AIエージェントの活用事例 業務別の使い方と権限設計の注意点【2026年最新】
2026年8月20日
著者:NEXT SCALE編集部
監修者:石丸真平

指示に答えるだけの段階から、自ら判断して業務を進める段階へ。AIエージェントの実用化が進み、本番運用へ移行する企業が増えています。従来の自動化では対応できなかった、判断を含む業務が対象になり始めました。
一方で、自律的に動くことは新しいリスクも生みます。あるセキュリティ企業の調査では、88%の組織がすでにAIエージェント関連のインシデントを経験したと報告されました。原因の上位には、権限の過剰付与が挙がっています。
本記事では、業務別にどこへエージェントが効くのかを整理したうえで、従来のAI活用との違い、そして権限設計を含む導入時の注意点までを扱います。事例の羅列ではなく、自社で判断するための材料としてお読みください。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| 従来のAIと何が違う? | 自ら判断して実行する | 質問に答えるのではなく、目的から手順を決めて複数の処理を進めます。 |
| どこに効く? | 手順が分岐する業務 | 問い合わせ対応、社内サポート、情報収集など判断を含む工程が対象です。 |
| リスクは? | 権限の過剰付与が最多要因 | 88%の組織がインシデントを経験。主因は権限、情報漏洩、不正命令です。 |
| 何から始める? | 権限を絞った限定運用から | どこで止めるか、誰が承認するかを先に決めることが導入の前提になります。 |
この記事でわかること
・AIエージェントと従来の生成AI活用との違い
・業務別に見た活用の方向性と、効果が出やすい領域
・自律性がもたらす固有のリスクと公的な整理
・権限設計と統制の考え方
・導入の順序と、社内で決めておくべきルール
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従来のAI活用と何が違うのか
まず違いを整理します。ここを理解しておかないと、期待する効果もリスクの所在も見誤ります。
答えるのではなく実行する
従来のチャットボットは、あらかじめ用意された回答やシナリオに沿って答えを返す仕組みでした。人が質問し、AIが答えるという1対1の関係です。
エージェントは、目的の達成に向けて自ら判断し、行動を実行します。状況を理解し、必要な情報を集め、複数のシステムを使い分け、次の行動を提案または実行するところまでを担います。
この違いは、対応できる業務の範囲に直結します。手順が固定されていない、判断が入る業務にも適用できるようになりました。
複数の処理をつなげられる
1回の指示で完結する処理ではなく、複数の工程を順に進められる点も特徴です。途中で状況が変われば、手順を組み替えます。
情報を集め、内容を判断し、システムへ登録し、関係者へ通知するといった流れを、人が操作せずに進められます。従来は各工程で人が介在していた部分です。
複数のエージェントが役割を分担する構成も可能になりました。調査を担当するもの、文書を作成するもの、送信を担当するものを分けることで、大規模な処理も管理しやすくなります。
本番運用の段階に入った
この2年で、検証の段階から実際の業務での運用へ移行が進みました。試すかどうかではなく、どの業務から始めるかという議論に移っています。
調査によっては、AIを導入した企業の半数程度がすでに本番運用に入っているという結果も報告されています。全社的な展開に進んでいる企業も一定数存在します。
ただし、この数字は導入済みの企業を母数としたものです。そもそも着手していない企業も多く、全体としてはこれからという段階にあります。
リスクの性質も変わる
自律的に動くということは、人の確認を経ずに処理が進むということでもあります。ここが従来との決定的な違いです。
誤った判断がそのまま実行に移されるため、影響が出る前に気づけない場合があります。答えを提示するだけの仕組みとは、リスクの性質が異なります。
この点については後半で詳しく扱います。まず、どこに効くのかを見ていきましょう。
関連記事:ChatGPTの活用事例|シーン別の使い方と指示文の実例・注意点【2026年最新】
業務別に見た活用の方向性
エージェントが向くのは、判断を含みながらも基準を説明できる業務です。5つの領域で整理します。
顧客からの問い合わせ対応
最も導入が進んでいる領域です。定型的な質問への回答にとどまらず、手続きの受付まで完結できるようになりました。
電話でしか受け付けられなかった手続きを、チャットで自動処理する形が広がっています。再配達の依頼や予約の変更といった、条件分岐を伴う手続きが対象です。
従来のチャットボットとの違いは、想定外の質問にも対応できる点です。あらかじめ用意した回答がなくても、対話を重ねながら必要な情報を引き出せます。
社内のヘルプデスク
従業員からの問い合わせに対応する領域です。情報システム部門や総務部門の負担軽減に直結します。
社内の規程や手順書を参照して回答するだけでなく、簡単な設定変更や申請の受付まで担えます。担当者への問い合わせが減り、本来の業務に時間を割けます。
適切な担当チームへの振り分けも自動化できます。内容を判断して回すべき先を決める工程は、従来は人が担っていた部分です。
情報収集と分析
調査を自律的に進める用途です。指示を受けて情報を集め、整理し、報告としてまとめるところまでを行います。
市場の動向や競合の状況について、複数の情報源を確認したうえで比較表にまとめるといった処理が可能です。従来は数十分かかっていた作業が短縮されます。
ただし、収集した情報の正確性は別の問題です。数値や制度の内容については、一次情報で確認する工程を業務の流れに組み込む必要があります。
会議の記録と管理
会議に参加して記録を作り、決まったことをタスクとして登録する用途です。記録から実行管理へつなぐ部分が価値になります。
議事録の作成に加えて、次のアクションを抽出し、課題管理の仕組みへ登録するところまで進められます。会議で決めたことが実行されないという問題への直接的な対処です。
過去の記録を参照して回答する使い方も可能です。以前どう決まったかを確認する作業が、その場で完結します。
判断を伴う事務処理
最も新しい領域です。金融機関では、審査の補助や規程への適合確認といった業務での運用が進んでいます。
基準が明文化されている判断であれば、一次的な確認をエージェントに任せられます。人は例外的な案件や最終的な判断に集中できます。
この領域では、判断の根拠を記録に残せるかが導入の条件になります。なぜその結論になったかを説明できなければ、業務として成立しません。
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関連記事:製造業のAI活用事例|技能継承と間接業務での使いどころと進め方【2026年】
業種別に見た展開の状況
業務軸に加えて、業種によっても進み方が変わります。自社に近い領域を参考にしてください。
物流・運輸
人手不足が最も深刻な業界の1つであり、導入が進んでいる領域です。問い合わせ対応と配送の最適化が主な対象になります。
電話でしか受け付けられなかった手続きをチャットで自動処理する取り組みでは、依頼の相当割合が自動化されたと報じられています。ドライバーと窓口の双方の負荷を減らす効果があります。
倉庫内の作業配分にも活用されています。人員のシフトや設備の稼働計画を、当日の状況を踏まえて調整する用途です。
金融・保険
判断を伴う事務が多く、規程が明文化されている業界です。この性質がエージェントと相性の良い条件になっています。
審査の補助、規程への適合確認、顧客対応といった領域での運用が進んでいます。判断を含む事務にAIが入り始めた象徴的な領域です。
一方で、規制の厳しい業界でもあります。判断の根拠を記録に残せるか、説明責任を果たせるかが導入の前提条件になります。
製造業
顧客からの技術的な問い合わせ対応で活用が進んでいます。製品の仕様や不具合に関する質問は、専門知識を要するため負担の大きい業務です。
社内の技術資料を参照して回答する仕組みを作れば、担当者しか答えられない状況を改善できます。技能継承の課題にも接点があります。
現場の設備に関わる領域では、データの整備が前提になります。まず問い合わせ対応や事務処理から着手する順序が現実的です。
IT・情報通信
開発の現場で最も進んでいる領域です。コードの生成だけでなく、修正、テスト、レビューまでを自律的に進める使い方が広がっています。
短時間で業務用のエージェントを構築し、その日のうちに稼働させたという事例も報告されています。構築そのものの速度が上がっている点が特徴です。
ただし、この領域は実行権限が本番環境に及ぶリスクがあります。次章で扱うとおり、権限設計を先に決めることが不可欠です。
関連記事:仕事でのAI活用事例|1日の流れで見る使いどころと時間の作り方【2026年】
自律性がもたらす固有のリスク
ここが本記事で最も重要な部分です。従来のAI活用とは異なるリスクが生じます。
多くの組織がすでに問題を経験している
感覚ではなく数字で押さえておきましょう。あるセキュリティ企業の2026年の調査では、88%の組織がすでにAIエージェント関連のセキュリティインシデントを経験したと報告されています。
主な原因の上位3つは、不正な命令の混入、意図しないデータの漏洩、そして権限の過剰付与でした。技術的に高度な攻撃ではなく、設計と運用の問題が中心です。
実際の事例として、コーディングを支援するエージェントが本番環境のデータベースを削除したという報告もあります。実行権限を持つ以上、誤った判断が直接的な被害につながります。
国際的な整理が公開された
この状況を受けて、セキュリティの国際的な団体が2025年12月にエージェント特有のリスクを体系化した資料を公開しました。100名を超える研究者と実務者が1年以上かけて策定したものです。
整理された10のリスクのうち、非エンジニアの組織でも影響を受けるものとして、目標の乗っ取り、ツールの誤用、権限の悪用が挙げられています。
目標の乗っ取りとは、エージェントが参照する外部のデータに隠された命令が埋め込まれ、本来の目的とは違う行動を取らされる攻撃です。メールやWebページ、添付された文書が経路になります。
従来の原則が一段厳しく問われる
重要なのは、これらが全く新しいリスクではないという点です。従来からある原則が、自律性によって厳しく問われるようになったという整理が実態に近くなります。
権限管理、入力の検証、監査、承認、分離といった基本的な考え方は変わりません。変わったのは、それらの適用対象がAIにも広がったという点です。
この資料では、不要な自律性を避けるという考え方と、エージェントが何をなぜ行ったかを追える状態を保つことが重要な原則として示されています。
確認できない状態が最大の問題
実務上、最も危険なのは何が起きたか分からない状態です。エージェントが自律的に動いた結果、誰も経緯を説明できないという事態が生じます。
便利に動かすことを考える前に、どこで止めるのか、誰が承認するのか、何を記録するのかを決めておいてください。地味ですが、これが最も効きます。
この設計は、導入後に追加するのが難しい部分です。運用が始まってからでは、止める仕組みを入れる余地がなくなります。
権限設計と統制の考え方
リスクを踏まえたうえで、どう設計するかを整理します。4つの観点で考えてください。
使える範囲を宣言的に決める
エージェントが使えるツール、参照できるデータ、実行できる操作を、あらかじめ明示的に定義してください。それ以外は動かない状態にします。
便利だからと広い権限を与えると、想定外の操作が可能になります。必要な範囲だけを与える原則は、人のアカウント管理と同じです。
とくに削除や送信を伴う操作は、慎重に扱ってください。読み取りだけを許可した状態から始め、必要が確認できてから範囲を広げる順序が安全です。
専用のアカウントで動かす
担当者のアカウントをそのまま使わせるのは避けてください。その人が持つ権限をすべて引き継ぐことになります。
エージェント用のアカウントを別に用意し、必要な権限だけを付与してください。誰の操作なのかが記録上も明確になり、問題が起きた際の追跡がしやすくなります。
管理者権限のアカウントで動かす構成は、実質的に無制限の権限を与えることになります。この設計は避けるべきです。
人が承認する工程を残す
すべてを自動で完結させる必要はありません。影響の大きい操作については、実行前に人が承認する設計にしてください。
外部への送信、データの削除や更新、金銭に関わる処理は、承認を挟むべき領域です。チャットツールへ確認を送り、承認された場合のみ次へ進む仕組みが組めます。
運用が安定してから自動化の範囲を広げる進め方が安全です。最初から完全な無人化を目指すと、問題が起きたときの影響が大きくなります。
記録を残して追跡できるようにする
何をしたかだけでなく、なぜそう判断したかを追える状態にしてください。エージェントの行動を後から検証できるかが、統制の要になります。
記録すべきは、受けた指示、参照した情報、実行した操作、そしてその判断の根拠です。問題が起きた際、どこで判断が誤ったかを特定できます。
異常を検知した際の通知も設定してください。自律的に動く以上、止まったことにも誤作動にも、人が気づかない可能性があります。
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導入の進め方
設計の考え方を踏まえ、実際の進め方を整理します。段階を分けることで、リスクを抑えながら効果を確認できます。
読み取りだけの業務から始める
最初に着手すべきは、データを変更しない業務です。情報の収集、内容の整理、下書きの作成といった領域が該当します。
この範囲であれば、誤った判断があっても被害は限定的です。検証の対象として安全であり、効果も時間の削減として測れます。
ここでエージェントの挙動を把握してから、書き込みを伴う業務へ広げてください。どんな場面で判断を誤るかを知っておくことが、次の設計に活きます。
対象を1つに絞る
複数の業務に同時に適用すると、何が効いて何が問題なのかが分からなくなります。まず1つに絞ってください。
選ぶ基準は、頻度が高く、判断の基準を説明でき、失敗しても影響が限定的な業務です。社内向けの問い合わせ対応や、定期的な情報収集が最初の候補になります。
着手前の作業時間を記録しておくことも忘れないでください。この数値がなければ、効果を説明できず次の展開を通せません。
止める手順を先に決める
動かす設計と同じくらい重要なのが、止める設計です。想定外の動作をした際に、誰がどう止めるかを決めておいてください。
確認すべきは、誰が異常に気づくか、どうやって停止するか、停止後に誰が対応するかの3点です。運用を始める前に決めておく必要があります。
自動化された処理は、動いているときより止まったときの対応が問われます。エラー時に通知が飛ぶ設定は、最低限の要件です。
社内ルールを整える
使い方の基準がなければ、各部署が個別に設定を進めて統制が効かなくなります。導入と同時に基準を文書化してください。
情報処理推進機構の調査では、AIに関するポリシーや社内ルールをどちらも定めていない企業が16.7%、適切な利用を管理する社内ルールの作成が難しいと回答した企業が39.7%にのぼりました。
決めておきたいのは、使ってよい業務の範囲、与えてよい権限の上限、承認が必要な操作、そして責任の所在の4点です。
必要な体制を見積もる
導入の判断では、費用だけでなく運用にかかる体制も見積もってください。設定して終わりにはなりません。
継続的に発生するのは、判断が誤った場合の調整、参照する情報の更新、そして異常時の対応です。誰がこれを担うかを決めておかないと、精度が徐々に落ちていきます。
接続先のシステムに変更があれば、設定の見直しも必要になります。外部との連携が多いほど、この保守の負担は大きくなります。
自社に当てはめる際の判断基準
最後に、事例を自社の取り組みに変えるための考え方を整理します。
公開事例をそのまま真似ない
紹介される事例の多くは大企業のものです。専任の体制があり、大きな投資ができる前提で組まれています。
参考にすべきは、達成した数値ではなく、どの課題を解決しようとしたかという着眼点です。同じ課題を自社の規模でどう解くかを考えるほうが、実行できる案にたどり着きます。
数値についても、算出の前提が示されていないものは参考程度に留めてください。何と比べた数字なのかが分からなければ、判断材料になりません。
現実的な目標を設定する
すべてを自動化する前提で計画すると、実現できずに終わります。人が対応する部分を残す設計が現実的です。
ある製造業の事例では、AIが対応する割合を15%、人が85%という目標設定で段階的に導入が進められました。この現実的な設定が、着実な運用につながっています。
最初から高い比率を目指すと、品質の問題や現場の抵抗が生じます。小さく始めて広げるほうが、結果的に早く定着します。
効果を数字で確認する
導入前の数値を記録していなければ、効果を比較できません。着手と同時に測定を始めてください。
測る指標は、対象業務にかかっていた時間、処理できた件数、人が介入した回数の3つから選べば十分です。人の介入が減っていれば、自律性が機能しています。
小さくても数字で語れる成果があれば、次の投資判断が通りやすくなります。逆に、感覚で良かったと言うだけでは継続の判断ができません。
外部の知見を組み合わせる
権限設計と業務設計を同時に進めるのは、担当者にとって負担の大きい作業です。判断すべき論点も多くなります。
すでに導入経験のある支援先に、業務の切り出しから統制の設計までを相談する方法もあります。検証にかける期間を短縮でき、初期段階でのつまずきを避けやすくなります。
ネクストスケールでは、AIエージェントの業務活用に関する情報をコラムでも継続して発信しています。検討を進める際の材料としてあわせてご覧ください。
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まとめ
AIエージェントは、質問に答えるのではなく、目的の達成に向けて自ら判断し実行する点が従来との違いです。手順が固定されていない、判断を含む業務にも適用できるようになりました。
効果が出やすいのは、顧客からの問い合わせ対応、社内のヘルプデスク、情報収集と分析、会議の記録と管理、そして基準が明文化された事務処理の5領域です。いずれも判断を含みながら、その基準を説明できる業務にあたります。
一方で、自律性は固有のリスクを生みます。88%の組織がすでにインシデントを経験しており、主因は権限の過剰付与、不正な命令の混入、意図しないデータの漏洩です。実行権限を持つ以上、誤った判断が直接的な被害につながります。
導入にあたっては、便利に動かすことを考える前に、どこで止めるのか、誰が承認するのか、何を記録するのかを決めてください。読み取りだけの業務から始め、専用アカウントで権限を絞り、承認の工程を残す設計が出発点になります。
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この記事の監修者
石丸真平
NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援
ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。

