DX推進とは?進め方の5ステップと課題・成果が出る企業の共通点【2026年最新】
2026年8月19日
著者:NEXT SCALE編集部
監修者:石丸真平

DX推進という言葉は経営会議の定番になりましたが、実際に成果を出せている企業は限られています。情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公表した調査では、何らかの形でDXに取り組む国内企業は75.7%に達した一方、成果が出ていると答えた企業は60.8%、成果が「わからない」とした企業も26.8%にのぼりました。
つまり、着手した企業の4社に1社以上が、自社の取り組みが前進しているのかを判断できていない状態にあります。この差はツールの性能ではなく、進め方の設計によって生まれています。
本記事では、公的機関の最新データをもとに、DX推進の定義から進め方の5ステップ、つまずきやすい課題、成果が出ている企業の共通点までを順に整理します。自社が今どの段階にあるのかを確かめながら読み進めてください。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| DX推進とは何を指す? | 事業と組織を作り替える取組 | ツール導入にとどまらず、業務プロセスや組織、企業文化まで変えて競争力を高めることを指します。 |
| 日本企業はどこまで進んでいる? | 取組率は75.7%で横ばい | IPAの2026年調査では成果実感は60.8%。取り組んでいても成果を把握できていない企業が約27%あります。 |
| 何から着手すればいい? | 現状把握と成果指標の設定から | 成果指標を設定している企業は23.9%にとどまり、この有無が投資対効果の差につながっています。 |
| 成果が出る企業の違いは? | 経営と現場が連携できている | 成果が出ている企業の72.9%が経営・IT・業務部門の協調を実現。成果が出ていない企業は37.1%です。 |
この記事でわかること
・DX推進の定義と、デジタル化やIT化との線引き
・最新の公的調査で見る、日本企業の取組状況と成果の実態
・着手から定着までの進め方を整理した5つのステップ
・つまずきやすい4つの課題と、それぞれの回避のしかた
・成果が出ている企業に共通する条件と、活用できる公的制度
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DX推進とは事業と組織をデジタル前提で作り替える取組
議論がかみ合わない原因の多くは、DX推進という言葉が人によって違う意味で使われていることにあります。まずは公的な定義を確認したうえで、近い言葉との違いと、社内で扱ううえでの整理のしかたを押さえます。
経済産業省による定義
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード」では、DXを次のように定義しています。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること。
さらに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土まで変革し、競争上の優位性を確立することまでが含まれています。変革の対象が「製品・サービス」と「組織・業務」の両面に及ぶ点が、この定義の要点です。
DX推進は、この変革を実際に前へ進める活動全体を指します。システムを導入して終わりではなく、導入したあとに業務と組織がどう変わったかまでが評価の対象になります。
デジタル化・IT化との線引き
混同されやすいのがデジタル化やIT化との関係です。紙の帳票をデータに置き換える作業はデジタイゼーション、業務の流れ全体をデジタル前提に組み替える段階はデジタライゼーションと呼ばれます。
DXはこの2段階を土台にしたうえで、事業のあり方そのものを変えるところまでを射程に入れます。紙をPDFにした時点で完了と考えてしまうと、投資に見合う成果が出ないまま止まります。
ただし、順序を飛ばして事業変革だけを狙っても機能しません。データが整っていなければ分析も自動化も成り立たないため、足元の整備と将来の変革を並行して進める設計が現実的です。
「守りのDX」と「攻めのDX」の関係
実務では、DX推進を守りと攻めに分けて考えると議論が整理されます。守りは業務効率化やコスト削減、既存システムの刷新といった社内向けの取り組みです。
攻めは新規事業の創出、既存製品の高付加価値化、顧客体験の向上など社外に向けた取り組みを指します。多くの企業は守りの領域で成果を出したあと、攻めへ展開できずに停滞します。
この停滞は感覚ではなく数字にも表れています。次の章で、国内企業がどの段階にいるのかを具体的なデータで確認します。
関連記事:製造業DXとは?進まない4つの課題と進め方・活用領域を解説【2026年最新】
DX推進が求められる3つの背景
なぜ今これほどDX推進が語られるのか。背景を理解しておくと、社内で必要性を説明する際の説得力が変わります。ここでは技術・人材・経営環境の3つの側面から整理します。
老朽化したシステムと「2025年の崖」
出発点となったのが、経済産業省が2018年に公表したDXレポートです。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを刷新できない場合、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性が指摘されました。
この「2025年の崖」という表現が広く知られ、基幹システムの刷新が経営課題として位置づけられます。2026年を迎えた現在も、保守費用の高騰や、システムを理解している担当者の退職という形で影響は続いています。
部門ごとに個別最適化されたシステムは、全社横断でのデータ活用を妨げます。この状態を放置したままAIやデータ分析に投資しても、期待した効果は得られません。
労働人口の減少と人材確保の難しさ
2つ目が人手不足です。生産年齢人口の減少が続くなかで、これまでと同じ人数を前提とした業務設計は成立しなくなりつつあります。
IPAの調査では、DXを推進する人材の量が「不足している」と回答した企業は85.5%、質については88.8%にのぼります。この水準は数年にわたって高いまま推移しており、採用だけで解決できる問題ではないことがわかります。
限られた人員で成果を出すには、業務そのものを減らす設計が必要です。DX推進が単なる効率化ではなく経営課題として扱われるのは、この構造的な制約があるためです。
生成AIの実用化が変えた前提
3つ目が技術側の変化です。生成AIの導入は急速に広がり、IPAの調査では導入企業の割合が2024年度の22.6%から2025年度は44.0%へと倍増しました。
AIを含めると58.0%の企業が何らかの形で導入または試験利用しており、DX推進の手段としてAIを位置づける企業が半数を超えています。数年前と比べ、できることの範囲が大きく広がった状態です。
一方で、使いこなせている企業とそうでない企業の差も開いています。技術が手に入りやすくなったぶん、どの業務に当てるかという設計力が成果を分ける要素になりました。
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関連記事:DX支援とは?サービスの種類と費用相場・支援会社の選び方を解説【2026年最新】
日本企業のDX推進はどこまで進んでいるか
自社の位置を測るには、全体の状況を知っておく必要があります。ここではIPAが2026年7月に公表した最新の調査結果をもとに、取組率・企業規模差・成果の中身・投資対効果の4点を確認します。
取組率は75.7%で横ばいが続く
この調査は情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」として公表されたもので、2026年4月から6月にかけて実施され、国内1,799社から回答を得ています。何らかの形でDXに取り組んでいる企業の割合は75.7%となりました。
注目すべきは、この数字が経年でほぼ横ばいという点です。着手する企業が増え続ける段階は終わり、すでに取り組んでいる企業がどこまで深められるかという局面に移っています。
成果については、成果が出ていると回答した企業が60.8%、わからないと回答した企業が26.8%でした。取り組んではいるものの、効果を把握できていない層が厚いことがわかります。
企業規模による二極化が続いている
全体の数字以上に差が大きいのが企業規模別の状況です。従業員1,001人以上の企業では取組率が98.7%に達し、DXはもはや当然に実施するものとなっています。
これに対して従業員100人以下の企業では41.6%にとどまり、半数以上が着手していない状態です。取り組んでいない理由を尋ねると、100人以下の企業では「自社がDXに取り組むメリットがわからない」が54.0%で最多となりました。
一方、101人から300人規模では、知識や情報の不足、戦略立案や現場推進を担える人材の不足が上位に挙がります。規模によって課題の質が異なるため、他社の事例をそのまま当てはめても機能しにくい構造です。
成果は「内向き」の領域に偏っている
成果が出ていると回答した企業に、その内容を尋ねた結果にも偏りが見られます。最も多かったのが人件費や材料費のコスト削減で70.9%、次いで従業員満足度の向上が42.4%でした。
一方で売上高の増加は17.9%、利益の増加は19.6%にとどまっています。アナログデータのデジタル化や業務効率化といった内向きの領域では成果が出ているものの、新規ビジネスの創出や顧客価値の向上といった外向きの領域には多くの企業が届いていません。
この偏りは前年の調査からほとんど変わっていません。守りの段階で成果を確認したあと、攻めへどう接続するかが共通の課題になっています。
投資対効果を実感できているのは14.6%
投資面の数字も押さえておきましょう。DX投資額が売上に占める割合は、1%未満が27.8%、1%以上2%未満が31.0%で、2%未満の企業が半数以上を占めます。
投資額そのものは増加傾向にあり、前年度から増やした企業は51.7%にのぼります。ところが、投資や費用を上回る効果が出ていると回答した企業は14.6%にとどまりました。
投じた額は増えているのに、効果を実感できている企業は1割台という構図です。何にどう使うかの設計と、効果を測る仕組みの両方が問われている段階といえます。
関連記事:建設DXとは?進まない理由と工程別の活用領域・進め方を解説【2026年最新】
DX推進の進め方を5つのステップで整理
ここからは実際の進め方に入ります。経済産業省のデジタルガバナンス・コード3.0が示す枠組みを踏まえつつ、現場で実行できる形に落とし込んだ5つのステップとして整理します。順番を入れ替えると機能しにくい構成になっています。
ステップ1|経営ビジョンとDX戦略を接続する
最初に必要なのは、自社が何を目指すのかという経営ビジョンと、そこにデジタルがどう寄与するのかを言葉にすることです。ここが曖昧なまま個別のツール導入を始めると、投資が分散します。
デジタルガバナンス・コード3.0では、DX経営に求められる視点の1つとして経営ビジョンとDX戦略の連動が挙げられています。経営者自身が主導し、デジタル面の課題を具体的なアクションとして落とし込むことが求められる部分です。
実務上は、3年後にどの事業をどう伸ばすのか、そのために何がボトルネックになっているのかを整理するところから始めると進めやすくなります。
ステップ2|現状と目指す姿のギャップを数値化する
次に、現在の姿と目指す姿の差を数字で把握します。感覚的な「遅れている」という認識では、どこから手をつけるべきかが決まりません。
課題ごとにKPIを設定し、現状の数値と目標値の差を明確にすることで、優先順位の判断ができるようになります。受注から出荷までの日数、問い合わせ1件あたりの対応時間、月次決算にかかる日数など、業務単位の指標が起点になります。
自己診断には公的な仕組みも使えます。IPAが提供するDX推進指標は2026年2月に改訂され、同年4月から改訂版での回答受付が始まっています。他社との比較を含めた客観的な把握に役立ちます。
ステップ3|推進体制と役割分担を決める
3つ目が体制づくりです。専任部署を置くか、既存部門が兼任するかは企業規模によりますが、誰が意思決定するのかを曖昧にしたままでは前に進みません。
とくに重要なのが、経営層・IT部門・業務部門の三者が同じ場で議論できる状態を作ることです。IT部門だけに任せると現場の実態と乖離し、業務部門だけで進めると全社の整合が取れなくなります。
外部パートナーを使う場合も、社内に意思決定と要件整理を担う人を置く必要があります。ここを外注しきってしまうと、知見が社内に残らず次の施策につながりません。
ステップ4|対象業務を絞って実行する
計画ができたら、範囲を絞って実行に移ります。最初から全社展開を狙うと、調整に時間を取られて成果が出る前に推進力が失われます。
選ぶ基準は、業務量が多く定型的で、効果を数字で測りやすい領域です。請求書処理、勤怠管理、問い合わせ対応といった業務は、改善幅が見えやすく最初の対象に向いています。
この段階で得た成功体験は、社内で次の投資を通すための材料になります。小さくても構わないので、数字で語れる結果を先に作ることが後の展開を左右します。
ステップ5|成果指標で評価し見直す
最後が評価と見直しです。実はここが最も抜けやすい工程で、多くの企業がつまずいている部分でもあります。
IPAの調査では、DXの成果指標を設定している企業は23.9%にとどまり、4社に1社にも届いていません。設定していない理由の最多は「評価指標の設定方法がわからない」で36.0%、前年から約7ポイント上昇しています。
指標を設定している企業は、していない企業に比べて投資対効果が出ていると回答する割合が10ポイント程度高くなっています。完璧な指標を最初から作る必要はなく、業務時間やコストなど測れるものから始めれば十分機能します。
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DX推進でつまずきやすい4つの課題
進め方がわかっていても、実行段階で止まる企業は少なくありません。ここでは調査データから見えてくる代表的な課題を4つ取り上げ、それぞれの対処の方向性を示します。
人材の量と質がともに足りない
最も多く挙がるのが人材の問題です。量の不足を感じている企業は85.5%、質の不足は88.8%で、慢性的な状態が続いています。
ただし調査を細かく見ると、対処のヒントが見えてきます。必要なスキルを把握できていない企業は52.8%にのぼり、スキルを把握している企業のほうが不足感は明確に低くなっています。質について「大幅に不足」と答えた割合は、把握できている企業で40.6%、できていない企業で64.0%と大きな開きがあります。
つまり、採用の前に「どんなスキルを持つ人が何人必要か」を定義できていないケースが多いということです。人材像を設定して社内に周知している企業は16.2%にとどまっており、ここは早期に着手できる領域といえます。
成果指標を設定できていない
2つ目が評価の問題です。指標がなければ、続けるべきか見直すべきかの判断ができず、投資の妥当性も説明できません。
指標を設定している企業でも、その対象は内向きに偏っています。社内の効率化を対象とする指標が80.0%である一方、新たなビジネスや顧客価値の創出を対象とするものは33.5%、経営改革を対象とするものは16.3%にとどまります。
守りの成果を測る指標だけでは、攻めの取り組みは評価されず社内で優先度が上がりません。段階に応じて、外向きの指標を1つでも加えておく設計が有効です。
部門ごとの個別最適で止まる
3つ目が全社最適の欠如です。部署単位でツールを導入した結果、データが分断され、全社でのデータ活用ができないという状態は珍しくありません。
業務プロセスの全社最適化に取り組んでいる、または完了している企業の割合は、成果が出ている企業で53.8%、出ていない企業で29.5%と大きな差があります。部門単位の改善だけでは成果につながりにくいことが数字に表れています。
対策としては、導入前にデータの持ち方と連携方式を決めておくことです。後から統合するコストは、最初に設計するコストより大きくなります。
現場の抵抗と目的の共有不足
4つ目が組織側の課題です。新しい仕組みは一時的に現場の負荷を上げるため、目的が共有されていなければ抵抗が生まれます。
IPAの調査でも、企業文化について「リスクを取り、チャレンジすることが尊重される」の回答率は他の項目に比べて低い水準にとどまっています。新しいスキルの習得は奨励されている一方、それが報酬や評価に反映されていると答えた割合は低く、要求と評価の間にずれが生じています。
この解消には、施策の目的を数字と言葉の両方で伝えることに加え、取り組んだ人が評価される仕組みを整えることが必要になります。制度側を放置したまま意識改革だけを求めても定着しません。
成果が出ている企業に共通する3つの条件
課題の裏返しとして、成果を出している企業には共通した特徴があります。IPAの調査では、成果の有無で明確に差が出た項目が3つありました。自社の状態を照らし合わせる基準として使えます。
経営者がデジタルの見識を持っている
1つ目は経営層の理解度です。デジタル分野の見識を持っていると答えた経営者の割合は49.9%で、前年度の40.2%から約10ポイント上昇しました。
成果の有無別に見ると、成果が出ている企業のほうが経営者の見識を持つ割合が明確に高くなっています。技術の詳細に精通している必要はありませんが、何ができて何ができないかの判断ができることが投資判断の質を左右します。
経営層向けの学習機会を設けることは、遠回りに見えて効果の大きい施策です。役員層の共通認識ができていないまま現場に指示だけが下りる状態は、途中で止まりやすくなります。
経営・IT部門・業務部門が連携している
2つ目が部門間の協調です。三者の連携が十分にできていると回答した企業の割合は全体で48.9%と半数弱にとどまります。
しかし成果別に見ると、成果が出ている企業では72.9%が協調できていると答えたのに対し、成果が出ていない企業では37.1%でした。倍近い差があり、調査項目のなかでも特に相関の強い要素です。
定例の場を設けるだけでも状況は変わります。IT部門が業務の実態を知り、業務部門が技術の制約を理解することで、実現できない要件に時間を使う無駄が減ります。
全社レベルで業務プロセスを見直している
3つ目が業務プロセスの見直し範囲です。部門単位ではなく、全社レベルで最適化に取り組んでいるかどうかが成果を分けています。
全社最適化に取り組んでいる企業の割合は、成果が出ている企業で過半数を超える一方、出ていない企業では3割弱です。同じツールを導入しても、業務の流れを変えなければ効果が限定される構造がここに表れています。
3つの条件はいずれも、技術ではなく経営と組織の話です。DX推進が情報システム部門だけの課題として扱われている場合、まずその位置づけを見直すところが出発点になります。
生成AIをDX推進にどう組み込むか
2026年のDX推進を語るうえで避けられないのが生成AIの扱いです。導入は急速に進んでいますが、成果の出方には明確な偏りがあります。現状を踏まえたうえで、組み込み方の考え方を整理します。
導入は進んだが用途が偏っている
生成AIを導入している企業の割合は44.0%に達し、前年度の22.6%から倍増しました。AI全体では試験利用を含めて58.0%の企業が着手しています。
用途を見ると、文書や音声の要約・翻訳・校正が82.5%、文書やレポートの作成が80.5%、情報検索や分析が77.0%と、個人の作業効率化が中心です。一方で自社製品やサービスの高度化に使っている企業は10.9%にとどまります。
効果の内容も同様の傾向です。業務が効率化・迅速化したと答えた企業は91.6%にのぼる一方、売上や利益が向上したは3.9%、顧客満足度が向上したは4.5%でした。
個人利用から業務プロセスへの組み込みへ
この偏りの背景にあるのが、利用のされ方です。生成AIを個人で業務利用していると答えた企業は63.3%である一方、部署の業務プロセスに組み込まれているのは11.9%にとどまります。
つまり、多くの企業では個人が便利に使っている状態で止まっており、業務の設計そのものが変わっていません。これが効率化以上の成果につながらない直接の原因です。
次の段階へ進むには、どの業務のどの工程をAIに任せ、人が何を担うかを再定義する作業が必要になります。ツールを配るだけでは、この転換は起こりません。
社内ルールとリスク管理を同時に進める
活用を広げるうえで、管理面の整備も欠かせません。AI導入や運用上の課題としては、専門人材の不足が50.1%、効果やリスクへの理解不足が45.8%、適切な利用を管理する社内ルールの作成が難しいが39.7%と続きます。
AIに関するポリシーや社内ルールをどちらも定めていない企業は16.7%、AI固有のリスク管理を実施している企業は14.2%にとどまります。導入の速度に対して、管理体制の整備が追いついていない状態です。
調査からは、効果を実感している企業ほどリスク管理に取り組んでいる傾向も読み取れます。ルール整備は活用のブレーキではなく、安心して範囲を広げるための土台と捉えるほうが実態に合っています。
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DX推進に活用できる公的な制度と指標
自社だけで進める必要はありません。国が用意している枠組みを使えば、進め方の基準を借りられるうえ、税制や認定という形での後押しも受けられます。代表的な3つを確認します。
デジタルガバナンス・コード3.0
経済産業省が2024年9月に策定した指針で、DX経営に求められる考え方が体系的に整理されています。副題に「DX経営による企業価値向上に向けて」が掲げられ、稼ぐ力との連動が強調された内容です。
全体像は3つの視点と5つの柱として示されています。3つの視点は経営ビジョンとDX戦略の連動、現状と目指す姿のギャップの定量把握と見直し、企業文化への定着です。
5つの柱は、経営ビジョンとビジネスモデルの策定、DX戦略の策定、DX戦略の推進、成果指標の設定と戦略の見直し、ステークホルダーとの対話で構成されます。詳しい内容は経済産業省「デジタルガバナンス・コード」で公開されています。
DX推進指標による自己診断
自社の成熟度を測る道具として用意されているのがDX推進指標です。経営者、部門リーダー、実務担当者といった複数の立場から自己診断を行い、認識のずれを可視化できます。
2026年2月にデジタルガバナンス・コード3.0に沿った改訂が行われ、同年4月から改訂版での回答受付が始まっています。回答結果はIPAが収集する他社データと比較できるため、業界内での相対的な位置も把握できます。
先に触れたとおり、成果指標を設定できていない企業が多い状況では、既存の枠組みを借りるほうが早く動けます。ゼロから指標を設計するより負担が小さく、社内での合意も得やすくなります。
DX認定制度と関連する優遇措置
DX認定制度は、情報処理促進法にもとづき2020年11月に創設された国の認定制度です。デジタルガバナンス・コードの基本的事項を満たしている企業を、IPAが審査して認定します。
重要なのは、審査の対象がDXの成果ではなく準備状況である点です。経営者がビジョンを持ち、戦略を定め、推進体制を構築していることが問われるため、成果が出る前の段階でも申請できます。
認定を受けると、DX投資促進税制による税額控除や日本政策金融公庫からの低利融資といった支援を受けられます。申請にあたっては、自社の取り組みをウェブサイトで公表しておく必要があります。
中小企業がDX推進を始めるときの考え方
ここまでの内容は企業規模を問わず当てはまりますが、リソースが限られる中小企業では優先順位の付け方が変わります。取組率41.6%という数字の背景にある事情を踏まえ、現実的な進め方を整理します。
「メリットがわからない」という壁をどう越えるか
従業員100人以下の企業がDXに取り組まない理由の最多は、自社が取り組むメリットがわからないというものでした。54.0%と過半数を占めており、情報や人材の不足を上回っています。
この壁を越えるには、DXという言葉から離れて、いま困っていることを起点に考えるほうが早く進みます。受注処理に時間がかかる、見積作成が属人化している、在庫が把握できていないといった具体的な不便が出発点になります。
経営改革という大きな枠組みから入ると、自社には関係ないという判断になりがちです。目の前の業務課題を1つ解決したあとで、それが全体にどう波及するかを考える順序のほうが現実的です。
小さく始めて成功体験を積む
中小企業の強みは、意思決定が速く全社への展開がしやすいことです。大企業のように部門間調整に時間を取られないぶん、着手から効果測定までの周期を短くできます。
まずは1つの業務に絞り、3か月程度で効果を確認できる範囲から始めるのが取り組みやすい進め方です。削減できた時間やコストを数字で残しておけば、次の投資判断がしやすくなります。
興味深いことに、DX投資額が売上に占める割合を規模別に見ると、従業員100人以下の企業では5%以上と回答した割合が最も高くなっています。規模が小さいぶん、一度の投資が経営に与える影響も大きいため、対象選定の精度が重要になります。
外部の力を組み合わせる
社内にデジタル人材がいない場合、育成を待っていては時間がかかりすぎます。現実的には、外部の支援と社内の業務理解を組み合わせる形が取り組みやすい選択肢です。
その際も、要件を整理し意思決定を行う担当者は社内に置いておく必要があります。丸ごと任せてしまうと、運用が始まってからの改善が外部依存になり、費用が継続的に発生します。
ネクストスケールでは、DXや生成AIの業務活用に関する情報をコラムでも継続して発信しています。検討を進める際の材料としてあわせてご覧ください。
まとめ
DX推進とは、ツールを導入することではなく、事業と組織をデジタル前提で作り替える取組です。国内企業の75.7%が着手している一方、成果を実感できているのは60.8%、投資対効果まで確認できているのは14.6%にとどまります。
この差を生んでいるのは、経営者の理解度、経営とIT部門と業務部門の連携、そして全社レベルでの業務プロセス見直しの3点でした。いずれも技術ではなく、進め方と組織の設計に関わる要素です。
進め方としては、経営ビジョンとの接続、現状と目標のギャップの数値化、推進体制の構築、対象業務を絞った実行、成果指標による評価という5つのステップで整理できます。とくに最後の評価は抜けやすく、成果指標を設定している企業は4社に1社にも届いていません。
まずは自社の現在地を確かめるところから始めてください。DX推進指標のような公的な枠組みを使えば、ゼロから設計しなくても客観的な把握ができます。そのうえで対象業務を1つ選び、数字で語れる結果を作ることが次の展開につながります。
社外AI役員サービスご紹介資料
この資料でこんなことがわかります!
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- 導入の進め方
- 導入実績・効果
\3ステップで簡単入力/
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この記事の監修者
石丸真平
NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援
ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。

