会そのものが不足している

対象を製造業に絞った調査では、人材育成の問題点として指導する人材が不足していると回答した事業所が62.8%で最多でした。

次いで、人材を育成しても辞めてしまうが54.4%、人材育成を行う時間がないが45.4%と続きます。技術を持つ人がいないのではなく、教える余力がないという構図です。

この状況では、社内の誰かが片手間で教えるという方法は成立しません。仕組みとして設計するか、外部の力を組み合わせるかの判断が必要になります。

個人利用で止まっている

もう1つの構造的な問題が、学んだことが組織に還元されていない点です。

生成AIを個人で業務利用している企業が63.3%だったのに対し、部署の業務プロセスに組み込まれているのは11.9%にとどまりました。個人の習得が組織の能力になっていません。

研修を実施しても、この構造を変えなければ効果は限定的です。学ぶ場を作るだけでなく、使う場と共有する場をセットで設計する必要があります。

関連記事:人材育成でのAI活用|業務別の使い方と評価に使う際の法的な線引き【2026年】

公的な指標を育成設計の土台にする

何を育てるかを自社だけで定義するのは容易ではありません。公的に整備された指標を土台にすると、抜け漏れを防げます。

2026年4月に最新版が公開された

経済産業省と情報処理推進機構は、個人の学習と企業の人材確保・育成の指針として、デジタルスキル標準を策定しています。

2026年4月には、AIの進展とデータ活用の重要性を踏まえた改訂が行われ、バージョン2.0が公表されました。データマネジメントに関する内容が強化されています。

この指標の利点は、業種や職種を問わず使える共通の言葉が用意されていることです。自社で一から定義するより、これを土台に調整するほうが早く、また社外への説明もしやすくなります。

2つの標準で構成されている

この指標は、対象によって2つに分かれています。この分け方が、育成設計の出発点になります。

1つが、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき内容を定めた標準です。背景となる考え方、活用されるデータと技術、その利活用の方法、そして土台となる姿勢という構成になっています。

もう1つが、推進を担う専門的な人材の役割とスキルを定めた標準です。こちらは職種ごとに求められる能力が整理されています。全員に同じ内容を教える必要はないという前提が、ここに表れています。

生成AIに関する内容が追加されている

この指標は継続的に更新されており、生成AIの普及を踏まえた改訂も行われてきました。

全ビジネスパーソン向けの標準は2023年8月に、推進人材向けの標準は2024年7月に、それぞれ生成AIに関する記載が追加されています。

改訂の履歴を追うと、何が重要視されるようになったかが見えます。カリキュラムを組む際は、最新版の記載内容を確認したうえで、自社に必要な部分を選んでください。

そのまま使わず自社に合わせる

注意点として、この指標は共通的な指標であり、そのまま適用するものではありません。

個々の組織への適用にあたっては、属する産業や自社の事業の方向性に合わせることが求められると明記されています。製造業と金融業では、必要な内容が変わります。

使い方としては、指標を一覧として使い、自社に必要な項目を選び取る形が現実的です。すべてを網羅しようとすると、量が多すぎて実行できません。

自社にどの階層の育成が必要か、どう設計すべきかでお悩みの場合は、無料の個別相談をご利用ください。
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関連記事:DX人材育成の始め方|6類型での棚卸しと国際比較で見る日本の課題【2026年】

育成対象を3つの階層に分ける

全員に同じ研修を実施しても効果は出ません。役割によって必要なものが異なるためです。ここでは3つの階層で整理します。

第1階層|全社員

最も広い対象がここです。専門的な知識は不要ですが、何ができて何ができないかの理解と、使ってよい範囲の判断は全員に必要になります。

求められるのは、自分の業務のどこに使えるかを見極める力と、出力を検証する姿勢です。技術の仕組みを深く理解する必要はありません。

この階層で最も重要なのが、扱ってよい情報の判断です。何が機密情報にあたるかを個人が判断できない状態は、そのまま情報漏えいのリスクになります。

第2階層|推進担当

各部署でAI活用を進める役割を担う層です。専任である必要はなく、業務と兼務している形が一般的になります。

この階層に求められるのは、自部署の業務のどこを対象にすべきかを判断する力です。技術の詳細より、業務の理解と課題の切り出しが中心になります。

あわせて、他のメンバーへ教える役割も担います。うまくいった使い方を共有し、部署内の水準を引き上げることが期待される層です。

第3階層|専門人材

システムの構築、データの整備、外部との連携設計を担う層です。人数は限られますが、組織としての実行力を左右します。

必要なのは技術的な知識に加え、業務を理解したうえで実現方法を判断する力です。現場の課題を技術に翻訳する役割になります。

この層をすべて内製で賄う必要はありません。外部の支援と組み合わせながら、判断できる人を社内に置く形も現実的な選択肢です。

どの階層から着手するか

3つを同時に進めるのは難しいため、優先順位を決めてください。判断の基準は、自社が置かれている段階です。

まだ使われていない段階なら第1階層から、個人利用が広がっている段階なら第2階層からが有効です。第3階層は、対象業務が明確になってから着手しても遅くありません。

よくある失敗が、第3階層から始めることです。技術者を育てても、活用すべき業務が定まっていなければ成果につながりません。

関連記事:AIの活用例|業務別・業種別の使いどころと効果が出る条件【2026年最新】

階層別のカリキュラム設計

階層が決まったら、具体的な内容を組み立てます。ここでは階層ごとの要点を示します。

全社員向けの構成

半日から1日程度で完結する内容が現実的です。長時間の座学は、業務の合間に受ける形では成立しません。

盛り込むべきは、何ができるかの理解、自社の業務での使いどころ、入力してよい情報の範囲、そして出力を検証する必要性の4点です。

重要なのは、実際に手を動かす時間を確保することです。説明を聞くだけでは定着しません。自社の商材や実際の業務を題材にすると、持ち帰れる内容になります。

推進担当向けの構成

全社員向けの内容に加えて、業務の切り出しと効果の測定を扱います。数日から数週間にわたる形が一般的です。

中心となるのは、自部署の業務を洗い出し、どこを対象にすべきかを判断する演習です。知識の習得より、判断の訓練に時間を割いてください。

社内ルールの理解も必要になります。何が許可されていて何が禁止されているかを説明できる状態にしておかないと、部署内の相談に答えられません。

専門人材向けの構成

技術的な内容が中心になりますが、業務理解とセットで進めることが重要です。技術だけを学んでも、使いどころを判断できません。

扱うべきは、データの整備、外部サービスとの連携、セキュリティの設計、そして生成物の検証方法です。実際のプロジェクトを通じて学ぶ形が最も定着します。

この層については、外部の研修を活用する選択肢が現実的です。社内に教えられる人がいないケースが多く、内製にこだわると着手が遅れます。

経営層への働きかけも必要

3階層とは別に、経営層の理解も欠かせません。投資の判断を担う立場だからです。

調査では、デジタル分野の見識を持っていると答えた経営者の割合が49.9%で、前年度の40.2%から約10ポイント上昇しました。成果が出ている企業ほど、この割合が高くなっています。

技術の詳細に精通する必要はありませんが、何ができて何ができないかの判断ができる水準は必要です。役員向けの短い機会を設けるだけでも、投資判断の質が変わります。

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育成計画を立てる5つの手順

設計の考え方が分かったら、実際に計画へ落とし込みます。順序を守ると、途中で手戻りが起きにくくなります。

手順1|解決したい課題から入る

最初に決めるのは、AIを使って何を解決したいかです。目的が曖昧なまま育成を始めると、実務で役に立たないスキルを学ばせることになります。

業務時間を減らしたいのか、品質を安定させたいのか、対応できる件数を増やしたいのかで、必要な人材像は変わります。技術の話から入らないことが重要です。

課題が定まったら、それを解決できる人材像を具体化してください。どのようなスキルを持つ人が何人必要かまで落とし込むと、育成の規模が見えてきます。

手順2|現在のスキルを把握する

次に、社員の現状を確認します。ここを飛ばすと、すでにできることを教える研修になりかねません。

簡易な確認テストや自己申告でも構いません。目的は正確な測定ではなく、目標との差を把握することです。誰に何が足りないかが分かれば、対象を絞れます。

この過程で、すでに使いこなしている人が見つかることもあります。その人を教える側に回す設計にすれば、外部に頼らずに済む部分が増えます。

手順3|対象と時期を決める

全員を同時に育てることはできません。誰から着手するかと、いつまでに何ができている状態を目指すかを決めてください。

推奨するのは、意欲のある少人数から始める形です。成功事例を作ってから広げるほうが、全社展開の際の説得力が違います。

期間は3か月から6か月を1つの区切りにすると、進捗を確認しやすくなります。年単位の計画だけでは、途中で形骸化します。

手順4|学ぶ場と使う場を用意する

研修の日程だけを決めても、定着はしません。学んだ内容を使う場面を、同時に用意してください。

受講後に取り組む業務を事前に決めておくと、研修中の理解も深まります。自分の業務に当てはめながら聞けるためです。

使う場が用意されていないと、研修から実務までの間に時間が空き、学んだ内容が失われます。この空白をなくす設計が要点になります。

手順5|効果を確認して見直す

実施したら、狙った変化が起きたかを確認します。ここで結果が出なければ、内容か対象を変える判断が必要です。

確認すべきは、実際に使っている人の割合と、対象業務にかかる時間の変化です。受講者数や満足度だけでは、成果を説明できません。

この領域は変化が速いため、内容も定期的な見直しが必要になります。半年ごとに、扱う技術と業務の対象を確認する運用をおすすめします。

計画段階でよくある失敗

他社が陥ったパターンを知っておくと回避できます。代表的な3つを挙げます。

1つ目が、全社員に一斉に同じ研修を実施することです。役割によって必要な内容は異なるため、多くの参加者にとって過不足のある内容になります。

2つ目が、資格取得を目的にしてしまうことです。資格は手段であり、業務で使えるようになることが目的です。取得したが実務では使えないという状態は珍しくありません。

3つ目が、育成の担当を決めていないことです。誰も推進しないまま計画だけが存在し、半年後には誰も覚えていないという結果になります。兼務でも構わないので、責任を持つ人を置いてください。

研修を実務につなげる設計

受講しただけでは定着しません。ここが最も多くの組織がつまずく部分です。

知識習得で終わらせない

研修を導入しても、知識の習得で終わり実務で活かせないという課題に直面する企業は少なくありません。原因は、使う場面が用意されていないことにあります。

研修の終わりに、次にいつ何をするかを決めてください。その場で参加者の予定に入れるところまで行うと、実行される確率が上がります。

対象業務を事前に決めておくのも有効です。研修で学んだことを、翌週から自分の業務のどこに使うかが明確になっていれば、行動につながります。

実務の題材を使う

汎用的な例題を使った研修は、その場では理解できても現場に持ち帰れません。必ず自社の実際の業務で実施してください。

参加者が現在困っている業務を持ち寄る形にすると、研修が問題解決の場にもなります。学びと成果が同時に得られる設計です。

事前に課題を提出させておくと、進行もスムーズになります。当日その場で考えさせるより、準備された題材のほうが深く扱えます。

共有の仕組みを組み込む

個人が習得しただけでは、組織の能力になりません。学んだことを共有する場を、育成計画に組み込んでください。

月に一度でも、うまくいった使い方を持ち寄る場があると、全体の水準が揃っていきます。全員が同じ試行錯誤を繰り返す状態を避けられます。

共有された内容を蓄積する場所も決めておきましょう。その場の口頭共有で終わると、参加していない人には届きません。

効果を測る指標を決める

研修の前に、何が変わったら成功とするかを決めてください。決めていなければ、継続の判断も次の投資も通りません。

測りやすいのは、対象業務にかかっていた時間、実際に使っている人の割合、そして共有された事例の数です。受講者の満足度だけでは、成果を説明できません。

調査では、成果指標を設定している企業は23.9%にとどまりました。設定していない理由の最多は、評価指標の設定方法がわからないというもので36.0%です。完璧を目指さず、測れるものから始めてください。

内製と外部活用の使い分け

すべてを社内で賄う必要はありません。判断の基準を整理します。

内製が向く場合

自社の業務に即した内容を扱う場合、内製のほうが効果が出ます。実際の業務を題材にできるためです。

社内にすでに使いこなしている人がいるなら、その人に教えてもらう形が最も実務的です。外部講師より、自社の事情を理解しているぶん具体的な話ができます。

費用も抑えられます。継続的に実施する場合、内製化できていると回数を重ねやすくなります。

外部が向く場合

社内に教えられる人がいない場合や、専門的な内容を扱う場合は外部の活用が現実的です。育成を待っていては着手が遅れます。

とくに専門人材の育成については、外部の研修を使うほうが早く進みます。最新の技術や他社の事例に触れられる点も利点です。

選ぶ際は、知識の提供だけでなく実践の機会が含まれているかを確認してください。座学だけの内容は、実務への接続が難しくなります。

組み合わせる形が現実的

実際には、両方を組み合わせる形が多くなります。役割を分けて設計してください。

全社員向けの基礎は外部の力を借りて立ち上げ、その後の継続的な共有は社内で回すという分担が機能します。最初の設計だけ支援を受ける方法もあります。

外部に依頼する場合も、判断を行う担当は社内に置いてください。何を教えるべきかを決めるのは、業務を理解している自社の人間です。

外部の知見を組み合わせる

育成計画の設計、階層の切り分け、カリキュラムの組み立てを同時に進めるのは、担当者にとって負担の大きい作業です。

すでに支援経験のある相手に、設計から相談する方法もあります。検証にかける期間を短縮でき、初期段階でのつまずきを避けやすくなります。

ネクストスケールでは、生成AIの業務活用と社内定着に関する情報をコラムでも継続して発信しています。検討を進める際の材料としてあわせてご覧ください。

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まとめ

AI人材が育たない最大の原因は、必要なスキルが定義されていないことにあります。調査では、スキルを把握できている企業とできていない企業で、質の不足感に20ポイント以上の差が出ました。

設計の土台には、経済産業省と情報処理推進機構が整備した公的な指標が使えます。2026年4月にバージョン2.0が公表されており、全ビジネスパーソン向けと推進人材向けの2つで構成されています。

育成の対象は、全社員、推進担当、専門人材の3階層に分けてください。全員に同じ内容を教える必要はありません。着手の順序は自社の段階によって変わり、専門人材から始めるのは推奨されません。

最も多い失敗は、研修が知識習得で終わることです。実務の題材を使い、次にいつ何をするかを決め、共有の場を組み込んでください。個人の習得を組織の能力に変える設計があって、初めて成果につながります。

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この記事の監修者

石丸真平

石丸真平

NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援

NEXTSCALEのコンサルタントとして、生成AI活用、業務効率化、DX推進に関する支援を担当する想定のプロフィールエリアです。業務整理からツール選定、導入設計、社内定着までを一気通貫で支援する人物紹介として使用します。

ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。
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