病院のAI導入事例 看護・病棟業務での使いどころと進め方【2026年最新】

病院でのAI導入というと、画像診断の支援が思い浮かびます。しかし実際に効果が出ている領域はそれだけではありません。看護記録、勤務管理、患者の状態把握といった病棟の運営業務でも、着実に成果が報告されています。

この領域には公的な事例の蓄積があります。厚生労働省の委託事業として、看護業務の効率化に取り組んだ施設の事例が収集され、表彰と公開が続けられてきました。医師の診療業務とは別の文脈で、実務的な知見が積み上がっています。

本記事では、病棟と看護の業務に焦点を当てて活用の場面を整理します。あわせて、多職種で使う際の設計と、医療機関特有の確認事項までを扱います。診療支援の話は別の記事で扱っているため、ここでは運営面に絞りました。

確認したいポイント結論詳細
どこで成果が出ている?記録と勤務管理の領域看護記録、勤務データの管理、患者の状態把握で効率化の事例が報告されています。
参考にできる情報は?公的な事例集が存在する厚生労働省の委託事業として、看護業務の効率化事例が収集・公開されています。
何から始めるべき?記録業務の見直しから時間外労働の主因になりやすく、効果を数字で示しやすい領域です。
多職種での注意点は?誰が何を担うかの整理職種間で役割が変わるため、導入前に業務の分担を見直す必要があります。

この記事でわかること

・病棟・看護業務でAIが効く5つの領域

・公的に収集された事例から見える取り組みの方向性

・多職種で使う際の設計と役割の整理

・導入の順序と、効果の測り方

・医療機関特有の確認事項と院内ルール

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目次

病棟業務にこそ改善の余地がある

診療支援が注目されがちですが、日々の運営業務に目を向けると別の課題が見えてきます。まず背景を整理します。

記録が時間外労働の主因になっている

看護師の時間外労働について、その大きな原因として記録業務が挙げられています。日中は患者対応に追われ、記録は勤務時間後に回されるという構造です。

公的な事例集でも、看護記録の見直しに取り組んだ施設が複数取り上げられています。記録内容の標準化やリアルタイムでの記録に焦点を当てた取り組みが報告されています。

この領域は、患者の安全に直接関わらないという点でも着手しやすくなります。効果も勤務時間の変化として測りやすい領域です。

管理業務が特定の人に集中する

看護管理者が担う業務も、負担の大きい領域です。勤務の調整、人員データの管理、各種の集計といった作業が該当します。

採用や異動、産休や時短勤務の変更といった情報を手作業でまとめる工程では、転記や計算の誤りも生じやすくなります。この作業のために残業せざるを得ないという状況が報告されています。

管理業務は特定の役職に集中するため、その人が不在になると回らなくなります。属人化の解消という観点でも、仕組み化の価値があります。

医師の働き方改革との連動

医師への時間外労働の規制が適用され、業務の分担を見直す動きが広がりました。医師の業務を他職種へ移す流れが加速しています。

移した先の職種でも負担が増えるため、そこを支える仕組みが必要になります。単に人から人へ移すだけでは、問題の場所が変わるだけです。

この文脈でAIが位置づけられます。職種間で業務を移す際に、移された側の負担を抑える手段として機能します。

公的な事例の蓄積がある

この領域の特徴として、公的に収集された事例が公開されている点があります。参考にできる情報が整っています。

厚生労働省の委託事業として、看護業務の効率化に資する取り組みが募集され、選考のうえ表彰と公開が行われてきました。業務改善、タスクシフトと多職種連携、技術の活用といった部門ごとに整理されています。公開されている事例集から、自施設に近い取り組みを探せます。

自施設の規模や課題に近い事例を探せる点が利点です。ベンダーの宣伝資料とは異なり、取り組んだ側の視点で書かれている点も参考になります。

関連記事:AIエージェントの活用事例|業務別の使い方と権限設計の注意点【2026年最新】

病棟・看護業務での5つの領域

実際にどこへ効くのかを整理します。診療そのものではなく、その周辺の業務が中心になります。

領域1|看護記録の作成

最も効果が期待される領域です。日々の記録、退院時のサマリ、申し送りの内容が対象になります。

音声で入力した内容を記録の形に整える、経過から要約を作成するといった処理が可能です。記録のために端末へ向かう時間が減り、患者と接する時間を確保できます。

退院時のサマリ作成については、生成AIを適用した効果を確認したとの報告もあります。まとまった文書を作る工程は、削減幅が大きくなる領域です。

領域2|患者の状態予測

蓄積された情報から、リスクの高い患者を特定する用途です。転倒や転落のリスク評価が代表例になります。

従来の評価方法では、多くの患者が高リスクと判定され、本当に注意すべき対象が絞り込めないという課題がありました。予測の精度が上がれば、限られた人員を必要な場所へ配分できます。

公開されている事例では、多職種で連携して個別のケアにつなげる取り組みとして報告されています。予測して終わりではなく、その先の対応まで設計されている点が要点です。

領域3|勤務管理と人員配置

看護管理者の負担が集中する領域です。勤務表の作成、人員データの管理、各種の集計が対象になります。

手作業でのデータ管理を自動化した事例では、毎月数時間を要していた作業が大幅に短縮されたと報告されています。転記や計算の誤りを防げる点も、実務では大きな価値になります。

勤務表の作成については、条件が複雑なため完全な自動化は難しい領域です。案を作らせて管理者が調整するという分担が現実的になります。

領域4|患者への説明と案内

入院時の説明、検査前の案内、退院後の生活指導といった場面です。同じ内容を繰り返し説明する業務が対象になります。

患者ごとの状況に応じた説明資料を作成する、よくある質問への回答を用意するといった用途で使えます。説明の質を均一に保てる点も利点です。

端末を使った説明の支援も進んでいます。看護師が口頭で伝えるだけでなく、患者が後から確認できる形にすることで、理解の定着にもつながります。

領域5|事務作業と情報連携

各種の書類作成、システム間のデータ移動、部署をまたぐ情報共有が対象です。診療にも看護にも直接関わらない周辺業務になります。

登録業務や集計作業では、情報収集にかかる時間の削減が報告されています。定型的な処理ほど、自動化の効果が数字で見えやすくなります。

この領域は、患者の安全に直接影響しないという点で着手しやすくなります。まずここで効果を確認してから、他の領域へ広げる順序も有効です。

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関連記事:ChatGPTの活用事例|シーン別の使い方と指示文の実例・注意点【2026年最新】

病棟以外の部門での使いどころ

病院には病棟以外にも多くの部門があります。それぞれで効く領域が異なるため、整理しておきます。

外来部門

患者の流れを管理する部門です。受付、案内、予約の調整といった業務が中心になります。

来院前のオンライン問診により、受付時点で必要な情報が揃っている状態を作れます。待ち時間の短縮にもつながり、患者側の満足度にも寄与します。

予約の配分にも活用できます。診療科ごとの混雑を平準化できれば、特定の時間帯に負荷が集中する状況を改善できます。

医事課・事務部門

診療報酬の請求、各種の届出、統計の作成が対象です。定型的な処理が多く、自動化の効果が見えやすい領域になります。

登録業務や集計作業では、情報収集にかかる時間の削減が報告されています。複数のシステムから情報を集めて突き合わせる工程が、とくに時間を要します。

算定に関わる確認作業でも活用が進んでいます。ただし最終的な判断は人が行う設計にしてください。誤りがあれば返戻や査定につながります。

薬剤部門

薬剤師が担う業務でも活用の余地があります。服薬指導の記録、薬歴の管理、疑義照会の記録が対象です。

病棟での薬剤管理業務については、看護師との役割分担を見直す取り組みも報告されています。誰が担うべき業務かを整理したうえで、技術を当てる順序が有効です。

文献の検索や情報の整理にも使えます。医薬品に関する問い合わせへの対応では、根拠を確認する工程が必ず必要になります。

リハビリ・検査部門

実施記録や報告書の作成が主な対象です。専門的な内容を含むため、記録に時間がかかりやすい領域になります。

実施した内容から報告の形に整える工程を短縮できれば、患者と接する時間を確保できます。定型的な部分と個別の記述を分けて設計すると効果が出やすくなります。

スケジュールの調整にも活用できます。患者ごとの状態と実施可能な時間帯を踏まえた配分は、人手では負担の大きい作業です。

関連記事:仕事でのAI活用事例|1日の流れで見る使いどころと時間の作り方【2026年】

多職種で使う際の設計

病院では、医師、看護師、薬剤師、事務職と多くの職種が関わります。この点が他業種との違いになります。

誰が何を担うかを先に整理する

AIを入れると、業務の分担が変わります。導入と同時に、役割の見直しが必要になる場面があります。

公的な事例集でも、タスクシフトと多職種連携が独立した部門として設けられています。病棟薬剤師との役割の委譲、看護補助者との協働といった取り組みが報告されています。

技術を入れる前に、そもそも誰がやるべき業務かを整理してください。分担の見直しだけで解決する課題も含まれている場合があります。

職種によって使う場面が違う

同じ仕組みでも、職種ごとに使い方は変わります。全員に同じ説明をしても、自分の業務に結びつきません。

看護師は記録と患者対応、管理者は集計と調整、事務職は書類作成というように、職種別に使いどころを示してください。この整理があると、導入時の説明が具体的になります。

職種をまたいで情報を共有する場面では、それぞれが必要とする粒度も異なります。同じ情報でも、見せ方を変える設計が必要になります。

現場の看護職を巻き込む

管理部門だけで選定すると、現場の実態に合わない仕組みが導入されます。実際に使う看護職の意見を反映してください。

確認すべきは、業務の流れを妨げないか、片手で操作できるか、緊急時に迂回できるかの3点です。病棟では、机に向かって落ち着いて操作する場面ばかりではありません。

夜勤帯での使いやすさも確認事項です。人員が少ない時間帯こそ支援が必要な一方、トラブル時に対応できる人がいないという条件があります。

仕事が奪われるという不安に配慮する

医療の質が下がるのではないか、判断を機械に委ねることになるのではないかという懸念は自然なものです。

位置づけを明確に伝えてください。記録や事務作業を減らし、患者と向き合う時間を増やすための手段だという説明が有効です。看護の本質が対人の関わりにあることは、現場の誰もが理解しています。

実際、公的な事例でも目的として掲げられているのは業務量の削減と超過勤務の削減です。人員削減が目的ではないという点は、繰り返し伝える価値があります。

導入の順序と効果の測り方

何から着手し、どう評価するかを整理します。段階を分けることで、現場の負担を抑えられます。

記録業務から始める

最初に着手すべきは記録の領域です。時間外労働の主因になっており、効果も数字で示しやすくなります。

着手にあたっては、まず記録の内容そのものを見直してください。技術を入れる前に、書かなくてよい項目や重複している記載がないかを確認する工程が必要です。

不要な記録を効率化しても意味はありません。整理してから仕組みを入れるほうが、結果的に効果が大きくなります。

1つの病棟で試す

全病棟に一斉導入するのではなく、まず1つの部署で試してください。範囲が狭いほど、効果の測定と改善の判断がしやすくなります。

選ぶ基準は、記録の負担が大きく、新しい取り組みに前向きなメンバーがいる部署です。成功事例を作ってから広げるほうが、全体への展開もスムーズになります。

この段階で、実際の使い勝手と課題が見えてきます。その結果を踏まえて、他部署への展開内容を調整してください。

測る指標を決めておく

導入前の数値を記録していなければ、効果を比較できません。着手と同時に測定を始めてください。

測りやすいのは、記録にかかる時間、時間外勤務の時間、そして患者に接する時間の3つです。最後の指標があると、何のための効率化かが伝わります。

医療の質に関する指標は短期では測れません。まず業務量の変化を確認し、その先に質の評価を置く設計が現実的です。

現場の声を継続的に拾う

数値だけでは見えない問題があります。使いにくい、かえって手間が増えたという声を継続的に確認してください。

導入直後は効率が下がることもあります。新しい操作に慣れる期間が必要なためです。3か月程度は習熟の期間として見込んでおいてください。

半年経っても改善が見られない場合は、設計そのものを見直す必要があります。習熟の問題なのか、業務に合っていないのかを切り分けてください。

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運用にかかる負担を見積もる

導入の判断では、費用だけでなく運用の体制も見積もってください。設定して終わりにはなりません。

継続的に発生するのは、参照する情報の更新、設定の見直し、そして新しく配属された職員への説明です。病院は異動や入退職が多い環境のため、この負担は無視できません。

誰が管理を担うのかも決めておいてください。情報システムの担当者が兼務する場合、その人の業務量を踏まえた計画が必要になります。

補助制度の活用を検討する

導入にあたっては、公的な補助制度を利用できる場合があります。電子カルテの刷新とあわせて投資する医療機関も増えています。

制度によって対象となる経費や要件が異なるため、検討の初期段階で確認しておくと選択肢が広がります。

申請には時間がかかるうえ、決定前に契約すると対象外になる制度もあります。導入の計画と並行して進めてください。

医療機関特有の確認事項

他業種と異なり、医療機関には法令上の義務があります。確認を飛ばすと運用そのものが成立しません。

安全管理の指針への準拠

医療機関が守るべきルールとして、厚生労働省が定める医療情報システムの安全管理に関する指針があります。現行は第6.0版です。

対象となるのは事業者が提供するシステムだけでなく、医療機関が自ら構築したものも含まれます。AIを導入する際も、この枠組みの中で評価する必要があります。

サイバーセキュリティの確保については、医療法施行規則により病院の管理者に義務として課されています。努力目標ではなく法令上の要求事項です。

患者情報の取り扱い

看護記録や患者の状態に関する情報は、要配慮個人情報にあたります。通常の個人情報より厳格な取り扱いが求められます。

外部のサービスで処理する場合、入力した内容が学習に使われない設定にできるか、保管場所を指定できるかの確認が前提になります。

個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用について注意喚起を公表しており、詳細は同委員会の資料で確認できます。

判断の責任は人にある

患者の状態予測を使う場合、その結果に基づく判断の責任は医療者にあります。この原則を院内で明確にしておいてください。

リスクが高いと予測された患者への対応、低いと判定された患者の扱いのいずれについても、最終的な判断は人が行う設計が必要です。

予測を過信すると、かえって見落としが生じます。従来の観察や判断を置き換えるのではなく、補完する位置づけとして運用してください。

院内ルールを文書化する

導入と同時に、使い方の基準を文書化してください。多職種が関わる以上、個人の判断に委ねる状態は危険です。

決めておきたいのは、使ってよい業務の範囲、入力してよい情報、人が確認する工程、そして責任の所在の4点です。

とくに入力の範囲は具体的に列挙してください。患者情報は入力しないという書き方では、何が該当するかを職員が判断できません。

事例を自院に当てはめる際の考え方

最後に、公開されている事例をどう活用するかを整理します。

規模と体制を確認する

紹介される事例は、規模も体制もさまざまです。自院に近い条件のものを探してください。

公的な事例集では、大学病院から診療所、訪問看護のステーションまで幅広く収集されています。規模が近い施設の取り組みほど、実行の見通しが立てやすくなります。

参考にすべきは導入した仕組みではなく、どの課題を解決しようとしたかという着眼点です。同じ課題を自院の条件でどう解くかを考えてください。

数値の前提を確認する

削減時間や効果の数字については、算出の前提を確認してください。何と比べた数字なのかが分からなければ参考になりません。

対象となった部署の規模、期間、測定の方法といった前提が示されていない数字は、参考程度に留めてください。

自院で試算する際は、着手前の数値を必ず記録しておいてください。この記録がなければ、効果を説明できず次の展開も通せません。

技術以外の要素にも目を向ける

公開されている事例を見ると、技術の導入だけが取り組みではないことが分かります。

記録内容の標準化、業務分担の見直し、人員配置の工夫といった取り組みも並行して行われています。技術はその一部として位置づけられています。

自院の課題が、必ずしも技術で解決するとは限りません。まず業務そのものを見直し、それでも残る部分に技術を当てる順序が確実です。

外部の知見を組み合わせる

規制を踏まえた設計は、一般的なAI導入より判断すべき論点が増えます。多職種での調整も必要になります。

すでに導入経験のある支援先に、業務の切り出しから運用設計までを相談する方法もあります。検証にかける期間を短縮でき、初期段階でのつまずきを避けやすくなります。

ネクストスケールでは、AIの業務活用に関する情報をコラムでも継続して発信しています。検討を進める際の材料としてあわせてご覧ください。

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まとめ

病院でのAI活用は、診療支援だけではありません。看護記録、患者の状態予測、勤務管理、患者への説明、事務作業という病棟の運営業務でも成果が報告されています。

この領域には公的な事例の蓄積があります。厚生労働省の委託事業として看護業務の効率化事例が収集され、業務改善、タスクシフトと多職種連携、技術の活用といった部門で整理されています。

着手は記録業務からをおすすめします。時間外労働の主因になっており、効果も測りやすい領域です。ただし技術を入れる前に、記録の内容そのものを見直す工程を挟んでください。不要な記録を効率化しても意味がありません。

多職種が関わる以上、誰が何を担うかの整理が前提になります。あわせて、安全管理の指針への準拠と患者情報の取り扱いについては、計画の段階から組み込んでください。後回しにすると運用開始後に手戻りが生じます。

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この記事の監修者

石丸真平

石丸真平

NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援

NEXTSCALEのコンサルタントとして、生成AI活用、業務効率化、DX推進に関する支援を担当する想定のプロフィールエリアです。業務整理からツール選定、導入設計、社内定着までを一気通貫で支援する人物紹介として使用します。

ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。
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