AI導入事例15選 部門別の成果と、定着させた企業に共通する進め方を解説

AI導入を検討する段階で必要になるのは、技術の解説ではなく「自社の部門でどう使われているか」という具体像です。他社の取り組みを知っても、自分の業務に置き換えられなければ検討は進みません。

事例を探すとき、業界で絞る人は多いのですが、実際には業界が違っても部門が同じなら課題の構造はよく似ています。営業部門が抱える記録作業の負担は、製造業でもIT企業でも変わりません。

本記事では、営業からバックオフィスまで5つの部門別に15の導入事例を整理します。あわせて、成果を出して定着させた企業に共通する進め方と、途中で止まる分岐点を解説します。

確認したいポイント結論詳細
AI導入事例はどう探せばいい?業界より部門で探す業界が違っても、同じ部門なら抱えている課題の構造が近く、転用しやすくなります。
最も導入が進んでいる業務は?文書作成と問い合わせ対応資料や議事録の作成補助が国内で最も利用率が高く、次いで顧客対応の自動化が続きます。
成果を出した企業の共通点は?対象を絞り業務手順まで変えた一つの業務に絞って始め、AIの出力を誰がどう使うかまで設計している点が共通します。
事例を再現するには何が必要?同等のデータと運用体制同じ成果を狙うなら、事例と同等のデータが自社に蓄積されているかの確認が先決です。

この記事でわかること

  • 営業からバックオフィスまで、部門別に整理した15のAI導入事例の中身
  • 国内企業のAI活用がどの業務に集中しているかを示す公的統計の最新データ
  • 事例を自社に転用できるかを判断するための「課題・データ・利用者」の3視点
  • 成果を出して定着させた企業に共通する4つの進め方
  • 導入が途中で止まる分岐点と、事例を再現するための5つのステップ
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目次

AI導入事例を読む前に押さえたい3つの視点

事例を並べて眺めるだけでは、自社に活かせません。読み方を決めておくと、転用できるかどうかの判断が速くなります

ここでは、国内企業の導入実態と、事例を読むときの視点を整理します。

国内企業の導入は業務補助が中心

総務省が公表した「令和7年版 情報通信白書」によると、日本企業で最も利用率が高い業務は「メールや議事録、資料作成等の補助」で32.1%でした。米国は75.0%、中国は78.0%と、2倍以上の開きがあります。

つまり国内では、最も基本的な文書業務でさえ活用が広がりきっていない段階です。先進的な事例を基準にすると、自社の現実的な一歩を見誤ります

同白書では、生成AI導入における懸念として「効果的な活用方法がわからない」が最も多く挙げられています。事例が求められている背景も、この課題にあります。

出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html

事例は「課題→施策→成果」で読む

成果の数字だけを見ても、自社に再現できるかは判断できません。どんな課題があり、どういう施策で解いたのかという流れで読むことが重要です。

特に確認したいのが、施策の前提条件です。どんなデータを使ったか、誰が使う仕組みだったか、既存業務のどこに組み込んだかという情報があって初めて、実現可能性を測れます。

成果の数字は、その企業の規模や業務量に依存します。同じ施策でも、自社の件数に置き換えると効果が変わる点は前提として押さえておきます。

業界より部門で探すほうが転用しやすい

事例を探すとき、同じ業界で絞る人が多くいます。しかし業界が違っても、部門が同じなら課題の構造は似ています。商談記録の作業負担は、業界を問わず営業部門に共通する課題です。

逆に、同じ業界でも部門が違えば必要な技術も体制もまったく変わります。製造業の外観検査と経理の書類処理は、共通点がほとんどありません。

このため本記事では、部門別に事例を整理しています。自社が着手したい部門の事例から読むことで、転用の判断が速くなります

【営業・マーケティング】のAI導入事例3選

営業部門の課題は、記録と入力に時間が取られ、商談そのものに使える時間が減っていることです。この構造はどの業界でも共通しています

ここでは、営業とマーケティング領域の3つの事例を紹介します。

事例1:商談記録の自動要約と顧客管理システムへの登録

課題:商談後の記録作成に時間がかかり、入力が後回しになる。結果として情報が担当者の頭の中に残り、組織で共有されない状態が続いていました。

施策:オンライン商談の音声をAIが文字起こしし、要約と次のアクションを抽出して顧客管理システムへ自動登録する仕組みを構築しました。

成果:記録作業の時間が短縮され、入力率が改善しました。担当者の負担軽減だけでなく、商談内容が組織の資産として蓄積される点が本質的な効果になっています。

事例2:提案書ドラフトの自動生成

課題:提案書の作成に時間がかかり、担当者ごとに内容と品質にばらつきが出ていました。過去の優れた提案が再利用されず、毎回ゼロから作られる状態です。

施策:過去の提案書と商品資料を読み込ませ、顧客情報と課題を入力すると構成案とドラフトが生成される仕組みを整備しました。

成果:作成時間が短縮されただけでなく、経験の浅い担当者でも一定水準の提案書を作れるようになった点が評価されています。修正は人が行う前提の運用です。

事例3:顧客データを活用したターゲティングの精緻化

課題:ある金融会社では、キャンペーンのDMやメールマガジンの配信先を、年代や性別といった単純な条件で抽出していました。効果の検証にも限界がありました。

施策:顧客の取引履歴や行動データをAIが分析し、反応が見込める層を抽出する仕組みを導入しました。

成果:配信の反応率が改善し、効果検証の精度も上がりました。過去の配信実績というデータが自然に蓄積されている業務であるため、着手しやすい領域といえます。

【カスタマーサポート】のAI導入事例3選

問い合わせ対応は、内容が繰り返される割合が高く、AIとの相性が良い領域です。対応時間の削減と品質の安定を同時に狙えます

ここでは、顧客対応領域の3つの事例を紹介します。

事例4:問い合わせ一次対応の自動化

課題:定型的な質問が問い合わせの大半を占め、担当者が本来注力すべき複雑な相談に時間を割けない状態が続いていました。営業時間外の問い合わせも取りこぼしていました。

施策:FAQと商品情報をAIに読み込ませ、24時間応答するチャットボットを設置しました。答えられない質問は有人対応へ引き継ぐ設計です。

成果:定型的な問い合わせが自動処理され、有人対応の件数が減少しました。回答できなかった質問のデータが蓄積され、FAQの改善にも活用されています。

事例5:オペレーター支援によるリアルタイム対応

課題:コールセンターでは、通話中にマニュアルを検索する時間が発生し、顧客を待たせていました。経験の浅いオペレーターほど負担が大きい状態です。

施策:通話内容をリアルタイムでテキスト化し、関連する回答候補を画面に表示する仕組みを導入しました。通話後の記録も自動生成されます。

成果:応対時間が短縮され、対応品質のばらつきも縮小しました。AIが対応を代替するのではなく、人の判断を支える構成である点が定着の要因になっています。

事例6:夜間対応の負担軽減(宿泊業)

課題:ホテル運営では、少人数で回している夜間帯に問い合わせが集中し、担当者の負担が大きくなっていました。

施策:チェックイン時刻、館内設備、周辺情報といった定型的な質問に自動応答する仕組みを導入し、多言語にも対応させました。

成果:夜間の対応件数が減少し、担当者は本来の業務に集中できるようになりました。人員を増やさずに対応時間帯を広げられた点が効果として挙げられています。

関連記事:病院のAI導入事例|看護・病棟業務での使いどころと進め方【2026年最新】

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【バックオフィス】のAI導入事例3選

管理部門は、文書と規程を扱う業務が中心です。生成AIが最も効果を出しやすい領域であり、導入の第一歩として選ばれることが多くなっています。

ここでは、バックオフィス領域の3つの事例を紹介します。

事例7:社内規程・手続きの照会

課題:三菱UFJ銀行では、膨大なマニュアルや社内規程から必要な情報を探す作業に時間がかかっていました。担当者ごとに検索の巧拙も分かれます。

施策:社内文書を対象にした照会の仕組みを整備し、質問に対して関連情報を提示する構成を導入しました。

成果:検索時間の短縮と手続きミスの減少につながっています。既存の文書資産をそのまま活用できるため、データ整備の負担が比較的軽い点も着手しやすい理由です。

事例8:稟議書など社内文書のドラフト作成

課題:融資に関する稟議書の作成には時間がかかり、記載内容の抜けや表現のばらつきも発生していました。

施策:同行では、稟議書のドラフトを自動生成する仕組みを導入しています。必要な項目が揃った下書きから作業を始められる構成です。

成果:作成時間の短縮と、記載内容の正確性向上が図られています。ゼロから書く時間より、書き出しに悩む時間のほうが長い業務では、この効果が大きく出ます。

事例9:請求書・経費書類の読み取り

課題:取引先ごとに書式が異なる請求書を、担当者が目視で確認して入力する作業が発生していました。件数が増えるほど負担が比例して増える構造です。

施策:書類の画像から必要な項目を抽出する仕組みを導入しました。書式が異なっても、項目の意味を理解して抽出できる点が従来の文字認識との違いです。

成果:入力工数が削減され、転記ミスも減少しました。金額を扱う業務であるため、人が承認する工程は残す設計が前提になっています。

【現場・オペレーション】のAI導入事例3選

現場部門では、目視や経験に依存していた判断をデータで支える用途が中心です。熟練者の不足という構造的な課題への対応という側面もあります。

ここでは、現場領域の3つの事例を紹介します。

事例10:製品の外観検査

課題:目視検査は検査員の熟練度や疲労によって判定にばらつきが出やすく、品質の安定化が長年の課題でした。検査員の確保も難しくなっています。

施策:製品表面を撮影した画像をAIが解析し、傷や異常を自動検出する仕組みを導入しました。熟練検査員の判断基準を学習データとして与えています。

成果:検査精度が安定し、作業負担も軽減されました。属人化していた検査基準がデータとして残る点は、技術継承の観点でも価値があります。

事例11:設備の予知保全

課題:設備が突発的に停止すると、生産ラインの停止時間だけでなく、納期遅延や緊急対応の人件費まで損失が広がっていました。

施策:設備に取り付けたセンサーの振動や温度データを分析し、故障の兆候を事前に検出する仕組みを構築しました。

成果:計画的なメンテナンスが可能になり、突発停止による損失を抑えられています。センサーデータの蓄積が前提となるため、IoT基盤の有無が着手の分岐点になります。

事例12:現場の安全管理

課題:建設現場や工場では、保護具の未着用や立入禁止区域への侵入を人手の巡回で確認していました。監視の抜けが避けられない状態です。

施策:現場に設置したカメラ映像をAIが解析し、危険な状態を検知して通知する仕組みを導入しました。

成果:巡回では気づけなかった事象を検知できるようになりました。照明条件や天候の影響を受けやすいため、実際の現場データでの検証が欠かせません

【人事・人材開発】のAI導入事例3選

人事領域は、扱うデータの性質上、慎重な設計が求められます。AIの判定を合否そのものには使わない運用が一般的です。

ここでは、人事・人材開発領域の3つの事例を紹介します。

事例13:応募書類のスクリーニング補助

課題:応募数が多い企業では、書類選考にかかる工数が大きく、担当者の負担になっていました。担当者ごとに評価がぶれる問題もあります。

施策:応募書類から要件に合致する項目を抽出し、確認の優先順位を提示する仕組みを導入しました。

成果:確認工数が削減されました。ただし過去データに含まれる偏りを学習してしまうリスクがあるため、合否の判定には使わず、情報整理の補助に限定する運用が前提です。

事例14:社内研修コンテンツの作成支援

課題:部署ごとに必要な研修内容が異なるにもかかわらず、教材の作成工数が確保できず、汎用的な内容にとどまっていました。

施策:業務マニュアルや過去の事例をもとに、部署ごとの研修資料や理解度確認の問題を生成する仕組みを整備しました。

成果:教材の作成時間が短縮され、業務に即した内容を提供できるようになりました。自社の業務データを題材にできるため、定着率が変わります

事例15:離職の予兆分析

課題:離職の兆候に気づくのが遅く、対応できないまま退職に至るケースが続いていました。管理職の経験に依存した把握しかできていない状態です。

施策:勤怠データや面談記録などから、離職リスクが高まっている傾向を抽出する仕組みを導入しました。

成果:面談の優先順位づけに活用されています。AIの出力を評価や処遇の判断に使わないという線引きが、従業員の納得を得るうえで不可欠になります。

関連記事:生成AIの導入事例|止まる原因の分析と乗り越えた組織の共通点【2026年】

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企業規模によって参考にすべき事例は変わる

事例を探すときにもう一つ意識したいのが、企業規模です。大企業の事例をそのまま中小企業に当てはめると、前提条件が合いません

ここでは、規模ごとに着目すべきポイントを整理します。

大企業の事例で参考になる部分・ならない部分

大企業の事例は情報が公開されやすく、内容も詳細です。参考になるのは、業務フローへの組み込み方と、人が判断する範囲の線引きという設計思想の部分です。

一方、参考にならないのが投資規模と体制です。専任チームを置き、独自のデータ基盤を整備した前提の事例を、そのまま少人数の組織に適用することはできません。

読むときは、施策の中身より「なぜその業務を選んだか」という判断の理由に注目します。この部分は規模を問わず転用できます。

中小企業が現実的に狙える領域

既存のサービスを組み合わせて始められる領域から着手するのが現実的です。議事録作成、社内文書の検索、問い合わせの一次対応といった用途が該当します。

これらは独自のモデル構築を伴わず、既存の文書資産をそのまま活用できます。数十万円から数百万円の規模で始められるため、投資判断もしやすくなります。

また、意思決定が速いという利点もあります。部署をまたぐ調整が少ない分、試して判断するサイクルを短く回せる点は、規模の小さい組織の強みです。

部門単位で始めるという選択

規模を問わず有効なのが、全社ではなく部門単位で始める進め方です。一つの部門で成果を確認できれば、それ自体が社内向けの説得材料になります。

他部署は、外部の事例より社内の事例のほうが具体的に理解できます。同じ社内システムを使い、同じ業務ルールで動いている前提が共有されているためです。

この社内事例が次の適用領域を生みます。外部の事例を探し続けるより、自社で小さな成功を作るほうが展開は速くなります。

事例から見える定着した企業の4つの共通点

部門も業界も異なる事例を並べると、成果を出した企業には共通する進め方が見えてきます。成否を分けているのは技術力ではなく、課題設定と運用設計です。

ここでは、4つの共通点を整理します。

共通点1:対象をひとつに絞って始めている

成果を出した企業は、最初から全社的な仕組みを作ろうとしていません。解決したい業務課題をひとつ決め、その範囲に絞って検証を始めています

「AIを導入すること」が目的になると、評価基準が定まらないまま開発が進み、成果の判定ができなくなります。対象が絞られていれば、成否は明確に測れます。

スコープを絞ることには、失敗したときの損失を抑える効果もあります。小さく始めて成果を確認し、確認できた領域から広げる進め方が、結果的に導入速度を上げます。

共通点2:業務手順まで変えている

「精度は高いのに現場で使われない」という失敗の多くは、AIの出力が業務フローのどこに入るのかを決めていないことに起因します

定着した事例では、AIの結果を誰がいつ確認し、どう判断に反映するのかまで設計されています。既存の作業手順を変えずにAIだけを追加すると、現場には確認作業が増えるだけです。

業務手順書の更新も行われています。AIを使う工程が手順に組み込まれていないと、担当者が変わったときに元のやり方へ戻ってしまいます。

共通点3:人が判断する範囲を明確にしている

紹介した事例のいずれも、AIが人を代替する構成ではありません。検査であれば最終判定、書類処理であれば承認、人事であれば合否の決定を人が担っています。

この線引きが明確なほど、現場は安心して使えます。誤りが起きたときの影響も限定でき、責任の所在も曖昧になりません。

完全自動化を目指すのではなく、人が判断すべき対象を絞り込む仕組みとして設計するほうが、導入も定着も進みやすくなります。

共通点4:効果を測る指標を先に決めている

定着した事例では、導入前の状態が数値で記録されています。対象業務にかかっていた時間、処理件数、対応品質に関する指標を測ってから着手しています。

指標を後から決めると、都合の良い数字を探す作業になります。それでは次の投資判断もできません。

効果は工数削減だけではありません。対応できる時間帯が広がった、品質のばらつきが減った、経験の浅い担当者が対応できるようになったといった変化も指標になります。

導入が途中で止まる3つの分岐点

公開される事例は成功例に偏るため、失敗の実態は見えにくくなります。しかし実務で参考になるのは、どこでつまずくかを知っておくことです。

ここでは、事例の裏側で起きている3つの分岐点を整理します。

分岐点1:使えるデータが揃っていない

事例と同じ成果を狙うなら、同等のデータが自社に蓄積されているかの確認が先決です。文書が散在している、記録が個人のファイルにしか残っていないという状態では、着手できません。

特に予知保全のようなセンサーデータを前提とする事例は、基盤がなければ投資規模がまったく変わります。事例の見出しだけで判断すると、この差を見落とします。

データが不足している場合は、記録の仕組みづくりから始める判断になります。半年から1年の蓄積を経て効果が見えるという時間軸で計画を組みます。

分岐点2:検証で終わり本番運用に進まない

概念実証までは順調に進んだのに、本番導入に至らないケースが多く見られます。検証段階の成功が、そのまま事業成果につながるとは限りません

典型的なのは、データ量が足りず精度を維持できない、既存システムとの連携が想定より複雑だった、運用する部署が決まっていないといった問題です。

回避策は、検証を始める前に「どの数値をどこまで満たしたら本番実装に進むか」を関係者間で合意しておくことです。判断基準を先に決めておけば、検証が目的化することを防げます。

分岐点3:運用の担当が決まっていない

AIは導入した時点の精度が維持され続ける技術ではありません。業務内容や取り扱う情報が変われば、学習時の前提と現実がずれていきます。

厄介なのは、この低下がエラーとして現れない点です。システムは正常に動作しているため、現場が先に気づき、利用が静かに減っていくという経過をたどります。

決めておくべきは、精度を確認する担当、改善を判断する担当、参照データを更新する担当の3点です。開発段階で決めておかないと、稼働後に宙に浮きます

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事例を自社で再現するための5ステップ

最後に、事例を自社の取り組みに落とし込む手順を整理します。参考にすべきは成果の数字ではなく、そこに至るプロセスです。

ここでは、着手から定着までの流れを5段階で解説します。

ステップ1:自部門の課題を洗い出す

事例から入るのではなく、業務から入ります。時間がかかっている作業、属人化している判断、品質にばらつきが出ている工程を洗い出します。

洗い出した課題は、効果の大きさと実現しやすさの2軸で優先順位をつけます。効果が大きくても必要なデータがなければ着手できないため、両方を見て判断します。

この段階で、AIで解決すべきかも検討します。手順の見直しや既存ツールの設定変更で解決する課題であれば、そちらのほうが早く確実です。

ステップ2:近い課題構造の事例を探す

課題が特定できたら、同じ構造の課題を解いた事例を探します。業界ではなく部門と業務内容で探すことで、参考になる事例の範囲が広がります。

見るべきは、使われたデータの種類、業務フローへの組み込み方、人が判断する範囲の3点です。成果の数値は自社の業務量に置き換えて考えます。

複数の事例を比較すると、共通して必要になる条件が見えてきます。それが自社に揃っているかを確認します。

ステップ3:データの状態を確認する

AIはデータがなければ機能しません。どこにどんなデータがあり、どの期間分が使える状態かを確認します。所在、形式、蓄積期間、欠損の有無が確認項目です。

既存データを使う場合も、表記の統一や不正確な記録の除去といった前処理が発生します。この工数は軽視されがちですが、期間を左右する要素です。

必要なデータが揃っていない場合は、取得する仕組みの構築から始めることになります。この判断を先送りすると、途中で行き詰まります。

ステップ4:小さく試して指標で判断する

限定的な範囲で試し、業務で使える水準に届くかを検証します。開始前に合格基準を決めておくことが、判断を先送りしないための条件です。

検証では精度だけでなく、実際の業務時間が減ったか、確認作業が増えていないか、現場が使い続けているかという運用面も観察します。

この段階で、実際に使う担当者に参加してもらいます。使いにくさは触ってみないと分からず、資料上の検討では判断できません。

ステップ5:業務手順を更新して展開する

成果が確認できたら、運用ルールと業務手順を整えて展開します。どの業務でどこまで使ってよいか、入力してはいけない情報は何かを明文化します。

展開後は、利用率と成果を定期的に確認します。利用が伸びない場合、原因は精度ではなく操作性や業務フローとの噛み合わせにあることが多くあります。

成果が出た事例は社内で共有します。他部署が具体的な使い方を知ることで、次の適用領域が自然に広がっていきます

関連記事:AI-OCRの導入事例|業務別の効果と精度をめぐる誤解・確認作業の設計【2026年】

まとめ:事例は部門で探し、プロセスを参考にする

AI導入事例は、業界ではなく部門で探すほうが自社に転用しやすくなります。営業の記録作業、問い合わせ対応、書類処理といった課題は、業界を問わず共通の構造を持っているためです。

紹介した15の事例に共通していたのは、対象をひとつに絞って始めていること、業務手順まで変えていること、人が判断する範囲を明確にしていること、効果を測る指標を先に決めていることの4点でした。

一方で、データが揃っていない、検証で終わる、運用の担当が決まっていないという3つの分岐点で、導入は止まります。着手前にこれらを確認しておくことが、遠回りに見えて最短の進め方です。

国内企業の活用は、統計上まだ文書作成の補助が中心という段階にあります。基本的な業務への適用でも差別化の余地が残っている今のうちに、小さく始めて成果を確認する進め方が有効といえます。

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この記事の監修者

石丸真平

石丸真平

NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援

NEXTSCALEのコンサルタントとして、生成AI活用、業務効率化、DX推進に関する支援を担当する想定のプロフィールエリアです。業務整理からツール選定、導入設計、社内定着までを一気通貫で支援する人物紹介として使用します。

ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。
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