AIの著作権侵害事例まとめ 国内外の訴訟・摘発と企業が取るべき対策を解説

生成AIで作った画像を資料に使った。記事の要約をAIに任せた。日常的になったこれらの行為が、著作権の問題を引き起こす可能性がある。そう聞いても、どこまでが危険なのか判断できないという方は多いはずです。

この分野は、ここ2年で急速に状況が変わりました。2025年には日本の大手新聞社が生成AI検索サービスを相次いで提訴し、同年11月にはAI生成画像の無断複製をめぐる刑事事件も発生しています。

「他社の話」で済ませられる段階は過ぎました。一方で、必要以上に萎縮して活用を止めてしまうのも損失です。どこにリスクがあり、何をすれば避けられるのかを正確に把握することが求められます。

本記事では、著作権侵害が起きる仕組みを整理したうえで、国内外の具体的な事例、企業が直面するリスク、そして実務で取るべき対策までを、公的機関の資料を参照しながら解説します。

なお本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的な助言ではありません。個別の案件については、必ず弁護士など専門家にご相談ください。

確認したいポイント結論詳細
AI利用で著作権侵害になる?類似性と依拠性が認められれば成立人が創作した場合と判断の枠組みは同じです。生成物が既存作品に似ていれば問題になります。
日本で実際の事例はある?民事の提訴と刑事の摘発が発生2025年に新聞社がAI検索を提訴。同年11月にはAI生成画像の無断複製で書類送検も。
誰が責任を負いますか?出力を公開・利用した側が原則開発者や提供者が問われる場合もありますが、まず利用した企業が矢面に立ちます。
企業は何をすべきですか?入力ルールと確認工程の整備素材の出所管理、公開前のチェック、補償のあるサービス選定が実務上の基本です。

この記事でわかること

・著作権侵害が学習段階と生成・利用段階のどちらで問題になるのか

・侵害を判断する2つの要件と、責任を負う主体

・日本国内で実際に起きた訴訟と刑事摘発の事例

・海外の主要な訴訟と、和解などの最新の動き

・企業が実務で取るべき5つの対策

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目次

AIの著作権侵害はどこで起きるのか

事例を見る前に、問題が発生する構造を押さえます。段階の分け方、判断の要件、そして責任の所在という3点です。

学習段階と生成・利用段階を分けて考える

文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめました。ここで示されたのが、AIの開発・学習段階と、生成・利用段階を分けて整理するという枠組みです。

資料は文化庁「AIと著作権について」で公開されています。なおこの取りまとめは、公表時点における一定の考え方を示すものであり、法的拘束力を持つものではないとされています。

学習段階については、著作権法第30条の4により、情報解析のための利用が原則として認められています。ただし「著作権者の利益を不当に害する場合」は除外されるとされており、この解釈が現在の争点になっています。

企業がAIを業務で使う場合、主に問題になるのは生成・利用段階です。自社でモデルを開発しないのであれば、こちらに絞って理解しておけば実務上は足ります。

侵害を判断する2つの要件

生成・利用段階での判断は、人が創作した場合とまったく同じ枠組みで行われます。AIを使ったから特別に厳しくなる、あるいは緩くなるということはありません。

要件は2つです。類似性、つまり作品の表現の本質的な特徴が既存の著作物と似ていること。そして依拠性、つまり既存の作品をもとにして作られたこと、偶然の一致ではないことです。

生成AIの場合に注意したいのが依拠性の扱いです。既存の作品と酷似したものが生成された場合、依拠性も認められる可能性が高いとされています。学習データに含まれていたと推認されるためです。

つまり実務上は、出てきたものが既存の作品に似ていないかを確認することが、そのままリスク管理になります。

誰が責任を負うのか

原則として、生成物を公開・利用した側が責任を負います。多くのAIサービスの利用規約には、生成物の利用によって生じた第三者との紛争は利用者が自己の責任と費用で解決する、という趣旨の条項が置かれています。

つまり、「AIが勝手に作った」という説明は通用しません。何を出力させ、それをどう使ったかは利用者の判断だからです。

一方で、生成の態様によっては開発事業者やサービス提供者が責任主体になり得るという整理もあります。ただし企業として実務を考えるなら、まず自社が矢面に立つ前提で備えるのが妥当です。

関連記事:生成AIのビジネス活用|効率化から価値創出へ進む条件と収益化の型【2026年最新】

日本国内で起きた事例

国内では2025年以降、法的リスクが具体的な形で表面化しました。民事、刑事、そして法的責任に至らないケースの3つを見ていきます。

新聞社によるAI検索サービスの提訴

2025年8月7日、読売新聞グループ本社が生成AI検索サービスを提供する米Perplexity AIを東京地方裁判所に提訴しました。日本のメディアがAI検索をめぐって訴訟を起こした最初の例とみられています。

訴えによると、同社は2025年2月から6月にかけて読売新聞オンラインの記事11万9,467本の情報を取得・複製し、類似性のある文章や画像を含む内容を利用者に送信したとされています。請求額は約21億6,800万円です。

主張されているのは、著作権法が定める複製権と公衆送信権の侵害、そして利用者が参照元のサイトを訪れない状態による営業上の利益の侵害です。

その後、2025年8月26日には朝日新聞社と日本経済新聞社も同社を共同で提訴しました。2026年5月には第1回口頭弁論が開かれ、管轄をめぐる争いも含めて審理が進んでいます。

判決はまだ出ておらず、結論は未確定です。ただしこの動きは、コンテンツを保有する側が法的手段に踏み切る段階に入ったことを示しています。

AI生成画像をめぐる刑事事件

企業にとってより直接的な示唆があるのが、この事例です。2025年11月20日、千葉県警は27歳の男性を著作権法違反(複製権侵害)の疑いで書類送検しました

容疑の内容は、他者が生成AIで制作してSNSに投稿した画像を無断で複製し、自身が販売する電子書籍の表紙に使用したというものです。AIで作られた画像に著作権があるとして摘発された、全国で初めての事例と報じられました。

注目すべきは、警察がその画像を著作物と判断した根拠です。生成にあたって具体的な指示や入力が繰り返されていたこと、報道によれば2万回を超えるプロンプトの入力と修正が行われていたことなどから、制作者の創作的な関与が認められたとされています。

この事例が示すのは2つです。AI生成物であっても著作権侵害の被害者になり得ること、そして著作権侵害が刑事事件として摘発される現実のリスクがあることです。

なお2025年1月にも、生成AIで作成した既存アニメキャラクターの画像を販売した件で書類送検が報じられています。民事の差止めや賠償だけでなく、刑事の観点も社内ルールに組み込む必要がある段階に入りました。

法的判断に至らないケース

訴訟や摘発に至らなくても、企業に打撃を与える事例があります。

2024年、ある公的機関が公開したパンフレットに、AIで生成されたとみられるイラストが使用されました。そのイラストが特定のイラストレーターの画風に酷似しているとSNS上で批判を集め、結果としてパンフレットの公開が中止される事態に発展しています。

この件は、法的に著作権侵害と認定されたわけではありません。それでも公開の取りやめという実害が生じました

画風そのものは著作権の保護対象ではないと一般に理解されています。しかし「法的に問題がない」ことと「社会的に受け入れられる」ことは別です。企業のリスク管理としては、この両面を見る必要があります。

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関連記事:生成AI活用の進め方|業務別の使い方と成果が出る企業の条件・注意点【2026年最新】

海外で起きている事例

海外の動きは、日本の議論にも影響します。主要な訴訟と、金銭的な決着の動きを押さえておきます。

米国の主要な訴訟

最も知られているのが、2023年12月にニューヨーク・タイムズがOpenAIとMicrosoftを相手取って提起した訴訟です。自社の記事を無許諾で学習データに使用したことが争点になっています。

画像の領域では、Getty Imagesが画像生成AIの開発企業を相手取った訴訟が知られています。このほか、アーティストらによる集団訴訟も複数進行しています。

米国では、著作物の利用がフェアユースにあたるかどうかが中心的な争点になります。日本の著作権法とは制度が異なるため、米国の判断がそのまま日本に適用されるわけではありません

多くの訴訟は審理が続いており、最終的な判断が出るまでにはさらに時間がかかる見通しです。

和解による決着の動き

注目されているのが、判決を待たずに金銭で決着する動きです。2025年には、AI開発企業が著作権者側との間で大規模な和解案に合意したと報じられました。

この流れが意味するのは、学習データの利用に対価を支払うという実務が形成されつつあるということです。今後は、権利者とライセンス契約を結んだうえでデータを使うモデルが増えていくと見られます。

企業がサービスを選ぶ際の観点としても、学習データの出所が明示されているか、権利処理が行われているかが判断材料になります。

他国の動き

中国では、AIが生成した特定キャラクターの類似画像について、著作権侵害を認めた裁判所の判断が出ています。2022年に日本の映像制作会社が中国のAIサービス提供企業を訴えた事案で、損害賠償と生成・配信の差止めが命じられました。

韓国では、2026年2月に大手テレビ局3社が海外のAI開発企業を相手取り、著作権侵害の中止と損害賠償を求めて提訴しています。

欧州では、AIに関する包括的な規制の整備が進んでおり、学習データの透明性に関する要求が盛り込まれています。グローバルに事業を展開する企業は、各国の制度差を意識した対応が必要になります。

関連記事:ナノバナナ(Nano Banana)とは?モデルの違いと使い方・料金・商用利用の注意点を解説

事例から読み取れる企業のリスク

これらの事例を、自社の立場に置き換えて整理します。押さえるべきリスクは3種類あります。

民事だけでなく刑事のリスクもある

従来、日本での著作権トラブルは民事の差止めや損害賠償が中心という認識が一般的でした。千葉県警の事例は、その前提が変わったことを示しています。

著作権法の罰則は故意の侵害を対象としますが、法人に対しても罰金が科される構造になっています。組織として侵害を放置していた場合、企業自体が責任を問われる可能性を否定できません。

実務としては、社内ルールに刑事リスクの観点を明示的に組み込むこと。「うっかり」で済まされない領域があるという認識を、担当者と共有しておく必要があります。

法的責任以前のレピュテーションリスク

パンフレットの事例が示すとおり、法的に問題がなくても、社会的な批判によって実害が生じます

公開の取りやめ、謝罪、担当者の負担、ブランドイメージの毀損。訴訟を起こされなくても、コストは確実に発生します

特に、既存の作品や特定の作風に似たものを商用で使う場合は慎重な判断が必要です。「訴えられなければよい」という基準で運用すると、いずれ問題が起きます

「知らなかった」は通らない

前述のとおり、多くのAIサービスの規約は、生成物の利用によって生じた紛争は利用者が自ら解決するという構造になっています。

つまり、サービス提供者が守ってくれるわけではありません。意図していなかったとしても、公開したのが自社であれば、責任は自社に向かいます。

この前提を、AIを使う全ての担当者が理解しているかどうか。ここが組織としてのリスク管理の出発点になります。

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企業が取るべき5つの対策

リスクを踏まえ、実務で取るべき対策を5つに整理します。いずれも大がかりな投資を伴わずに着手できるものです。

対策1:入力する素材のルールを決める

AIに何を入力してよいかを、明文化してください

他者が撮影した写真、第三者のイラストやキャラクター、他社の資料。これらを入力素材として使えば、出力も当然その影響を受けます。

特に注意したいのが、特定の作家名や作品名をプロンプトに含めることです。意図的に似せようとした事実は、依拠性を認める方向に働き得ます。「〇〇風」という指示は避けるというルールを設けている企業も増えています。

対策2:出力を確認する工程を設ける

公開・納品の前に、既存の作品と似ていないかを確認する工程を必ず入れてください

画像であれば、検索サービスの画像検索で類似のものがないかを調べる。文章であれば、特徴的な表現がそのまま既存の記事に存在しないかを確認する。この程度でも、明らかな類似は相当程度防げます

確認する担当者を決めておくことも重要です。作った本人だけが判断する体制では、見落としが生じます

対策3:補償のあるサービスを選ぶ

AIサービスのなかには、生成物に関する権利侵害の申し立てがあった場合に、提供者が一定の補償を行う制度を用意しているものがあります。

商用で本格的に使う予定があるなら、こうした補償の有無をサービス選定の基準に含める価値があります。

ただし補償の範囲と条件はサービスごとに異なり、すべての状況をカバーするものではありません。契約時に条件を確認したうえで、補償があることを理由に確認工程を省略しないでください。

対策4:記録を残す

どのツールで、どんな指示を出して、いつ生成したかを記録しておいてください。

万一問題が生じた際、既存の作品に似せる意図がなかったことを説明する材料になります。逆に記録がなければ、何も主張できません。

あわせて、入力に使った素材の出所も記録してください。自社で撮影したものか、購入した素材か、権利者の許諾を得たものか。この整理が、後の検証を可能にします

対策5:相談先を確保しておく

判断に迷う場面は必ず生じます。そのときに相談できる先を、事前に確保しておいてください。

社内に法務部門があれば、AI利用に関する相談窓口としての役割を明示する。ない場合は、顧問弁護士や外部の専門家との関係を作っておく。

担当者が「これは大丈夫だろう」と自己判断で進めてしまう状態が、最も危険です。迷ったら止めて聞く、という運用を成立させることが、実務上いちばん効きます。

生成AIの業務利用における論点は、ネクストスケールのAI活用コラムでも継続的に取り上げています。

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AI生成物に著作権は認められるのか

逆の立場、つまり自社が作ったものを守れるのかという論点です。この点も実務では頻繁に問われます。

文化庁が示している考え方

文化審議会の小委員会は、生成物が著作権法で保護される著作物にあたるかどうかは、AIに対するプロンプトの分量や内容、生成の試行回数といった要素を踏まえて判断するという整理を示しています。

つまり、ボタンを一度押して出てきたものと、意図をもって何度も調整を重ねた結果では、扱いが変わり得るということです。

海外では、AI単独で生成された作品は著作権で保護されないという方向の判断も示されています。「人間の関与がどこまであったか」が共通の争点になっている状況です。

創作的な関与が鍵になる

前述の千葉県警の事例は、この点で示唆的です。2万回を超えるプロンプトの入力と修正が行われていたことが、著作物性を認める判断につながったと報じられています。

専門家の見解としても、作り手が明確な完成イメージを持ち、それを再現する意図がプロンプトに込められている場合には、AIを使った制作物でも著作物にあたる可能性があるとされています。

実務的な含意は明確です。自社の生成物を資産として扱いたいなら、制作の過程を記録しておくこと。どんな意図で、どれだけ調整したかが、後の主張の根拠になります。

実務での留意点

現時点では、AI生成物の著作権について確立した基準があるとは言えません。判断は個別の事情によって変わります。

そのため、AIで作ったものを重要な資産として位置づける計画には慎重さが必要です。ロゴやキャラクターなど、長期にわたって独占的に使いたいものについては、人の手による制作を含めた設計を検討してください。

逆に、社内資料の挿絵や短期的な販促物のように、独占的な権利を主張する必要がないものであれば、この論点はさほど問題になりません。用途によって判断を分けるのが現実的です。

今後の見通しと企業の備え

最後に、この領域が今後どう動くかと、企業として何を準備すべきかを整理します。

国内の司法判断はこれから

日本では、生成AIをめぐる著作権侵害について確定した判決はまだ出ていません。新聞社による訴訟も審理の途中です。

つまり現在は、明確な基準がないまま実務を回さなければならない期間にあたります。この状況で必要なのは、確定した答えを待つことではなく、判断が示されたときに対応できる状態を作っておくことです。

記録を残し、確認の工程を持ち、相談先を確保する。これらの備えがあれば、基準が明確になった時点で速やかに調整できます

制度面の動きにも注意する

制度そのものも動いています。文化庁の考え方は今後も見直される方針が示されており、判例や海外の対応を参考にしながら更新されていくとされています。

また、権利者不明の著作物を利用するための手続きなど、周辺の制度も整備が進んでいます。

社内ルールを一度作って終わりにせず、年に一度は見直す運用にしてください。この分野は、半年で前提が変わり得る領域です。

AI活用に関する最新の動向は、ネクストスケールのブログ記事一覧でも発信しています。

まとめ

AIによる著作権侵害は、生成物が既存の著作物と類似し、かつそれに依拠して作られたと認められる場合に成立します。判断の枠組みは、人が創作した場合と同じです。

国内では2025年以降、新聞社による民事提訴とAI生成画像をめぐる刑事摘発という具体的な事例が発生しました。海外でも訴訟が相次ぎ、和解による決着の動きも出ています。

企業が取るべき対策は、入力素材のルール化、出力の確認工程、補償のあるサービスの選定、記録の保存、そして相談先の確保の5つです。いずれも大きな投資を伴わずに始められます。

確定した判断が出ていない現状で必要なのは、活用を止めることではなく、説明できる状態で使うことです。記録があり、確認の手順があり、判断に迷ったときの相談先がある。この体制を整えたうえで、活用を進めてください。

繰り返しになりますが、本記事は一般的な情報提供であり、法的な助言ではありません。個別の判断については、必ず弁護士など専門家にご相談ください。

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参考・出典

・文化庁「AIと著作権について」:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html

・経済産業省「AIガバナンス」:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ai-governance/index.html

この記事の監修者

石丸真平

石丸真平

NEXTSCALE コンサルタント / AI活用・業務効率化支援

NEXTSCALEのコンサルタントとして、生成AI活用、業務効率化、DX推進に関する支援を担当する想定のプロフィールエリアです。業務整理からツール選定、導入設計、社内定着までを一気通貫で支援する人物紹介として使用します。

ワイヤー段階では、監修者名、肩書き、プロフィール本文、関連リンク、著者導線がどのように入るかを確認できる構成にしています。実装時には実際のプロフィール文や外部リンク、SNSアカウント情報などに差し替える想定です。
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